お兄ちゃんは、感謝させたい!
宙吊りアール
第1話エピソード0
俺の名前は、有我(ありが) 太矢(たや)。
高校一年生だ。
俺には妹がいる。ああ、最初に言っておくがよくある義理とかではなく、ちゃんと血の繋がってる妹だ。わんちゃんあるかもって妹の飲んだコップに付着したDNAを調べたから大丈夫だ。(何が大丈夫かわからないけど。)
有我 姫(ひめ)
これが、妹の名だ。
俺の妹は、可愛い。世界一可愛いと言っても過言ではない。名前に負けずお姫様みたいだ。それでいて、昨今の姫のようなわがまま鬼畜姫ではなく、とてもお淑やかな感じだ。
そんな俺の生きがいは、妹に感謝されること、褒められること、だ。
妹の『ありがとう』はどんな兵器よりも強力だ。
一番最初にその兵器(ことば)にやられたのは、俺が小学6年生、姫が小学5年生の時だ。
学年から分かる通り、俺たちは年子だ。
そして、その頃の俺らは、いつも一緒にいた。
流石に学校では無理だが、家ではいつもひっついていて、お風呂も一緒だった。
当時、ねぇ?ちゃんと風呂入ってる?と言う言葉遊びが流行った。
流石に数回も引っ掛かれば覚えるもので、
「ねぇちゃんはいないから無理だけど、妹とは入ってるよ。」と言った。その時のクラスの反応は人それぞれだったが主に気持ち悪がられてた、と思う。
それ以降は、その返しはやめた。
そして、お風呂もやめた。
小学6年生にもなると色々な余計な知識を身につけてくる奴もいる。
俺の親友の天空(あまぞら) 太陽(たいよう)もその一人だった。
おっと、話が逸れた。こいつの話はまた今度だ。
ある日、姫と二人っきりでショッピングモールへ行った。しばらく買い物をしてると、突然尿意が襲ってきた。
姫に少し待っているように伝え俺はトイレへ行った。
そこまではよかった。しかし、トイレから戻ると姫の姿がなくなっていた。
俺は、慌てた。泣きそうになった。(実際には泣いてない。泣いてないったら泣いてない。嘘、ちょっと泣いた。)
俺は、探し回った。30分以上は探したと思う。
結論から言おう、姫は見つかった。
姫がいた場所は、俺たちが最初にはぐれた場所だった。端的にいえば2階よトイレ近くだ。
俺は、泣きじゃくりながら
「どごいっでだんだよー、じんばいじたー。」と小6とは思えない泣きじゃくりを見せてしまった。
「私もトイレ行ってただけだよ。こっちこそ帰ってきたらお兄ちゃんいなくなってて怖かったんだから。でも…」
「心配してくれてありがとう。」
よしよし、と頭を撫でられる。
その瞬間俺は女神を見たような気がした。
それから俺は、妹の虜になった。
そんなわけで、中学生の間はとにかく、妹に感謝、褒められるために努力した。
学校で1番の成績をとったり、妹の勉強を見たり、国民的アイドルを作ったり、ポンコツ幼馴染を秀才に見せれるようにしたりと、とにかく妹のために頑張った。
そんな生活もあと一年だ。さすがに大学になってからもそのままではいけない。妹も歳をとる。
だから、最後のお節介として、いい義姉を作ろうと思った。
この告白されたタイミングで。義姉とは飛躍しすぎだ。そう思うかもしれない。だが、俺は自分でも呆れるほどの一途だと思う。
世の中の男子が聞いたら羨むだろうが俺は運良く三人の女の子から告白されたのだ。
俺の中学時代からの付き合い兼国民的アイドル。いつも暑苦しく元気のある 火野 綺羅(きらら)。
俺が通っている学校の生徒会長兼学校のアイドル。 クールな金持ち令嬢 水野(みずの) 氷麗(つらら)
俺の近所に住む昔からの幼馴染兼クラスのアイドル。 クールポンコツ 木野 優麗(うらら)
全員が何かのアイドルだ。
俺は三人にある条件を出すことでその告白を受けると言った。
その条件は、妹を笑顔にすること。
あと一年、高校卒業がタイムリミットだ。
それまでに妹笑顔ポイントを一番多く貯めた人と付き合う。
最低だと思うならどうとでも言ってくれ、でも俺はそう言うやつだ。
そう言った時の、みんなの反応は、同じだった。
「「「それでこそ私の好きな太矢 (っち)(さん)(くん)だよ (だわ)(だね)!」」」と。
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