第6話 永遠の時を生きる

 ◇◇◇


 結論からいうと、僕は普通に魔法が使えるようになった。例えば、手のひらから炎が出る、と思い浮かべただけで、実際に炎が出たし、水を思い浮かべたら水が出た。知っている適当な呪文を唱えてもいいし、唱えなくてもいい。僕が想像するだけで、僕は魔法を生み出せる。これが大賢者の力とかいうやつなのだろう。


 生きるために仕方なく、僕は仕事を始めた。子どもの出来る仕事なんてたかがしれている。お決まりの冒険者ギルドに登録して、魔物を狩る毎日。目的もなく、目標もなく。


 最初におかしいと思ったのは、異世界にきて一度も髪を切っていないのに、髪の毛が伸びていないと気がついたこと。そういえば、爪も伸びていない。何年過ぎても、僕の外見は全く変わらない。僕は僕のまま。あの日、あのとき、異世界に転移してきたままの、僕。


 こんなところまで化け物じみてるんだなと思い悲しくなった。不老不死なんて、恐怖以外の何物でもないじゃないか。この世界で!大切なものが何一つないこの世界で!僕は何を希望にして生きればいいんだろう。


 何年も何年も無駄に時が流れて。ふと思った。僕は大賢者。ならば、僕が世界を渡ってきたように、僕自身の力でもといた世界に帰れるのでは?


 それからは楽しかった!目標が生まれたから。絶対にもといた世界に帰ってやるっ!と心に決めて、異世界転移の魔法を研究した。山にこもり、修行する日々。ついでに家を建て、快適な生活環境も整えた。


 ところが、どんな魔法も使える僕が異世界転移の魔法だけは発動しない。何年も何年も研究して、ようやく気がついた。エネルギーが足りないことに。


 この世界には一定の魔力がプールされていて、魔力を使うことで魔法を発動させることができる。そして、世界を渡るほどの魔力は、とても、とても膨大な魔力を必要とすることに。


 あれからも、城では何人もの勇者や賢者が召喚されていた。そのたびにこの世界は力を失っていくのだ。少しずつ、この世界が力を失っていくことにまだ誰も気がついていない。彼らは、この世界の崩壊を自らが招いていることに気がついていないのだ。


 僕は長い長い時を過ごす間、この世界の魔力を自分自身に取り込み、留めることに成功した。膨大な魔力を持つ僕は、もはやこの世界の一部ともいえる。今なら楽に異世界を渡れるだろう。でも、あれからどの位時が流れてしまったんだろう。愛する人たちはみんな、死んでしまっただろう。永遠の時を生きる僕にはもう、帰る場所すら残されていなかった。

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