第24話 予想外の出来事

今、私の部屋にルードさんが来ている。この前の約束を守るために…


「理想とかありますか?」

「ないですね…なのでツキノ様のおまかせで」


そう言って任された。今まで切った人ってみんなおまかせだよなぁ~まぁちゃちゃっと切りますか。そう決めて素早くハサミを持つ、段々髪の量が少なくなりさっぱりしてきたようなところで止めた。


「これぐらいでどうですか?」

「おぉ!さっぱりしましたね。これで大丈夫です」


あぁ、ルードさんもカッコいい。この世界は顔が良い人しかいないのか…そう思うと自分のごく普通な顔にがっかりした。


「これで終わりです。またいつでも声掛けて下さい!」

「ありがとうございます。部下に髪どうしたって聞かれそうですw」


喜んでもらえたなら嬉しい、元の自分の職業がここでも使えたのは嬉しいことの一つだったから。


「髪を切るの終わったらやることがないな…」

「それなら近くの森に行きませんか?」

「いいな!それ。私もついていっていいですか?ツキノ様」


森か、気分転換にはいいかも…天気がいい日にはピクニックとか楽しそう。


「行きたいです!ルードさんとも!」



◇◆◇



そう言って軽い準備だけしてお城近くの森に向かった。森は綺麗な緑で染まっていてとても綺麗だった。その時点では、誰もが予想にしなかった出来事が起きるとは思わなかった…


「うわぁー空気が綺麗ですね!」

「奥の方まで行くと小さな滝のようなものがあって綺麗なんですよ。そこに向かいましょうか」

「ここは魔物も来ないですし平和です。それになんかあってもグレンと私がいれば大丈夫ですよ」


ととても心強い言葉を掛けてくれた。あれから少し経ったときの事だった。急にグレンさんとルードさんの顔が険しくなったのだ。


「ツキノ様、少しお下がりください。」

「グレンまさか…」

「あぁ、不味い。そのまさかだ。」


私はその会話の意味が分からなかったがすぐに理解が出来た。目の前に魔物がいるのだ、さっきこの森には出ないって言ってたのに…大きい狼が三体近づいてくる。


「フォグウルフか…場所が森とか最悪だ」

「霧を出される前に倒した方が早いね」


それが合図のようにグレンさんは魔法を唱えながら剣を、ルードさんは魔法を放っていた。一体倒したと思った瞬間、辺り周辺が霧で覆われた。


「不味い…下がれ!」

「ダメだ、二体の霧は濃過ぎて消えない」


その間に距離を詰めていたフォグウルフは、グレンさんに傷を負わせた。すぐ、ルードさんが回復させようとするがもう一体が攻撃をしていた。防御が間に合うのを願ったが間に合わなかった。


「ツキノ様…今すぐ、お城に…私たちを置いて、早く…」

「そんなのできません!」

「いいんです…ライナ連れて、行け…」


私に優しくしてくれた、恩を返せるような強さを…そう願った瞬間だった。私の体が光ったと同時に頭の中に一つの言葉が浮かび上がった。どうしたらいいか分からないままその言葉を叫ぶ。


「「ヴァンウィズドロー!!」」


その瞬間、霧は晴れ狼は切れ痕が残り二体とも倒れていた。え?今、私なにした…?きっと誰も追いついていないだろう…それより、グレンさんとルードさん!


「ルードさん!大丈夫ですか!」

「は、い…どうにか。ツキノ様、ルミエールって言ってみて下さい」

「え?る、ルミエール。」


手から光の粒が溢れた。ルードさんを見てみるとさっきの傷一つ残っていない。


「グレンにも同じように!」

「は、はい!」


すぐ逆側のグレンさんにも同じようにするとやはり光の粒が出ていた。ふと視線を戻すとグレンさんもまた治っている。


「これは…不味いですね」

「そうですね…」


結局、このままでは進むことは出来ずお城に戻った。お城に戻って最初にしたのは鑑定だった。


「ツキノ様、手を失礼しますね。」


そう言って手に触れられた瞬間、火花が飛び散った。


「まさか、ツキノ様。私より魔力が多いのでは…?」

「でも…前回は少ししか無いって」

「実は、さっきのルミエールは上位の回復魔法なのです」


魔法が使えた…?私が図書館で読んだ本には少ない人は一生増えることはないって…


「でも魔力は一生変わらないのではないんですか?」

「よく知っていますね。ツキノ様の仰る通り増えることはないです。でも…ツキノ様は増えたそれもあり得ないほど…」

「この事が国王に渡ったら、ツキノ様の扱いはすぐ変わるでしょう。」


グレンさんの言った言葉でやっと自覚した。この国で私はこれからどんな存在になるのかを…


「このことは、秘密にしておきましょう。バレてしまったらツキノ様の身が危ない」

「この話は私からルイス様に伝えておきましょう。ルイス様なら大丈夫でしょうから」

「ルード、ツキノ様に魔法の使い方を教えて欲しい」

「そうだな、なんかあった時に必要だよな。」


私は、これから魔法を習得することになる。自分の身を守るため、大切な人を守るために…




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