暗殺者の襲撃
ロイは早速行動に移した。しかし、バレるわけにもいかない。貴族である以上、失態は許されない。そこでロイは外部の人間を雇う事にした。
暗殺者だ。
国を出たところにある荒野で出会う。黒ずくめの不気味な男。病的な印象を受ける怪しい男だ。
男は元々アサシンギルドに所属していたが、あまりに残酷に人を殺し過ぎ、目立ちすぎたが故に追放されたならずものである。今ではフリーのアサシンをしている。
「殺して欲しい男がいる」
下賤な人間を頼るのは屈辱だったが、他に方法がないのだから仕方がない。
「そいつはどいつだ？」
「鍛冶師のフェイだ。エルフの国に来た、人間の鍛冶師」
「クックック。誰だっていいや。俺は殺しができれば」
「いくらで受けてもらえる？」
「金貨５０枚。成功報酬で金貨もう５０枚」
「いいだろう」
安くはない金額だが、貴族であるロイの支払えない金額ではなかった。ロイは金貨を渡す。
「へへへっ。まいど」
アサシンの男は金を受け取った。
「そいつはどこにいるんだ？」
「大抵、城の近くの工房にいるよ」
「へへっ。じゃあ、サクっといって殺してくるぜ」
アサシンの男はエルフ国を向かった。
「さようなら。鍛冶師フェイ。エルフ国を救った英雄。だが、英雄はいつまでもありがたがられるわけではないんだ。引き際も僕は重要だと思うよ。劇的な死を迎えてこその英雄。心配するな。ユースティア姫は僕が可愛がってやるし。そしてエルフ国は僕が何とかしてやるから。クックックック！ アッハッハッハッハッハッハ！」
荒野にロイの哄笑が響いた。
◆◆◆
「ふぅ……これくらいか」
俺は深夜まで武具の鍛造をしていた。やはり好きだからできるんだと思う。必要性がなくても作り続けるっていうのは、好きじゃなければできない。
本当は武具なんて必要がない方がいいんだろう。だが、いずれはまた抗争にエルフ国が巻き込まれる気もする。その時に備えておいた方がいいだろう。
無論、そんな事起こらない方が良い。だが望むだけでは平和が手に入らないのは事実だ。現実として抗争は起こってしまう。人が生きている限り必ず。
「ん？」
なんだ。工房の入り口が開いた。ソフィアかと思った。だが、全く別ものだと理解した。殺気だ。そいつは明確な殺気を放っていた。
「誰だ！？」
黒ずくめの男が姿を現す。人間の男。暗殺者か！？
「どうせすぐにてめぇは死んだ。だから名乗る必要性なんてねぇ！ キキッ！」
男はアサシンダガーで襲い掛かってくる。鋭い斬撃。
「くっ！」
キィン！
俺は近くにあった魔剣でそれを防いだ。
「へえ！ やるじゃねぇか！ ただの鍛冶師じゃねぇな」
俺が手に取った剣はアロンダイトだ。アロンダイトには剣聖スキルが備わっている。だから、本職のアサシン相手でも戦闘でひけを取らない。
「食らいやがれっ！」
俺はアサシンダガーを弾き飛ばす。ダガーが宙を舞った。
「くっ！ おかしいだろ！ てめぇ！ なんだその剣の腕は、本職の剣士じゃねえか！」
「お前にそれを説明する必要はない」
「フェイ様、どうしたのですか。先ほどから何か物音が」
ソフィアがきた。
「どなたですか、その黒ずくめの男性。フェイ様のご友人ですか？」
「いや。俺を襲ってきた暗殺者だ。早く誰か呼んできてくれ。こいつを取り押さえる」
「はいっ」
「くっ」
こうして俺は暗殺者を取り押さえる事に成功した。
◆◆◆
「どうやら、また新しいお客さんのようですねぇ、国王陛下」
「うむ。そうだなの」
「く、くそっ！ 早くだせっ！ いつまで僕をこんなところに閉じ込める！ だせっ！」
エルフ城地下牢の事だった。ルード王子とエドモンド国王、それから宰相はわめいていた。
「く、くそっ！ 放しやがれ！ 言っとくけど、どんな拷問をされても絶対に口は割らないぜ！ 俺はそういう訓練をしているんだ！」
俺達はアサシンを牢屋にぶち込んだ。
「お前の処遇はまた決定する。それじゃあな」
俺達はアサシンを後に地下牢を立ち去った。
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