第四一話 鬼畜外道


「「「「――っ……?」」」」


 俺の神精錬によって意識を『-2』から『0』まで叩き、目覚めた様子の信徒たち。次々と我に返った様子で上体を起こしてきたが、興奮状態や敵愾心も『0』まで折っているのでもう大丈夫だ。


「言ったはずだ。俺たちは何もしないと。何故こうも敵意を向けるのか、よかったら話を聞かせてほしい」


「「「「……」」」」


 彼らは話術を少し鍛えた俺の言葉に対し、お互いの顔を見合わせて何やらブツブツと言い合ったあと、俺たちのほうに向かっておもむろにうなずいた。みんな覆面を被ってるので表情は見えないが、どうやら敵ではないとわかってくれたらしい。


「「「「――なっ……!?」」」」


 四人の信徒たちの話はあまりにも衝撃的なものだった。勇者パーティーによって、彼らの家族を含む仲間の信徒たちが無差別に殺されたというのだという。


 最初は信じられなかったそうだが、息も絶え絶えの状態で戻ってきた信徒から話を聞き、実際に現場へ駆けつけてみるとそこではこの世のものとは思えないほど凄惨な光景が広がっていたというのだ。


 逃げ惑う信徒たちが次々と弓術士グレックに矢で射抜かれ、魔術師ルシェラに氷漬けにされたかと思うと勇者ランデルに剣でバラバラにされ、生き残った者は教皇の居場所を吐けと治癒師エルレによって気が狂うような拷問――殴打と治癒――を笑いながら繰り返されたのだという。


「あいつら……ここまで非道な連中に成り果てたっていうのか……」


「うがぁ……許せないです。もっと悪い人間たちってハワードが言うのもわかるです……」


「ひぐぅ……怖いしむかつくのー。とっても嫌な臭いがぷんぷんするのぉー……!」


「うぬぅ……本当に、吐き気さえ催す話だった。勇者パーティーというものが名ばかりの集団になっていたとは聞いていたが、まさかここまで腐っていたとは……」


「――もしもし……」


「ん?」


 信徒の一人がおずおずと切り出してきた。


「あなた方が勇者パーティーのような連中ではないのはよくわかりました。本当になんとお詫びしたらいいのか……」


「いや、あんたら信徒があれだけ怒るのもわかる。俺もかつてはその勇者パーティーの一人だったわけだしな」


「……ハワード様でしたか。あなたが勇者パーティーの中で人気が高かったのもうなずける話。そこで一つお尋ねしたいことが……」


「なんだ? 遠慮なく言ってほしい」


「「「「……」」」」


 彼は仲間たちのほうを見て互いにうなずき合ったあと、話を続けた。


「教皇様がコアというのは本当の話なのでしょうか? もしそうなら、これからどうしたらいいのか……。我々信徒にとって、教皇様はかけがえのない存在なのです。もしその可能性があり、殺さなければ神殿のダンジョン化が解けないというのであれば、ここで先に我々を殺していただきたい……」


「……」


 そうか、信徒たちが何より危惧していたのはそこだったんだな。彼らは俺たちのことを手段を選ばない勇者パーティーの仲間だと思ってたわけで、それに対してあれだけの勇気と敵愾心を抱けたのも、教皇という存在を命に代えても守りたいという強い思いがあったからなんだ。


「素晴らしい信仰心だが、教皇様がコアかどうかはまだわからないし、仮にそうだったとしても助かる可能性はある」


「「「「えぇっ……」」」」


「そのためにも早くコアを倒すことが先決なんだ。そのことによって、迷宮の種を植え付けられた者が助かる確率は上がる。だから、命を無駄にせずに信じていてほしい」


「「「「は、はい……」」」」


 俺の言葉に対して感極まったのか、彼らの声はとても湿っているように感じた。そういや神精錬で話術をちょっと鍛えてたんだよな。だからなのか。


「あんたらに俺の神精錬を施してパワーアップさせるつもりだから、ほかの信徒たちを見かけたら安全な場所まで避難させてやってほしい」


「「「「ありがたや……!」」」」


 というわけで、俺は信徒たちの身体能力をとことん上げ、モンスターにも勝てるくらい強くすることにした。ただ、こういうのは反動も生むので慎重に時間をかけてやらないといけない。カンカンッ、カンカンカンッ――ふう……これくらいでいいだろう。

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