第4話 それでも勇者は武器を取る!

勇者は怒りに任せて包装紙をビリビリに破くと、箱の中には黒光りする刃渡り五十センチ程のショートソードが入っていた。


「……」


【封】と書かれた紙で鞘と柄がグルグル巻にされている。どうせまたポーの演出だろうと無造作に引きちぎると、黒光りする鞘から何らかの力が溢れ出て来るのが素人目にも分かる本物の魔剣であった。


「ワシと預言者ポー、そして神官たちで総力を結集して召喚した異界の武器【魔剣ソウルブレイカー】じゃ。一太刀ちすればどんな相手でもソウルがブレイクしてしまう優れ物じゃ。これさえあればポーでも魔王を倒せるかもしれん、ハッハッハー!」


「はぁ?」


「じゃからこれさえあればポーでも……」


「……」


「……やっぱ勇者くんじゃないと無理かなー?」


勇者は手にした魔剣を鞘から抜くと、自分のついやした十数年をまるで無駄かの様に鼻で笑った大神官に向けて突き付けた。


「勇者くん、それ人に向けちゃダメなやつね。それ刺さったらジイジのソウルがブレイクしちゃうからね」


「ちっ!」


「舌打ち!!」


だがこの時、ジジイの言葉に苛ついた気持ちがスッと静まって行くのを感じた。


「修行を始めて十二年……途中で絶望もしたけれど、魔剣を手に入れ僕は元気です!」


何だコレ、俺は何を言ってるんだ?


まさかこれ魔剣の呪い……なの、か?


さっきまでの陰鬱な気分が全て吸い取られていく気がする。そして何故か口元が緩む……。


「流石、魔剣! いつも苦虫を噛み潰したみたいな勇者がこの笑顔――っ!!」


「ジジイ、ころすよー!」


いつもの殺気を籠めた台詞が軽い、しかも若干笑顔になっちまう!


こんな俺をあざ笑うかの様に大神官のジジイは口角を吊り上げてニヤリと笑った。


「フフフ……成功だ。あの封印を解き、この魔剣を手にする事が出来る者を育成するため、十数年も掛けてここまで性格の悪い人間に育て上げ、絶望を与え、おちょくり続けた甲斐があったというものだ」


「何を―――っ! 言っちゃってるのかなぁ」


笑顔が止まらねぇ。完全に魔剣の支配下にあるようだ。


「バカな勇者くんにももう何となく分かってるよねぇ。その剣ね、負の感情を喰って持ち主を支配するんだよねぇ」




無駄に笑顔。感情と意志がコントロール出来ない【勇者】17歳。秋の昼過ぎだった。

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