第59話 三人で一緒に

 ゴスン! という鈍い音をたてて、お墓が地面へと落下した。

 目の前にいたたぬきの魔法少女は無事、【散弾サプレッション】の魔法で体力がなくなったというわけだ。


「終わったね」


 ほどよい疲れと達成感。部活動をしていたころは当たり前に感じていたこの感覚が懐かしく思えてくる。


『おつかれユキミ』

『ええ、お疲れ様』


 ユキミが【飛行フライ】の魔法で私のところにやってくると、同じようにユラもこっちへ飛んできた。


「お疲れ様でありますヒナさん、ユキミさん!」

「ありがとうね。ユラがいなかったら勝てなかったよ」

「いえ、お姉ちゃんを倒してくれたお礼です」


 ユラのステッキを見ろというアドバイス。あれがなければ、攻撃のからくりに気づくことはできなかった。


「ユラさんはよくあの攻撃に気づけたわね」


 ユキミの質問に照れたように笑うユラ。


「私プロ選手のことを調べるのが好きで、現役を引退しているとはいえ、タヌキチポンさんのことは知っていたでありますよ!」

「た、たぬ?」

「はい、タヌキチポンさんであります! 相手をだますようなプレイが得意で今日使っていたステッキを手放して行う遠距離攻撃は、現役時代によくやっていた攻撃の一つであります!」


 そっか、昔の活躍を知っていたから攻撃方法がわかったのか。


「本当にありがとうございました!」


 そしてユラはあらためて、私とユキミ、そして倒されたシズネにお礼を言うと、自分からギブアップボタンを押し、お墓へと姿を変えた。

 

 結果的にユイが選抜クラスに入った理由はユラの勘違いで、私が原因だったんだけど、そのあたりは現実でユイが説明するだろう。


 頭の中にファンファーレが響いてくる。

 ビクトリーの文字が空に浮かび、私たちの勝利を祝福してくれる。


「ヒナ。私やっぱりあなたとゲームをするのが楽しいわ」


 空に浮かぶ文字を見つめながら、ユキミはそういった。


「ごめんね、一人で逃げ出しちゃって」

「本当よ。メールは返事が無いし、家は引っ越してるし、ゲームのアカウントまで全部削除して、どれだけ探したことか」


 本当にたくさんの迷惑をかけちゃったんだなぁ。

 悪いことをしたから嫌われた。そんな決めつけで、心配してくれる人や自分を求めてくれる人を傷つけた。

 悪いことをしたのは事実だけど、それですべてがなくなるわけじゃないんだ。


「もう、逃げないよ」

「ええ」


 二人で手を握り合った。

 これからも離さないように。


「ねえ、また一緒に遊びましょ」

「もちろん!」


 視界が白に変わっていく。これからは授与式だ。

 目を開け左右を確認する。

 右にはユキミが、左には復活したシズネがいた。


 こんな光景をこれからも見ていきたいな。

 胸が高鳴るような戦いと、一緒に笑い合える友達。そして頑張ってつかみ取る優勝。

 これからも、私はずっとこんな景色を見ていきたい!


 そして私たちは、赤い絨毯の上を歩きだした。

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