第6話 変身っ!
◇◇◇
「なぁ、リリアお前にひとつ言っておきたいことがあるんだ」
「なぁに?真剣な顔しちゃって」
「フェンをつれて帰ったら、お前が聖属性持ちの神獣使い、『神獣の巫女』だと言うことが知れ渡る」
「あー、そっか、そうだよね。これでギルマスもようやくテイマーらしくなったって喜んでくれるんじゃない?冒険者ランクも上がるかな!」
「いや、話はそう単純じゃないんだ。多分、教会からスカウトがくると思う」
「教会?」
「聖属性持ちは『聖女』認定される可能性が高い。リリアは特に珍しい神獣使いだ。間違い無く認定されるだろう」
「ええっ、私聖女様なんて柄じゃないよ」
「聖女になって教会に所属したら、多分一緒にはいられなくなる。俺は、獣人だしな……」
「なんで?」
「教会の総本山があるアリステア王国じゃあ、獣人の身分が低い。大切な聖女様のパートナーとは認められないだろう」
ロルフは両手を固く握りしめた。
「は?なにそれくだらない。そんな教会の聖女なんてこっちからお断りよっ!」
「いいのか?」
「当たり前じゃない!絶対いやっ!」
「リリア……」
ロルフはリリアをギュッと抱きしめる。
「お前がもし聖女になりたいって言ったら、俺、お前のことどっか攫って閉じ込めようかと思ってた……」
「おいっ!危険人物かよっ!こわいわっ!」
「そんくらい、お前のことが好きなんだ。お前と離れるなんて考えられない」
「ロルフ……」
二人は見つめ合い、ロルフの目に熱がこもる……
『え、えーっと、お二人とも僕のことをお忘れなくっ!』
フェンが足元でキャンキャン鳴いている。
「フェン、邪魔だ」
「ちょ、ちょっとロルフ!大人気ない!ごめんね~フェン、フェンのこと忘れてないよ~」
リリアがフェンを抱き上げてスリスリと頬ずりすると、フェンは嬉しそうに尻尾をブンブン振る。
『ロルフの兄貴!僕、いい解決方法がありますっ!』
「ん?」
『
ぼわんと白い煙がフェンの体を包んだかと思うと、
「じゃ~んっ!人化の術~」
そこには10歳位の男の子の姿が。真っ白な髪に黒目がちなくりっとした目が愛らしい。ただし、頭には真っ白でフサフサの耳がピョコンと飛び出しており、お尻にはフサフサの尻尾がブンブン揺れている。
「どうです!これならフェンリルだってばれませんよ?」
どやぁーと胸を張るフェンにリリアは飛びついた!
「かっかっ、かわいいっ!!!いやーん、耳!可愛い!ピコピコしてるぅ~!しっぽ!しっぽフサフサ~」
「あわわわわ!リリア、くすぐったいよぉー」
舐めんばかりの勢いでフェンに頬ずりするリリアに若干イラッとしながら、ロルフはふむ、と思案する。
「そうだな。これなら獣人の子どもに見えなくもないな」
「でしょでしょ?僕たち人化の術は得意なんですっ!母上も人化の術が得意で、昔は人型で人間に混じって生活してたっていってましたっ!」
「ええ~!そうなのっ!じゃあ知らないうちに会ってたりして!」
「僕たちを育てるためにあの洞窟で暮らしはじめたから、ここ数百年は人里に降りてないって言ってたけどね」
「じ、時間の単位が違う……」
「フェン、その姿はどの位持続できる?」
「リリアが側にいてくれたらリリアから自然に力が流れ込んでくるからずっといけるよ!リリアが側にいないときは1日くらいかな?」
「上等だ」
ロルフがニヤリと笑う。
「フェンは親戚の子を預かったことにしよう」
「え、えーと、その場合私の冒険者ランクは……」
「あがんねーな」
「そ、そっか……」
「でも、俺たちはパーティーだからパーティーが活躍すればリリアのランクもあがる」
「そ、そっか!そうだよね!」
「それに、フェンも冒険者として登録すれば、3人でパーティーが組める」
「僕も母上みたいに冒険者になれるんだっ!」
「フェンのお母さん冒険者だったの?」
「うんっ!めっちゃ強い大賢者様と一緒に世界中を回ったらしいよ!」
「それってもしかしてアリシア様だったりして……」
「俺たちも頑張ろうな」
ロルフがフェンの頭をくしゃっと撫でるとフェンがくすぐったそうに目を細める。ピコピコ動く耳とブンブン揺れるしっぽが愛らしい。
「ん?そういえば……なんでロルフには耳と尻尾がないの?ディランさんもないよね?」
「いまさら?」
ロルフは若干呆れた顔を向ける。
「俺たち獣人にとって耳と尻尾は弱点になりうるからな。感情がそのままでちまうし。強い個体ほど普段の獣っぽさは少なくなるな。ただ、感情が高ぶると獣化が進むタイプのやつや、獣型と人型を自由にコントロールできるタイプもいる。ディランは前者で俺は後者だ」
「なるほど!ということは……ロルフも耳とか尻尾をはやしたりできるわけ?」
「できるが……中途半端に獣化するメリットが……」
「かわいいからっ!」
「……は?」
「みたいみたいみたい!ロルフが耳と尻尾生えてるとこ!」
「え、いや、それは……」
「見せて!」
リリアのキラキラした目に
「こ、今度な……」
「今度っていつ?絶対だよ?約束だよっ?」
(こんなに耳と尻尾に食いつかれるとは思わなかった……)
隣ではフェンが尻尾をブンブン振って嬉しそうに2人を見守っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます