第4話 ふぉーりんだうん

 予鈴が鳴り、昼休みの終わりを告げる。

「さて…我々も授業へ行くか」

 秋季が生徒会室を出て3年の校舎へ向かう。

「いつも思ってたんですけど…なぜ皆さんは誰よりも早く登校しているのに、授業は午後からしか受けないんですか?」

 小太郎が尋ねる。

「会計君…本気?」

 春奈が信じられないという表情で小太郎を見つめている。

(何か…マズイことを聞いてしまったのでは?)

「オマエ…生徒会役員の自覚が足りねぇんじゃねぇのか?」

「脳みそがゾンビ並みに足りない夏男先輩には足りないとか言われたくないです」

「夏男の脳みその件に異論はないが…自覚が足りないという点では私も同感だ」

 振り返った秋季が足をピタッと止めた。

「自覚って…」

「会計君…私たちはなに?」

「えっ…生徒会役員です」

「そうだ…だから?」

 秋季の圧が凄い。

「だから?」

「だーかーらっ‼ 俺達は重役出勤でいいんだよ‼」

 夏男がビシッと小太郎のかじられた肩にチョップをかます。

「痛っ‼ 肩も痛いけど、アンタ達の考え方が痛すぎる‼」

「まぁ…自覚して行動することだな…役員の何たるかを我々の背中から学ぶことだ」

 再び教室へスッタラスッタラ歩いて行く秋季。


(なんだろう…あの迷いのない生き方は…)


 そこへ廊下の角からベッタラベッタラ歩いてきたゾンビ生徒とぶつかりそうになった秋季。

「待て貴様‼ 始業ベルは鳴っているのだぞ‼」

「遅刻とは…生徒会として見逃せませんわ」


(どの口が言うんだろう?)

「罰を与えねばなるまい…この秩序なき世において、法を守る番人として」

「覚悟するんだな‼」

 夏男がビシッとゾンビ生徒を指さす。

「…ゴッドイーター‼」

 秋季の右手に漆黒の剣が現れる。

(具現化能力?…剣を具現化したのか生徒会長…凄い)

 小太郎が驚く。


聖灰せいばい‼」

 ポコッ…

 軽い音が廊下に響く…。

「コレに懲りたら授業開始2分前には着席なさいね」

 叩かれたことに気づいているのか、いないのか…ゾンビ生徒は教室へ向かって歩いて行った。


 カレイド高校3年 『生徒会長 一ノ瀬 いちのせ秋季しゅうき

 能力名『ゴッドイーター』暗黒属性の剣を具現化し光属性に強烈な剣撃を与える…。

 つまり…暗黒属性ど真ん中のアンデッドには無効。


「結局…いらない能力なんだよな…」


 この世に残った人類は、こんなんばっかなのか?

 小太郎は一人、1年生校舎に向かうのであった。

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