第17話 ある人からの手紙

あれから、一週間に一度ほど王妃様とお茶会をしている。そのあとは、あの裏庭でみんなで軽いお茶をするのが習慣になった。それにしてもいつもあの人影から視線を感じるんだけど…


「ツキノ様、どうかしましたか?」

「この小さなお茶会を始めてから、誰かに見られてる気がするんですよね。人影も見えるし」

「人影…?どのあたりからでしょうか?」

「あっちです、今も人影が…」

「あれは、まさか…」


何かあったのだろうか?もしかして、やばい人だったりする…?!

グレンさんに恐る恐る話しかける。


「グレンさん…?」

「すみません、あの人影は大丈夫ですよ。ツキノ様もあの方にお会いする機会がきっとあるでしょう」


あの方…?お会いする機会…?よく分からないが何かあるらしい。そこまで気にすることはないだろうと思いながら記憶は消えていった。



◇◆◇



いつものように朝起きて、好きなことをする日々が続く中。

私宛に一通の手紙が送られてきた。


「ツキノ様、王妃様からお手紙を渡すように言われまして。これを」


レティ様から手紙…?何かあったのだろうか?今まではグレンさんを通じてお茶会などを開いていたので正直驚いた。とりあえず読んでみることにした。


―――アオイへ―――

急な手紙ごめんなさいね。突然だけどアオイに会わせたい人がいるの

今日の夕方辺りに来てもらえるかしら。本当は朝に会わせたかったのだけど

急な公務が入ってしまって…大丈夫そうなら手紙で返事を書いてもらえる

と助かるわ。あっ、勿論グレンに伝言でもいいわよ。

―――レティーシアより―――


聖女じゃない方の私がに会わせたい人とは…?今頃、思ったけどレティ様と仲良くさせて頂いていいのだろうか?言われないかな…王様とかに。でも、レティ様の方が強そう。近くにいたクリスタさんに声を掛ける。


「あの、すみません。手紙のお返事を書きたいので紙と書くものの用意お願いできますか?」

「分かりました、今用意いたします。」

「ツキノ様、王妃様はなんと…?」

「今日の夕方に会わせたい人がいるから会いに来てくれないかというお手紙でした。今日も安定にすることがないので会いに行こうかと…」


グレンさんからの顔からして会わせたい人に予想がついているみたいだった。


「もしかして、グレンさん誰か知ってたりします?」

「確信はありませんが、この人ではないかと思う人物はいますね。」

「えっ、誰ですか?!」

「それは、秘密です。でもあの方以外なら大丈夫だと思いますが…」


何か心配があるみたいだけど、まぁ大丈夫だよね。それにしても夕方までだいぶ時間あるよね。せっかくだしレティ様に食べてもらうためにお菓子でも作ろうかな。でもレティ様、王妃様だし大丈夫かな?


「レティ様にお菓子を持って行きたいんですけど大丈夫ですかね…?」

「ちゃんと毒見係がいますので持って行っても大丈夫だと思いますよ。」

「じゃあ、今日はキッチンを借りてお菓子を作りたいです。」


何を作ろうかな、フィナンシェとか?マカロンとか?おしゃれなのがいいよね。お菓子は種類がたくさんあるから迷うなぁ。一人でわくわくしていると


「用意してまいりました」

「ありがとうございます。」

「手紙を書いている間、私たちは今日の予定の話をしてきますね」


なんて書こうかな、なるべく綺麗な字で簡潔に…


書けた、これでいいかな。少し不安だけど読み直しだけしてレティ様に渡してもらおう。よし、初めての手紙しかもレティ様宛。緊張するけど…


「あの、さっきのお手紙の返事を書いたのでレティ様に渡してもらえますか…?」

「私が渡してまいります、戻ってきたらキッチンに参りましょう。」


そう言った、クラウスさんに私はお手紙を渡した。なんか緊張で喉が渇いた。


「あの、紅茶頂けますか?」


そう一言お願いして窓の外を眺めた。綺麗、でも何か足りないどこか寂しい。何故だろう自分でもよくわからない。いつの間にか気が付かないうちに遠くの方まで眺めていた。


「ツ…ツキ…ツキノ様」


声を掛けられていたみたいだ、気が付かなかった。変に心配させただろうか…?


「大丈夫ですか?」

「あ、すみません。少し景色見てました。」

「紅茶の準備が出来ました。」


淹れてもらった紅茶を飲みながら、私はクラウスさんが帰ってくるのを待った。クラウスさんが行ってから数分経った。グレンさんいわくもうそろそろ戻ってくるらしい。私はただクラウスさんに何事もないよう願うしかない。


「ただいま、戻りました。」

「おかえりなさい、届けてくださりありがとうございました。」

「では、簡単な準備をして調理場に向かいましょうか」

「はい!お願いします。あっ、レーナさんクラウスさんに紅茶を淹れてあげてもらえますか?」

「ツキノ様、私は大丈夫ですから…」

「かしこまりました。」



自分が準備してる少しの間にでも休憩できるように紅茶をお願いする。少し遅く準備をしよう、私のせいで無理ばっかさせてしまってるからせめて、ね?それから私は、クラウスさんが飲み終わるのを見計らって準備を終わらせた。

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