第27話 クリファスの正体

ガツガツガツガツ……


「ははは……まさか、ここまで食べるとは予想外だよ」


「大丈夫ですか? あれならハリッサを止めさせますけど……」


僕とクリファスさんだけでなく、食堂内のお客さんもハリッサのたべっぷりを見学していた。


「いや、ここまで見ている人がいるのに、途中で止めさせるなんて私には出来ないよ。それにお金の事ならまだまだ心配しなくても良いよ……問題は食材の方じゃないかな? カガリさん、どうかな?」


「あ、はい。一部の料理は売り切れになってしまいましたが、店長はなんかのスイッチが入ったのか、明日閉店になっても料理を出し続けると言っているので……店長は止まらないと思います」


「だそうだよ、アカリさん。これはもう止められないよ?」


「分かりました。僕はもう何も言いません」


「それはそうと、アカリさんとハリッサさんはずっと一緒に生活していたのだよね? 毎日のハリッサさんの食事はどうしていたんだい? 毎日、これだけ食べるとなると食費が凄いことになりそうだよね……」


「それは企業秘密でお願いします……」


ハリッサ以外には、勇者特典であるアイテムボックスの事は秘密にしたいので、無限に料理が出せるのも秘密にしたいと思っていた。


「企業秘密って?」


「モグモグ……アカリお姉ちゃんの出すおにぎりは最高だよ! モグモグ……クリファスさんも食べたら良いよ!」


「ちょ、ハリッサ!?」


ハリッサは料理を食べながらも僕たちの会話は聞いていたみたいで、僕が出すおにぎりの話をクリファスさんにしてしまう。


そう言えば、町に近づいたらハリッサに口止めしようかと思っていたけど、クリファスさんたちの救出でバタバタしていたからハリッサに口止めしておくのを忘れていたな……


「へぇ、アカリさんの作る料理ですか……非常に興味がありますね。良かったら今度食べさせてもらえませんか?」


「えっ、え~と……」


どうしよう?


雰囲気的に断るのも失礼な感じはするけど、この町にお米がある可能性が低い現状で、あまり安請け合いをして断るのも更に悪い気がした。


「何か聞いてはいけない事みたいですね」


「……すいません」


「いえいえ、命の恩人を困らせる事はしたくないので、この話は可能ならって事にして下さい」


「分かりました」


「それで、アカリさんたちは今日泊まる場所は決まっていませんよね?」


「あっ!? 確かに決まってないですね……(ってか、お金も無いから町の外で野宿しようかな?)」


食堂での食事が予想外に長引いたから、外は既に暗くなっており、完全に宿の事を失念していた……というか、お金すら無いことに気が付いてしまった。


まあ、数ヶ月間ずっとキャンプセットで野宿していたから、いまさら数日間野宿しても気にはならない認識になっていた。


「私の聞き間違えで無ければ……野宿すると聞こえたのだけど?」


「ああ、聞こえてしまいましたか……僕たちは野宿に慣れているので、今日は町の外で野宿しようかなと思ってます。ハリッサも良いよね?」


「モグモグ……うん! 私もアカリお姉ちゃんと一緒なら何でもいいよ!」


「町にいるのにワザワザ野宿をすることもないだろう? 宿ならば私が手配しますよ?」


「あ……恥ずかしながら、資金が無いのです。だから、僕たちは野宿しますが気にしないで下さい」


「流石にそれは気にするよ……良かったら、私の家に来ますか? 来客用の部屋が数部屋ありますから、資金に関してもお金は取らないので問題無いですよ」


「来客用が数部屋?」


なに来客用に数部屋も用意するとか、その豪邸みたいな家は……しかも、そんな家に住むクリファスさんは何者?


「はい、実は私の正式な名前はクリファス・ファリスタです」


「え?」


ファリスタって、この町の名前だよね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る