バトロワゲームは魔法少女で!

睦樹裕太

1章 ~弱気な私の生存戦略~

第1話 プロローグ

 空を飛び交う魔法弾を、回避しながら戦う魔法少女。

 強くて可愛くて、仲間と一緒に悪い奴をやっつける!

 そんなアニメの登場人物にあこがれて、私はいま『MKDマジカル・ナイト・ドリーミング』をプレイしていた。


 私もアニメの魔法少女みたいにかっこよく戦って、かわいく人々を助けてあげるんだ! そんな想いで始めたゲームだったのに、まさかこんなことになるなんて……。


 背後から飛んできた魔法弾が、頬を掠めて飛んで行った。

 心臓がキュッとした! めっちゃ怖い!


 後ろから追いかけてきている魔法少女は二人。

 空を飛びながらステッキを振るい魔法弾を私に向けて放ってくる。

 なんでこんなに狙われているのか、その理由は簡単だ。

 私のマナが尽きかけているから。


 漁夫の利。


 バトルロワイヤルといわれるこの手のゲームでは、よくあることらしい。

 少ない労力で相手を倒し物資を奪い取る!

 そのために、さっきからずっと戦闘続きの私を狙うというのは、確かに理にかなっていると思う。


「でも、だからって! 私まだ初心者なんだから~!」


 魔法弾で反撃するも、その攻撃はあらぬ方向に飛んでいってしまった。

 敵を狙って撃つ。簡単そうなことなのにこんなに難しいなんて。


 当たらない攻撃だったとしても、私の反撃に追いかけてくる魔法少女の勢いが鈍る。


「今の間にマナの回復アイテムを拾わなきゃ!」


 急いで倒されたプレイヤーから回復アイテムを回収する。

 そして空へ飛びあがろうとした瞬間、魔法の攻撃が飛んできた。


「うわッ!」


 慌てて飛びあがり回避したところへ、ほかの魔法少女が、すかさずステッキを振りかざす。


「そろそろ限界! もう無理!」


 そして魔法を放つその瞬間――相手の魔法少女は別パーティの攻撃で倒された。

 助かった、のかな?

 撃ちぬかれてHPゲージがなくなった魔法少女は、すぐに可愛くデフォルメされたお墓に切り替わる。


 そして新たな敵の登場に、また私の一方的な防戦が始まろうとしていた。


 弱った魔法少女を狙う魔法少女。そしてその隙を伺う別の魔法少女。

 そんな図式が崩れては、またあらたな魔法少女が参戦して繰り返されていく。


 こんな戦いになるなんて……。


 可愛くかっこよく悪を倒す!

 魔女っ子アクション! みたいなゲームをイメージしてたのに!

 私が思ってたのはこういうのじゃないんだってばぁ!!


 服装は魔法使いだし武器はステッキだけど、こんな……

 こんな血みどろの戦いをするゲームだなんて聞いてない!


 弱った敵を狙って、魔法少女が群がってくるなんて私の知ってる魔法少女じゃないよ!

「ほんと、どうしてこんなことに……」


 そう、確かこうなったきっかけは――


 私がゲーム屋さんで、魔法少女が飛び交うポップでキュートが謳い文句のゲーム。 『MKDマジカル・ナイト・ドリーミング』を見ていたのが始まりだったんだ。

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