記録

 私たちが発した言葉は全て記録される。だから発話記録に強迫的なこだわりを持つ人は、クリーンなログを残すべくいつも必死だ。最適な言葉の選択に固執して、たった1つのやり取りをするのだっておぼつかない。じっと黙り込んで、最適解が導き出せるまで動こうとしないのだ。

 発話記録は私たちの人生がいかなる言葉に彩られていたかを指し示す。ゆえにそれは美醜といった価値を付与されるし、時に人事評価の対象になったり、芸術作品とみなされたり、人間関係に亀裂を入れることもある。「こんな汚い記録ログの人とは付き合ってらんない!」というように。

 まったく、現実は息苦しくてかなわない。

 だから私はここにいるんだ。君もそうだろ、なぁ?

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