第22話 胸の奥の誓い
あの後おっちゃんに確認をしたところ、おっちゃんからは
「すまないね、部屋が一部屋しか空いてなくてな……また余裕があれば作っておくから」
あのメンバーに加えてもう少し不在のメンバーが居るとはいえ流石に部屋の数少なくない?
てか作るってなんだ作るって。
爆破能力者でもいるのか?
というわけで個室にて。
「なんで同室なの?」
「俺が聞きたいくらいなんだけど……」
「ま、まぁ嫌ではないよ?信頼してるし……」
「なんで疑問形?」
「やっぱりなんか気まずいなぁって」
確かに気まずい。
これはおっちゃんからのありがた迷惑な計らいか、はたまた単なる嫌がらせなのか。
実際は運が悪いだけなのだが、ちょっとした現実への反抗なのか人為的な何かを疑ってしまう。
「まあ、気にしてたってしょうがないだろ」
「そ、それもそうだね」
「……」
「……」
はい気まずい。
いやまあそりゃ、お互い一応思春期で、まして俺視点で見てみれば好きな女の子と一緒の部屋で暮らすことになっているわけで……
まあそりゃ緊張するよな、俺。
仕方ない、うん。
「ねえ、剛」
「どうしたんだ?」
突然幸が静寂を突き破って話しかけてくる。
「清弘さんに聞いたよ、剛が戦いたいって言ったって」
「……そっか」
「私、理由が知りたい。剛が決めたことだから私がどうこう言うつもりもないけど、やっぱり傷ついてほしくないから。せめてその理由を教えて」
理由。
幸のため。
この世で一番大切な人を守るため。
嘘偽りのない大きな理由。
言うか、言わないか。
言うのは恥ずかしいが、幸の真剣な眼差しを前にそんな理由で答えないのは許されないし、俺が許さない。
だけど、俺は……
「さあ、俺にも分かんないや」
「え?」
誤魔化す事にした。
この理由を伝えるのは、幸への告白に等しい。
前に俺が思いを伝えたのは死の寸前。
自惚れではないだろう。
きっとあの後があれば、幸は本当に悲しい思いをしていたと思う。
言えば俺は楽かもしれないけれど、それで幸を苦しめるくらいならば、俺はこの思いを伝えないでいよう。
自信を持って、幸を死ぬまで守っていけると言えるようになるまで。
そう、静かに胸の奥で誓った。
「そう……でも、剛。これだけは約束して」
「何だ?」
「絶対に、いなくなったりしないこと」
「ああ、約束するよ」
「約束だよ?」
「心配すんなって。破らないから」
ありゃ、また誓いが増えた。
これは責任重大だ。
大好きな人のための俺の誓いと、その人との約束が同時にかかってる。
死ぬわけには、いかないな。
「それじゃ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
「「布団一つしかないじゃん!!」」
誓ったその日の晩から、ドキドキで死にそうだった。
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