すくえあ・らぶ~恋愛成就の助っ人は、幼馴染であの子の妹!?~

北森青乃

第1話 目覚めの良い朝




 えー突然だけど俺、雨宮あまみや湯真とうまはピンチを迎えている。


 どれ程のピンチか。


 昔々隣の席の子から消しゴムを借りた時、冗談半分に目の前でカバーを取ったら……男の子の名前が書かれていたあの瞬間。


 バレンタインのチョコを渡して欲しいと言われ、包装されてた紙が2つとも一緒なもんで適当に渡した結果……こっぴどく怒られた時。


 掲示板の前でクラス分けを見ていた子が、俺と目が合った途端大きな溜息をついた……いつぞやの春。


 それら過去の出来事を凌駕する、今まで生きてきた中でも圧倒的なピンチ。


 それは何故かって? 

 答えは簡単。目の前で仁王立ちしている人に、まるで般若の様な形相で睨み付けられているから。


 ……正直思い当たる節はある。でもさ? 言い訳させてくれ。


 俺はいつも通りの時間にセットしたアラームで目覚め、いつも通り洗面所へ向かい顔を洗おうとした。

 そう、これが俺の毎朝のルーティン。物心付いた時から続けてきたルーティン。


 そしていざドアを開けると、まさかそこに誰かが居るなんて想像もつかないだろ?


 俺だって驚いたよ。般若さんも驚いてたよ?


 でもさ? 俺だって普通の人。健全な男子高校生。

 驚きつつも、目の前に…………


 限りなく裸に近い姿があったら思わず見ちゃうでしょ?


 白い肌。


 細い手足。


 メリハリのあるくびれ。


 そして、ピンク色の肌着に包まれた2つのたわわなモノ。綺麗な曲線を描き、程良く突き出た膨らみ。


 そのスタイルと、鎖骨辺りに光る滴が織り成す色っぽさは……悔しいが認めざるを得ない。


 とまぁそんな事をしている間に、このような状況になってしまった訳だけど……むしろこれは仕方のない事なのでは? 

 ワザとではない、不可抗力。偶然の産物。奇跡の出来事。


 そうだ。そうだ。

 きっと般若さんも分かってくれる。落ち着いて話せば分かってくれるはず。


「ちょっ、ちょっと待っ……」

「バッ、バッ……」


 分かって……



「バカぁぁぁ!」



 その刹那。巻き起こる怒号!



 パッチーン



 響き渡る乾いた破裂音!



 一瞬の出来事に為す術はなく、その衝撃に首が捻じれる。


 頬から伝わる痛みが、まるで電気の様に隅々まで行き渡ると……微かに残っていた寝ぼけた意識を完全に目覚めさせる。


 ……あれ? なんで俺ビンタされてるんだ?


 顔洗いに来ただけなのに? 


 てか、そもそもなんで俺ん家の洗面所にお前が……ん? …………家?



 あっ。



 その瞬間、雨宮湯真は思い出した。ハッキリと思い出した。

 ここがどこなのか。なぜ目の前の女の子が居るのか……


 その理由を。



 あぁ、思い出した。思い出したよ。そういえばここ……




 俺ん家じゃなかったわ。



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