#04

「ありがとう、大丈夫だよ。ありがとう」


 宮原くんにお礼を言った私は家に帰って、痴漢にあったことを母に話した。


「怖いねっ!警察に言おう、それ。それで?ゆい、声は上げなかったの!?助けを求めるとか」


 驚いて尋ねる母の質問に私は頭を振った。


「だって……お母さんが言うみたいに、ブスが痴漢にあって悲鳴上げるとか、恥ずかしいでしょ?」


「え!?……あなた、ブスって?本気でそう思ってたの?」


 母の言葉の意味が分からずきょとんとする私に、母は言った。


「本当にブスな娘に、『ブス』って言うわけないじゃないの!あなたって、本当にバカねぇ」


 あっけらかんと話す母の言葉に私は返す言葉が見つからなかった。

 母に対する怒りもある。私がどれだけ傷ついてきたか、母は思いも及ばないだろう。母には私という人間を理解してもらえないという、諦めの気持ちもある。そんな母の言うことを逐一信じて、一喜一憂していた自分も愚かだったのだと思う。

 一方で、自分はブスではなかったんだろうかという重苦しい解放感も感じた。疑いはそう簡単に晴れない。

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