第9話 素質

 そ、素質のある子?

 私が?


「おやおや、まだ説明してなかったのかい?」

「素質があるかどうかわからないのにいうわけないでしょ」

「...なら説明しようか。暁月彩芽、ついておいで」


 男性についていくと、ある一室にたどり着いた。


「...さて、まずはこの話をしようか」


 そう言って、いつのまにか持っていた本を開いた。

 本の中からは絵が飛び出てくる。


「...かつて、人々は“鬼”筆頭に暴れ回っていた“怪談”や“ウワサ”を恐れていた。夜な夜な人を襲い、自身と同じ“怪談”や“ウワサ”あるいは別のものに姿を変えさせられる...。そんな中、それらを“本”に封印する者が現れた。妖怪とかでいう、“払屋はらいや”みたいな存在だね」


 “払屋”...文字のままだろう。

 妖を払う者の集団...今のこの世の中に払屋は存在しないのかな...?


「“払屋”のような存在を、此処では“司書”と呼んでいる。あなた方の世界で“本”や“図書館”を管理している方々を“司書”とよばれることと同じ理由でしょう」

「あ!なるほど!」


 そして、次のページをめくる。


「はじめは我々のような者が“司書”の代わりとして活動していたが、力と数の問題で不利な状況になっていた。徐々に集まって来ていましたがその時、何者かの手により“封印”が解かれてしまった」


 次のページの絵には、本からおぞましい姿をしている化け物が世界中に散らばっていく様子が飛び出してきた。


「未だ何者の仕業なのか、特定はできていないものの本の回収を最優先にしている。全ては...最も恐ろしい存在...“鬼”の復活を阻止するため」

「“鬼”とはそこまで恐ろしい存在なのですか?」

「...先程申した通り、“鬼”とは“ウワサ”や“怪談”の頂点に立つ者。奴らが復活してしまえば、更に“ウワサ”や“怪談”が増え、人々の被害は甚大になるでしょう。そして、“鬼”自身の力も増大されてしまう。...大人達にこのような事を説明しても、理解どころか聞く耳すら持たない。ならば、まだ大人になっていない子供が適任だと我々は思った」


 ならば素質とは、私達子供のこと...?


「素質とは、子供であること、そして...」

「この“図書館”が見えること」


 ...だから、私が素質があるって言われてたんだ...。


「ただし...命懸けの戦いだ。安易に素質があるからといってなってしまうのは良くない。悩みに悩んだ末になりたいというのであればいいが...」

「保留に出来るんですか?」

「お望みであれば」


 

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