言語寄生種

 私たちの存在は、記述によって証明される。相互記述社会において、姓名、性別、生年月日、血縁関係などの実在性基底情報なしに、”私”は自身の存在を保証できない。ゆえに、私たちは記述そのものである。

 私たちを構成する記述は時間の経過とともに増加していく。性格的特徴や様々なライフイベントに付随する情報が追記され、それらの膨大な記録は俗に『設定』と呼ばれる。これがすべて削除された時、私たちは実在を否定される。逆に、わずかでも記述が残っていれば、死を迎えても、私たちはそこに在る。

 言葉は肉体であり、魂の形だ。

 私たちは言葉であり、言葉に寄生する種族でもある。

 先に人が在るのではない。

 言葉によって、人は成るのだ。

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