十二巫女の救世主
REVERSi
1. 夢の中
『ケイの心には、どんな星が輝いてる?私はね、たった一つだけ。ケイの星があるだけで頑張ろうって思えるの。暗い世界を照らしてくれる、私の希望。ねえ、ケイはどう?』
最後に聞いた大切な人の声が思い出される。
どのように答えたかはよく覚えていない。記憶にあるのは、生涯で最も美しいと感じた幼馴染の笑顔。命が尽きかけていることなど忘れてしまうくらいに綺麗な、一等星よりも眩しく輝く天上の光。
届かないと、どうしようもなくそう思った。
不治の病だと知り、大切な人を救うために医学を学んでいたものの、難病の治療法を見出すなどまだまだ先の話だ。大学の医学部に入って約二年、その手の研究について国内トップクラスの実績を持つ教授に無理やり師事し、研究の最前線に身を置いた。だからこそ痛感させられた。
間に合わないのだと。
神頼みという言葉もあるが、その存在の有無に関わらず、祈りが届かないことはこれまでの人生で否応なく理解させられた。
他人に頼るな。神に願うな。手に入れたいものがあるなら、自身の手でつかみ取るしかない。されど時間は有限だ。
日に日に弱っていく大切な幼馴染を見てどれだけ焦っても、奇跡など起こらずただ時は流れる。
そして死期を悟り、勇気を振り絞ったであろう彼女の問いかけ。
(俺にとっての星は―――――)
闇に煌めく孤独な光の点。その果てしなく遠い星に手を伸ばす。届かないと分かっていながら、手を伸ばす。
風前の灯のように弱く揺れ動く、遠い星。大丈夫、まだ光は失われていない。何光年も先から届いている光だけでは、星がまだ輝き続けているかなど分からない。でもきっと大丈夫だ。彼女はまだ、諦めていない。
だから俺も諦めてはいけないのだと、思った。そう、思っていたんだ……。
大切な星に寄り添うこともできず、先に消えてしまうなんて思いもしていなかった。伸ばした手と星の間に、「死」という壁が立ちはだかるなんて、誰が予想しただろう。
狂った警察官に拳銃で腹を穿たれ、最期は脳天を撃ち抜かれるなんて。そんな未来を、誰が……。
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