教育

 国長くにおさアザトにイェードは、三歳になった国長とアルルの息子、ゼロに教育をしていくこととなった。

 ゼロもこの地本来の者と同じ黒髪と黒目で、体格は並だったが、良き顔をしている。

 家庭教師はアザトで、運動の訓練はイェード、他には教育の上手な軍人が教えていた。

 またゼロとアルルには一歳になる弟も生まれており、その名をドレッドと呼んだ。

 ここ数年で増建築された、最も巨大な建物に座すアザトが、軍事司令官イェードと話をする。

「ゼロの頭は悪くない。

 運動の方はどうだ?」

「運動はまだ全部はわからない。魔力も正直大したことはないと思うが、何より根性がある。

 並大抵のものではない。一部の天才を除けば、一番伸びる性格をしているはずだろう」

 堂々と、イェードがそう言う。

「正直だな」

 アザトは苦笑する。

「国長を前に、嘘はつけない。

 勉強の方は、国長、アザトが悪くないとする頭なら、十分すぎる知性ではないだろうか」

「まだ、子どもだからな。

 飲み込みが早いのはうなずける。まあ、私とアルルの子だからな」

 自慢の息子だ、と続けるアザト。

「赤ん坊の頃はどうなるかと思っていたが、無事ここまで育ってくれた」

 安堵の表情を浮かべるアザト。

 副国長として細かい仕事を任されていたマルスが、部屋の前に立って声を上げる。

「国長、アザト様。お話し中のところ申し訳ありませぬ」

 赤髪のマルスが丁寧にそう言った。

「良い。述べよ」

 アザトも丁寧に応じる。

「開拓を目指して南に移動させていた者共ものどもが別の民と接触したようで、戦いになり敗戦。

 一部のものが逃げ帰ってきたようです」

「こちらも、かなりの規模のはずだが?

 軍人だけでもおよそ二〇〇〇人は送り込んだはずだ。

 生き残りは?」

「およそ三〇〇です。ほぼ全員が殺されるか、らわれました」

 アザトは地面に握りこぶしを叩きつけ、怒った。

「イェード」

 酷薄こくはくなアザトの声に、イェードが応じる

「すぐに待機中の軍を動かします」

 珍しく、丁重な動きでそう言ったのだった。

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