第8話

「ん......お兄ちゃん起きて」

「悠真さん起きてくださいー」

「んん......?」

翌朝幼女の声で目を覚ますと、ゆあと朱莉が俺の上に乗っかっていた。

「......というか、その子は?」

見ると、見たことない幼女が俺の上に乗っかっていたのだ。

「あ、あたし?あたしは、翳月李緒かげつきりおだよ」

「李緒......ね。というか、今日は俺学校に行く日なんだけど......」

「ああ、そう言えばそうでしたね!」

「ん、お兄ちゃん学校行くの?......寂しい」

「ところで......あなたが、作家の悠真なの?」

「え、あ、うん......そうだけど......」

というか、幼女に呼び捨てされるって......なんか悲しい。

「へー、通りでゆあから好かれるわけね」

「どういう意味?」

「別に、その、ゆあと随分中が良いと思って......あ、べ、別にあなたの事を好きとかって思ってないからね!」

「はいはい......というか、初対面ですぐ好きになる訳ないだろ」

どうやら李緒はツンデレらしい。

......俺は、こういう子って苦手なんだよなぁ。

その、ツンデレならではの返答っていうのがあるだろ?俺には、その返答は出来ないんだよな......。

「と、とりあえず......避けてくれるかな、起き上がれない......」

というか、学校に行かずにこのまま幼女と戯れていたいのが本音である。

「あ......起きちゃった......むぅ」

と、なぜかゆあは頬をぷくぅっと膨らませる。

「それで、今日は一緒について行っていいんですよね?」

朱莉は、俺の顔を見ながら言う。

「あ、うん、良いけど......」

「李緒はどうする?悠真さんの学校行く?」

「えっ?な、なんであたしが......ま、まあ、朱莉たちが行くなら行ってあげてもいいけど......」

李緒は、ツンデレらしい言葉でそう言う。

ほんとに、見た目と言うか性格がツンなんだな......どうしたらいいのだろうか。

「と、とりあえずさ、ご飯食べたいんだけど......」

「あ、今日は、私がご飯作ったから......朱莉のよりは、全然劣るけど......」

今日はゆあのご飯が食べれるのか.....。

「ゆあって料理できるんだな」

「ま、まあ......簡単なものしか作れないけど......」

「まあでも、料理が出来る方が俺は好きなんだけどな」

「えっ?!」

と、俺とゆあのやり取りを聞いていた李緒が声を上げた。

「あ、ご、ごめん、なんでもない......」

......完全にツンデレですね。


さて、朝ごはんを食べ終えて今は、学校に行く通学路を幼女三人と一緒に歩いている所。

今日の朝ごはんは、トーストしたパンとベーコンの焼いたもの、目玉焼き......など、朝ごはんらしいものだった。

ゆあのご飯は、普通に美味しかった。

朱莉の味に負けてないと思うけど.....でも、朝ごはんだからな。

「......えへへ......」

学校に行く道を歩いていると、ゆあが遠慮がちに俺に少しくっついてきた。

「あ、そういえば、今日の夜食べたいものあります?」

と、朱莉も俺にくっつきながら俺に言ってくる。

「うーん、なんでもいいんだけどなぁ......強いて言うなら、トンカツとかかな」

「トンカツですか......じゃあ、今日はゆあと一緒に作りますねっ」

「えっ?わ、私も?......まあ、お兄ちゃんが喜ぶなら作るけど......」

「......なによ、2人して......」

と、後ろの方から何か声が聞こえた。

俺のすぐ後ろには、少し俯いている李緒がいた。

「というか、あんたたちくっつきすぎでしょ......」

「そうかな?これでも、普通だと思うんだけど......」

「普通じゃない!というか、そう言いながらくっついてどうするの!」

右隣を見ると、俺の腕に抱き着いている幼女のゆあがいた。

「......まあ、なんだ......こういうのもよくない?」

と、俺が言うものの。

「い、良い訳ないでしょ!......大体にして、悠真って、女の子に対して優しすぎるでしょ......ま、まあ、それはそれでいいんだけど......」

これがツンか......なんというか、どう対処したらいいか分からなくなる。

