ミドル2-2『第二幕:新たな指令』

GM:キミたちとエイルの共同生活が始まった。

 基本的には、キミたちが訓練を受けている間にエイルへの聞き取り調査が実施されるという形式だ。

 厳しい訓練から3人部屋に戻ると、エイルは必ず共用スペースで待っていて、紙に書いた『おかえりなさい!』の言葉で出迎えてくれる。そんな彼女の様子は、キミたちの心に普段とは違う感情を呼び起こした……かもしれない。

 そして、共同生活が始まって数日が経過した頃。キミたちは壮一の執務室に呼び出されていた。


マリー:「マリー・クリフィス。招集に応じ参上したの」

壮一:「来たか。楽にして構わない」

稀生:「ありがとうございます」

 肩幅に足を開き、しかし腕は後ろに回したままの姿勢を取る。

壮一:「うむ。早速だが本題に入ろう。呼び立てた理由は他でもない。エイルさんへの調査が、思うように進んでいなくてな。

 FHに幽閉され、よほど辛い目に遭ってきたのか……こちらの質問に対し、明確な答えが返ってこない状態だ。

 加えて、オーヴァードではあるがレネゲイドに関する知識に疎い。前提として、まずはここまで問題ないか?」

マリー:「問題ないの。共同生活でも似たような状態で、恐らく何らかの必要があって幽閉されていたと考えるの」

稀生「こちらも問題ありません。ということは、自分たちを呼び出した理由は」

壮一:「ああ。そこで、だ。お前たち――」


 言葉を切り、稀生たちを見回す壮一。その眼光の鋭さに、否応なく場の緊張が高まり――。


壮一:「――エイルさんを外に連れ出して遊んでこい」

稀生:「は、了解し……え? 遊ぶ、ですか?」

マリー:「……ここはUGNの基地で、彼女はここの存在と秘密を多少なりとも知っているの。外に出せば、情報の漏洩ろうえいに繋がる可能性もあるけど……」

壮一:「承知の上だ。情報漏洩を防ぐためにお前たちを同行させる、という話でもある。

 この任務、発案理由は2つある。1つは、エイルさんの精神状態に考慮して。ずっと拠点に缶詰では、FHに幽閉されていた状況と大差ない。気も滅入るだろう。

 もう1つの理由は、打算だ。彼女の心を解きほぐす事で、より価値の高い情報が得られる可能性がある。

 早速、明日にでも街に向かうと良いだろう。ただし彼女には、お前たちが非番を利用して自発的に声をかけたと思わせておけ。

 これは任務だ。外出中も勤務時間に当てておく。以上、何か質問は?」


 再び、壮一の視線が一同を見回す。


マリー:「質問は特にないの。任務であれば、謹んで事に当たるの」

稀生:「宜しいでしょうか。外出に当たって、プランやルート等の提示はありますか?」

 必要であれば、今日中に色々と情報を集め、計画を練る必要がある。死活問題だ。

壮一:「ルートの選定は、同行者であるお前たちに一任する。基本的に街から出なければ、安全な範囲で何をして遊んでも構わない。

 エイルさん自身に希望を尋ねるのも良いだろう……急ですまないな。若い者の感性は、年寄りには少々難しい」

稀生:「(現状ノープランかぁ)」

「……任務、了解しました」

壮一:「彼女を頼んだぞ。では解散し、務めを果たすように」

マリー:「はっ」

 敬礼で応じ、退出するの。

稀生:「は。失礼します」

「(まずは何があるかの下調べからだな。しかし街で遊ぶ、か……学園島アカデミアを思い出すな)」

 敬礼して退出しつつ、ノイマンの思考速度で下調べの段取りを整えていく。


 急な任務はいつもの事だ。思いがけずエイルと街へ出る運びとなった稀生とマリーは、各々の準備を整えつつ、エイルに理由を誤魔化しての誘いをかけるのであった。

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