第二章 魔法少女さき

第21話 女王様の推しごと

魔法国の


「して、七禍。破魔町はどうなった。」


魔法国の女王が鏡に映った白髪猫耳の少女に尋ねる。


「結界は無事貼り直しましたにゃ。今までの結界に加えて、内側も補強しておいたにゃ。」


「魔力は足りるのか」


「…まぁ、ぎりぎりですにゃ。余剰分を回したから。女王様、本当に計画を進める気かにゃ?」


「何か問題でも。」


ぴくりと眉を動かす。


「今回の事件も、伸ばしすぎた御神木の根の影響で間違いないにゃ。このままだと…にゃ!!」


七禍の傍らに置いてあったカップが爆ぜる。


「…計画は進める。そのために貴様らカウンターズをそちら側に派遣しておるのじゃ。御神木は、魔法国の発展のために必要な物じゃ。他国に先を越されてはならぬのじゃ!!!」


「ごめんなさいにゃ!ごめんなさいにゃ!」


「じゃが。ラックとかいう小僧は気になるな。学園に連絡をとれ。一応手元に置いておくほうがよいじゃろ。監視は怠るなよ。通信を切る。何かあれば、連絡をよこすのじゃ」


「はいにゃ!」


杖を振って魔法の鏡を消す。鏡の裏に居たのは、金髪の少女。黒いフードを深く被りかしづく。


「なんじゃ、そなたか。なんのようじゃ?」


「…続きを」


金髪の少女は紙袋を献上する。中には大量の薄い本がぎっしり入っていた。



「ぬ!それならそうと早く言うのじゃ!はよう、はよう。びーえるなるものの続きを持ってくるのじゃ」


先程の威厳はどこへやら、足をばたつかせて、うながす。


「ふぉっふぉっふぉっ!新刊なのじゃ。騎士×ゴブリン、スライム×ドラゴン、こないだのオーク×ジャイアントなど傑作じゃった。まさかオークがあのような。ふっふっふ。破魔町との外交は素晴らしき文化をもたらしてくれた。ジャイアント保護法など制定するかの?」


女王が紙袋を手にスキップをする。


「喜んでいただき何よりです。また、私と私の連れの半年滞在を伸ばしていただけると幸いです。」


「かまわん。またどーじんしなるものを納めよ。」


「かしこまりました。そして女王様、さちよが現れました」


「うるさいのじゃ。そなたに、一任する。わしは続きを読むのじゃ」


既に紙袋から薄い本を取り出して、読み耽る女王。にやりと笑う金髪の魔法使いに気づかない。


「ん?まて、今、三知代と言わなかったか?あの、凶川 三知代か?」


彼女が顔をあげてもそこには、誰もいなかった。



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