「と、とりあえず落ち着いてよ李緒......なんだったら、私と位置変わる?」

朱莉がそう言うが、李緒は顔を赤くして、

「そ、それはダメっ!」

と、きっぱり言うのだった。


学校内では、「こんな生徒いたっけ?」みたいな目つきとかで見られる。

教室内に入るのは、別に恥ずかしいとか嫌だなって思ってはない。

どういう風に思われようが、それは人の勝手だ。

俺は俺らしく普通に生きていればいい。

「――それでは、授業を始めます」

さて、地獄の授業が始まってしまった。

さっきまで幼女といたときは天国だったのに、今となっては地獄だ。

一応幼女三人には、学校の校門まで送ってもらった。

学校につけば、なにかしらの問題が起きてしまう。

それは何かと言うと、俺が幼女と一緒に歩いているという事が問題になってくる。

まあでも、別に俺はどうという事は無いのだが......まあでも、他人からの視線は感じるものであって。

学校内に入るまで、俺はゆあと朱莉から手を振られた。

李緒は、若干ではあるが手を振ってくれた。

俺はもちろん手を振りかえして学校内に入ってきた......のだが。

「......さっきの小さい子誰だよ?お前に、妹とかいなかったはずたろ?」

と、隣から話かけてきたのは悠季だった。

「ああ、ちょっとしたコネがあってな」

「どういう......?」

もちろん俺は、どういう経緯で小さい子を手に入れたかは教えない。

「まあまあ、そのうち分かるさ」

「......?」

悠季は頭上に?マークを浮かべるが、すぐに授業内容に入っていった。


結局、授業中は幼女の事で頭がいっぱいだった。

つまり、授業内容が頭に全然入ってこなかった。

幼女と言っても、ゆあとか朱莉そして今日会った李緒なんかを考えていた。

「ふぅ......ようやくか......」

久しぶりに学校に行ってみて感じたことは、幼女がいる空間にずっといたいと思ったことだった。

出来る事なら、俺はゆあや朱莉そして李緒がいる空間でずっと生活していきたい。

そこで俺は考える。


学校に行かなければいいんだ!


と。

どういう事かと言うと、単純に学校を辞めればいいという事。

じゃあどうやって学校を辞める?何か悪いことして退学になるか?

......いやいやそんな事はしない。

自分から、「学校辞めます!」ときっぱり言うしかないだろ?

まあでも、最悪の場合めちゃくちゃ怒られる羽目になるだろう。

でも......俺は、こんな地獄のような場所にいたくないんだ!幼女がいる天国の場所にいたいんです!

と、自分のテーブルを叩き椅子から勢いよく立ち上がった時だった。


「――あっ」

..................え?

教卓の後ろから出てきたのは、幼女のゆあだった。

「..................ん?」

もちろん俺は困惑する。

というか、なぜここにゆあが......?

「なかなか出てこないから......来ちゃった」

出てこないから来たって......まあ、俺としては嬉しいんだけど。

「......怒ってる?」

と、ゆあは申し訳なさそうな顔をしていた。

「い、いや、怒ってるっていうか......その、何でここにいるのかなってびっくりしてさ......」

「じゃあ......怒ってない?」

......こんなに悲しそうな顔してたらそう言えないだろ。

というか、別に怒ってないんだけど......。

「うん、もちろん」

俺はゆあに近づいていき頭を撫でてあげた。

「ん......」

撫でられて気持ちいいのか、顔からは笑みがこぼれていた。

「あ、その、朝言ってたご飯......朱莉がもう作ってあるから、早く行こっ」

「あ、ちょ、ちょっと......」

するとゆあは、俺の腕を摑みすぐに家に帰ろうとする。

「えっ?なにか残ってるものとかある?」

「あ......うーん、アレは別にいいな......あ、いや、なんでもない、行こうか」

「......うんっ」

そして遠慮がちに俺にくっついてくるゆあ。

俺はその、小さな体とその体温を感じながら家に帰宅した。






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