最低の仲間④

「やあファハド、こっちだこっち」


「こんにちは」


「やっほぉ」


 サイード一行は、前回と同じ席に座っていた。


「すいません、遅れました」


「いやいや、時間ちょうどだ。俺たちが早く来すぎただけさ」


「えっと、手紙読みました。お話って何ですか?」


 昨日、家に手紙が届いており、日時とこの場所が指定されていたのだ。


「そう身構えなくていい。明日のダンジョン探索の軽い打ち合わせだ」


 サイードはさわやかな笑顔でいった。その笑顔が少し胡散臭うさんくさく感じた。


「良かった。てっきりパーティ加入の話を考え直したいといわれるのかと」


「はっはっは。そんなことだろうと思ったよ」


「私たちはもう仲間よ」


「そぉそぉ、もっと信用してよねぇ」


「ごめんなさい。初めて仲間ができたので、まだ色々と戸惑っていて……」


 仲間という言葉を言い慣れていなくて、僕は照れ隠しで俯きながらぼそぼそいった。


「一緒に過ごす時間が長ければ、段々と打ち解けられるさ。さて、ダンジョン探索の話は食事の後にしようか」


「そうしましょう」


「ねぇねぇ、ファハド君は何食べるぅ?」


「あの、食事代は……」


「ファハドはもう俺たちの仲間だ、遠慮せずに注文してくれ!」


「はい!」


 運ばれてきた料理に舌鼓を打ちながら、僕たちは和やかな時間を過ごした。


 話題は最近見付かった新しいモンスターの話やパーティ間のちょっとした噂など、僕でも知っているようなものだったので、自然と会話に混じることができた。


 そうして、お皿の上も大体片付いてきたところで、サイードが手持ちの布袋の中をまさぐり始めた。


「そうそう、俺たちからファハドに渡したい物があるんだ」


「渡したい物?」


「この前、一応護身用のサバイバルナイフは持っているといっていたが、こいつを受け取ってくれないか?」


「これって、銃?」


「用途は銃と同じだが、これはオーパーツだ。人間の作った銃弾は、ここじゃあ使い物にならないからな」


「どうして僕にこんな物をくれるんですか?」


「俺たちと一緒に戦うためだ。いつまでも荷物持ちというつもりもないんだろう?」


「無理です無理です! 僕、銃なんて使ったことないし、きっとみんなのことを撃っちゃいます!」


「はっはっは、そういってくれると信じてたぜ。だからこそ、背中を任せたいんだ。もっと自信を持て、きっとファハドは誰もが認める魔弾の射手になれる。俺って昔から人を見る目はあるんだぞ?」


「それじゃあ、ありがたく受け取らさせてもらいます」


 断って気を悪くされてもあれだったので、僕は恐る恐る黄金色の銃を受け取った。


「私からはこの籠手をプレゼントするわ」


 ムルジャーナはほとんど新品同然の籠手を差し出した。


「ええ、こんなに良さそうな物もらえないよ」


「大丈夫。私、自分のやつはもうあるの」


 ムルジャーナは見るからに高そうな籠手を取り出した。


「本当にもらっていいのかな」


「籠手は武器と違って大した額で売れないし、それならファハド君に使ってもらえると嬉しいな」


 ムルジャーナは微笑みながらいった。


「はい、ありがとうございます」


「私からはこれをあげるねぇ」


 アサーラが取り出したのは指輪だった。


「指輪……、オーパーツですか?」


「そうだよぉ。この都市に装飾用の指輪なんてないからねぇ。これは暗視の指輪、付けてるだけで暗闇でも物が見えるようになるんだってぇ」


「別に邪魔になる効果でもないので、それはアサーラさんが付けていてもいいんじゃないですか?」


「だってぇ、このデザイン私に似合わないよぉ。ファハド君ってかっこいいから、シルバーとか似合うと思うんだぁ」


「はあ、それなら僕が付けますね」


 アサーラは相変わらず独特のテンポと感性だなと思いつつ、僕は指輪を受け取った。


 この時受け取った三つの装備が呪い装備だったのだ。


 まだ一度も一緒にダンジョンへ探索しに行ってもないというのに、装備を渡してくる時点で疑うべきだった。


「ありがとう。みんなからもらった装備、一生大切に使わせてもらうね」


 こうして僕は、仲間だと思っていた人たちから呪い装備を押し付けられ、パーティを追放され、日雇い冒険者に戻ったのだった。

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