喜怒哀楽少女戦線

一ツ木

第1話「なにがどうなってるんだよ」

ー少し後の話ー



「えっ……死んで……」


 傍らに転がる男は息をしていない。


 目の前に立つよく知る少女は絶望と混乱の色を隠せない顔をしている。


 そんな顔をする彼女を俺は初めて、見た。



ーーーーーー



 俺は広山ヒロ。

 この海神高校に通うほどほどの男子高校生。

 勉強、運動もほどほど、友達もほどほどいる。

 趣味はゲーセン。クレーン、アーケード、シューティング色々やるけど、好きなのはリズムゲーム。学校の帰りに行くのが楽しみだ。


「ヒロー、HS5当たった?」

 友達の高橋英太が前の席から後ろの俺に話しかける。

「全部外れたー。新作ゲーム機が抽選ってどういう時代だよ。」

「転売屋がいるからな」

「物売るってレベル……」


「高橋くん」


「?……!?あ、相生さん!?」


「プリント、回してくれない?」


 英太は後ろを、向いていたためプリントが回っていることに気づかなかった。

 それを「鉄仮面美女」こと相生哀(あいおいあい)はピシャリとただしにきた。

「あっ、いけねっ!」

「ごめん、相生さん。」


「広山くん。あなたも高橋くんに注意して。」


「うん。ごめん。」

 


「こぇー……」

「そうか?」

「ファンも多いけど俺は怖いよ……」

「今のは英太が悪いだろ。」

「ヒロは相生さんの味方かよー」

「隠れファンだからな。」

「そうなんだ……」


 何を隠そう俺は相生哀(あいおいあい)の隠れ大ファンなのだ。黒髪美女で鉄仮面な彼女が正直めちゃくちゃタイプだ。


 どうにかしてお近づきたい。

 日頃からそう思って今の所、何もできていない。




 ー放課後ー




「じゃなー」

 英太と別れいつものゲーセンに向かう。

 バイトの日以外、毎日行ってると座る場所も決まってくる。今日もいつもの場所に向かう。が。

「あれ、今日は混んでるなー……」

 今日は新作のアーケードが導入されたおかげで混んでいるらしい。

 いつものリズムゲームは出来そうにない。

「仕方ない。別のやるかー。」

 俺は広く浅くやるタイプなのでこのゲーセンのゲームは全て一回はやったことがある。


 久しぶりにシューティングの方へ足を向けた。最近はあまり人気がないが、今日は人がいた。


 バンバンバンバンバンバン

 リローディン!リローディン!

 カチカチッ


 バンバンバン……


 無心に、無表情に、無口で撃つ人がいた。姿勢良く両腕で銃を構えている。

きれいな髪の女の子。見た目はタイプ。


「あれ?」


 そこにいたのは噂の鉄仮面


 相生哀(あいおいあい)だった。

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