第24話 バザール

「あんな言い方ないデスよ。あ、ほのか!さき!私やることあるので先に帰るデス!おっぱい!じゃなかった!グッバイ!」


 腹立つこと言うカレンちゃんと別れ、さきちゃんと一緒にさちよさんと待ち合わせした北区のバザールへ。今日は事情を話して延期にしてもらおう。


 メインストリートとは違って北区のバザールは完全魔法国住民向け。魔法で作られたアーケードの両脇に沢山のお店がぎゅうぎゅうに詰められている。


 人がギリギリ入れる入口をはいると魔法で広くされた店内が現れる。バザールの長さは100メートルほどしかないが、中身は超大型ショッピングモールにも匹敵する。


「大鍋はいかが!うちのは頑丈だよ!ダンダルシアづくりに持ってこいだ」


「魔法国原産チョルチョル草のクッキーだよ!ほろ苦の魔法使いの味だ」


「よってらっしゃいみてらっしゃい!バームス社のゴルガンディだよぉ!ゲロ安価格だあ!」


 威勢のいい声の間を子どもの魔法使いや魔女たちがホウキで飛び回る。ドラゴンステーキやスライムライムなどの飲食店や綿菓子やりんご飴などのお菓子サラマンダーすくいなどの魔法生物を扱った店まである。


「しっしっし、タピオカ仕立てのカエルの卵パイとかやりすぎだろ」


 って、いた!さちよさんだ!


「さちよさん!見つけた!」


 赤髪の彼女が振り返る。


「ん?なんだほのかじゃん。いいのかこんなとこにいて。」


 振り返った彼女は快活に笑う。さちよさんじゃない!


「かおり先輩っ!!」


 さきちゃんが叫ぶ。赤髪のボブカットにちらりと覗く八重歯がワイルドなかおり先輩だった。それにしても似てるな。


「お前ら買い物か?」


 にこやかに話しかける。


「しっしっし。油断しすぎだ魔法少女!」


 そういうともっていた買い物袋をこちらになげつけてきた。


「なっ」


 目の前に迫ってきた白いビニール袋を手ではらうとそこにはかおりちゃんの姿はなかった。


「ほのか!下!」


 さきちゃんが叫ぶ声よりも先に目の前にかおりちゃんの蹴り上げた足が見えた。


 身体をのけぞらせてとっさにかわす。両手を地面につけて低い体勢から逆立ちをするようにけりをだしてきたのだ。いきなりこんな攻撃をするか。


「ピンクのフリルだっきゅ!」


 こんなときにこの淫獣は!!


 ぱきっ


 頭のうえで音がなり、不快などろっとした液体が頭を伝う。


「なになになに?!」


「ほのか落ち着いて!ただの卵!」


「ああ、私が買い物袋を投げた時に上空に投げたただの卵だ。だが、お前の頭は今パニックを起こしている。だからその間に!」


「っうぉ!!」


 驚いたさきちゃんの声かする。おそらく私にさきちゃんの意識がさかれたところをついてきたんだ。さきちゃんのほうを見る。


「っめんな!!」


 だが、そこは頼れるさきちゃん。呪符を投げつける。


「ん?お前のほうは中二病患者か?」


 呪符を素手ではらう。さきちゃんは顔を真っ赤にした。あっなんかかわいい。霊力を込めるのが遅れる。


 距離をさらに詰めて右手でさきちゃんの腕をつかみ、左手は肩を押し込む。そのままゆっくり倒れていく様子がスローモーションのように見えた。地面を転がり受け身をとるととかおりちゃんは走りだした。


「しっしっし、このバザールで私に勝とうと思うな・・・?あれ?」


 だがその逃走劇は始まる前に終わっていた。


緊縛ロック透明化アンビジュアルアイス!氷よ、かのものをとらえよ!氷獄アイスロックダウン


 振り向くと赤毛のサングラスの女が杖を構えてたっていた。

「ガッハッハッ!公共の場で何やってんだ?ってあ!杖壊れた!おっちゃんごめん!ガッハッハッ!」


 豪快に笑いながら、近づきわたしたちに言う。


「元気いいな最近の若い子はようこそ魔法の世界へ」





 まさか,このセリフを聞くことになるとは・・・

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