第35話 ゴスロリオトコの娘♡

 いったいいつからそこにいたのだろう。

 楽しそうに、意地悪そうに、馬鹿にしたように、彼女はケラケラと笑う。真っ黒なゴシックロリータを着込み、黒い傘でこちらを指してくる。肌はしろく、黒い髪の間から赤い目が光る。


「い~けないんだーいけないんだーチクッちゃうぞーチクッちゃうぞー!」


 小馬鹿にしやがって。さきは突然現れた場違いな相手をにらみつけた。ただうかつに動けないのも事実。相手が得体の知れないものである以上、変に手を出して痛い目にあうのはアホのやることだ。


「誰だ、おまえはー!!」


 冷静に分析する私の背後から、魔法の弾丸が過ぎ去っていった。頬を冷気がなでる。絶句する。


 しまった!うちには宮内バカほのかがいた。


「やったるでース!ほのかー!!もう1発ぶち込んじゃえ」

「ほのか!やっちまえっきゅ!次撃て次撃て」


 もう、バカばっか。


「ちょ、ま、いきなり、撃つ人がいる??」


 悲鳴にも似た素頓狂な声を上げている。

 残念、うちのチームはバカばっかでした。


「撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て」


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」


「きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅ」


道場を守るため印を結んで双方の間に結界を張る。

 土煙が晴れた後には哀れな侵入者が床に倒れ込み完全に気絶していた。

 ああ、どうすんのこれ。


 気絶した侵入者に対してほのかは手をのせる


「彼の者の記憶を読み取れ!記憶メモリー!!」


 ほのかが相手の記憶を読みだす。額に汗をにじませながら数分がたつ。


「やっぱりだめ。ガードが固すぎる」


「ん~、だめっきゅか」


 カレンの創造クリエイトで作ったロープでぐるぐるまきにした侵入者を調べ上げる。傘以外何も持っていないようだ。外傷はあまりなく、ただ気絶してるだけのようだ。ここまで想定しての低威力の魔弾だったのだろうか?

 油性マジックを取り出して顔に落書きをしだした仲間の魔法少女たちを見て、あ、絶対その場の勢いだわっと思った。


「チッチっチ!ほのかもさきも取り調べが甘いデース」


カレンが舌を鳴らして侵入者に近づくと、ゴシックロリータのスカートを捲りあげる。


「スカートの下に何か隠してる事もありマース!入念に確かめないと!くんかくんか」


カレンの頭をぶん殴る。


「スカートめくんな!」

油断も隙もない。


「ふ~やれやれ、まったくさきちゃんの言う通りだよカレンちゃん!」


頭に添えていた手を離して、プンスカとカレンに近づいていく。スカートを元に戻してやる。


「そうだ!ほのかも言ってやれ」


「ちゃんとブルワーズの中も確かめない…と!!」


スカートを戻したあと、腰あたりを掴んで、一気に引きずり下ろした。


「ちょ、!!!」

「ワオ」

「あ、ごめん」





「う~ん?ん!!」


 侵入者が目を覚ます。


目の前には3人の土下座をした女の子がいた。


「…ごめんなさい」

「…すみません」

「…I'm so sorry.little elefant」


「み…見たの…」

こくりと頷く彼女らに、己の状態に対して理解をするやいなやぼろぼろと泣き出してしまった。


「え~ん。え~ん」


「泣いても無駄ダ。白鳥財閥の教えにこうあるネ。攻勢のときは相手のケツ毛までむしれってネ」


 乙女がケツ毛とかいうなや。って怖いわ白鳥財閥。鬼のようなM&Aでのし上がったというから、あながち嘘でもないだろう。 カレンが顔をあげて言った。


「可愛いそうだからやめたげようよ」


「おっこっちのお姉ちゃんは貧乳だが、話がわか・・・」


 少年のほほが切れる。ほのかの正拳突きの余波によって


「ひっ」

「オマエコロスムネカンケイナイ」


 あぁもう話が進まない。


「で、あなたの言っていたー40点ってナンデスカ?」



「おいぼうず、いきなり攻撃したことは悪かったよ。だけど私らだって魔法少女さ。得体のしれないものがいきなりあらわれたんだ、対処するにきまってるだろう。」


「そこの魔法生物から何も聞いてないのか」


 ミッキュがいる方を指さす。

「僕の名前は、四断シダン

「僕はほのかの監視者 『カウンターズ』だよ」


「ほのかは持ち点100点が与えられているんだ。これが0点になったら僕たちが処刑することになっている。」

 しばっていた縄がずるりと落ちる。魔法で強化されていたはずの縄が溶けていた


「お姉ちゃんたちが僕に攻撃してきたことも含めてー80点っといいたいところだけど・・・」


 ゆっくりと私を見て、杖を向ける。


「若葉の妹に免じてー40点で許してあげる。これで貸し借りはなしだぜ。若葉の妹」

 そういうと侵入者は煙とともにその場から消え失せたのだった。


「若葉さんって、確かさきちゃんのお姉ちゃんの名前だったよね」


 なんで姉の名前が侵入者から出てきたのだろうか。今日は何かとお姉ちゃんのことが思い出される。


「まぁ、あの侵入者のことを追っていけばお姉さんの情報にも行き着くんじゃないかナ」


「追って行くって言ったって手がかりが全くないじゃない。カレン?」


 カレンはごそごそと自分のカバンをあさる。


「オーマイガー!私を誰だと思っているのかしら、白鳥財閥の跡取り白鳥カレン様よ。」


 取り出したのは、パソコン。そこには、地図と中央に光が写っていた。だが大まかにしか場所がわからない。


記憶メモリー追跡トレースをさっきマジックで落書きしてるときに一緒に書き込んだから、数百メートまで近づけば隠れ家なんて一発よ」


 負けじとほのかがいう。うちのチームはなんだかんだ言って優秀だ。

「よし、みんな行くよ」


 だが、ほのかの動きがとまる。


「待つっきゅ」

 ミッキュ がほのかたちの前に立ち塞がったのだ



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