イケメン、ゴブリンになる。

@lnotami

イケメン、ゴブリンになる。

第1話 俺、ゴブリンになる。

 ここはどこだ。


 何も見えない。


 体をを動かしてみる......。何かの抵抗を感じるぞ。


"ここは水の中なのか?"

 

 手を伸ばすと、壁のような何かに手が触れた。硬いような、柔らかいような。

 よくわからない。ここから出るにはどうすればいい。

 ここから出ようと、もがいてみると、なぜか体が移動し始めた。

"なんだ?どこにいく!?"


 すると突然、頭から順に締め付けられるような痛みが発生する。

"痛い!!、痛い!!、誰か助けてくれ!ック。"


 何とか痛みに耐えていると、痛みから解放され、まぶたの上に光を感じた。

"やっと出られた"


 ゆっくり目を開けてみると、目の前に何かがいた。



「グギャッ!!(な、なんなんだ。)」

 

 目の前にはだが薄い緑色で、尖った耳や牙、鋭い目、それにものすごい、ガタイがいい。

 アニメやゲームで見たことがあるゴブリンに似ている気がする。

 

 そして、そのゴブリンらしき男?が、勢いよく俺を抱き上げる。


「我が息子ぉおおおおおお。」


 何を言っているかわからないが、怖い顔で、厳つい体で、叫ばれ、俺は恐怖を感じた。



「グギャ、グギャーーーーー!(離れろ、離れろって言ってるだろ!)」


 俺が怖がっているのがわかったのか、男はどこかに俺を下ろす。


 この場から逃げ出すために、全力で動こうとするが動けない。手を自分の視線の先に向けると


「グギャ?グギャ?(赤子の手?しかも緑?)」


 そして振り返ってみると、俺を愛おしそうにみている、ゴブリンがいた。


 そこで俺はようやく思い出した。


 

ーーー自分はゴブリンに生まれ変わったのだと。




 俺は、生まれ変わる前のことを思い出す。


 俺はイケメンだった。

 大学で遊びすぎたせいで成績はいいわけでなかったため就職した会社は大手の下請けの下請け。

 イケメンなのに彼女もいず、一人暮らしの25歳。

 取柄といえば、モテるために鍛えた体と容姿だけだ。

 まあ、イケメンというだけあって、社内ではモテる。羨ましいだろ?


 それに嫉妬した部長から仕事を押し付けられことも多かったな。

 それをまじめにこなしているうちにさらにモテたから、別に悪いとは思ってない。

 まあ、部長は他の社員に、期待しているからだというが、絶対嫉妬だ、目がそう言ってた。俺にはわかる。


「あぁ、やっと仕事終わったー。相変わらず俺に仕事押し付けすぎなんだよなあ、部長。」


 あの日も、部長からの嫉妬という名の愛の鞭ぎょうむ

を受けて、残業していた。

 そういう時は気分転換するに限ると思って、ナンパされに行ったんだよなぁ。


"しに行った"のではない?!!"されに行った"んだ!


「よし、さっそくいきますかぁ。」


 丸の内で、女の子といい店をさがしてたら、一人の女性が近づいてきた。


「あの、お兄さんお一人ですか?一緒にご飯でも行きませんか?」


 きた!なんか今日は誘われるのがやけに早いなぁ。とその時思った。しかもその女性は、とても美人で、にやけそうになるのを我慢しながら、すました顔で返事をした。今思えば、おそらくにやけてた。


「ぜひ、僕もちょうど食事しようと思っていたんですよ。」


 簡単に話は進み、いい店を知っているというので、鼻の下を伸ばしながら美人さんについていった。

 今思えばこの選択が大きな間違えだっとわかる。


 なかなか店につかず、いつのまにか人通りのない路地についてちょっと不安になった。逆に期待もしていた。


「あの、お店にはまだつかないんですか?」

 

 俺がそう聞くと

 女性は指をさしながら言う。


「あそこの角を曲がったらすぐですよ!!すみません、歩いて疲れちゃいましたよね。隠れ家的なお店なのでお兄さんもきっと気に入りますよ!」


 そう言われ、この後のことを考えていると、角を曲がったところで、また女性は指をさした。


「ここです。」


 その指につられ、視線を動かしていると足下から突然"ガコッ"音がし、驚き足元を見るとマンホールの蓋が開いていた。


「え?」


 気付いたと気にはもう遅く。

 俺はすでに足を踏み出していて、とどまることができずマンホールの中の暗闇に落ちたんだ。とてつもない浮遊感の後、恐怖で目を閉じてしまったが、走馬灯のようなものが見えて生き残る手段を考えていた。まあ結局何も思いつかなかった。きっと間抜けな顔してただろう。

 

 ここで死ぬのかぁ、あの女の人美人だったなぁ。と思っていたが、一向に衝撃が来ない。気になって


ーーー目を開けたら白い世界にいた。


 あれ、生きてる。ここはどこだろうか、俺はマンホールに落ちたはずじゃなかったのか。そうして、あたりを見まわしていると、突然後ろから声をかけられた。


「ハハッ、鼻の下伸ばして歩いてる君が悪いんだよ。」


 慌てて振り返るとさっきの女性がいるから一緒に落ちたのかと思ったけど、なんか変なこと言ってるし、訳が分からなかった。


「あのー、ここがどこかわかりますか?もしかして僕を助けようとして一緒に落ちました?」


「クククク......。(プルプル)」


 女性は肩を震わせている。きっと、怖かったんだろう。無理もない、暗闇に落ちていくのは誰だって怖い。慰めようとして近づくと、


「クククク......。ププ、プハッ! アーーハハハハハッ!面白すぎて我慢できない。」


 女性は笑いが堪えきれなかったのか、大声で笑っていた。そして、姿が少年の姿に変わっていくではないか!!


「お、お前はいったい何者だ!あの女の人をどこにやった!」


 少年は、笑いつかれたのか息を切らせながら、


「...フゥ、...フゥ、僕は神だよ。そしてさっき一緒にいた女性も僕が変身してただけさ!すごいだろ!」


 こいつは神らしい、信じられない、いや、でもこの白い世界といい、変身といい人間じゃないのは確かだよな。後、神ならきっと、さっきまで俺がいた場所に戻してくれるかもしれない。


「信じてくれないの?まあいいけど。それと君はもうさっきいた場所、いや、世界にはもどれないよ。死んだから。」


 こいつ思考も読めるのか、それより、なんだ俺はやっぱり死んだのか。そして、もう戻れないのか。意味が分からん。こいつが変身してた女性とご飯いこうとしてただけで、なぜマンホールに落ちて.....ん?俺ってもしかしてコイツに殺された?マンホールの蓋が何もせず開くなんてこと、そうないよな。


「あ、やっと気づいた?察しが悪いよぉ。」


 やれやれとでもいいたげな表情をしていた。


「どうして俺が殺されなければならない!」


 こいつはニヤニヤしながら言った


「それはねぇ、ただの、やつあたりだよ!あときみが残念なイケメンだったからかな!」


 意味が分からない、八つ当たりのために殺されるなんて納得いかない!いや、イケメンがどうこう言ってたな。もしかして部長と一緒で嫉妬か?


 なんかこいつ、額に青筋が浮かべて、プルプルふるえてるぞ。


「冗談はよしてくれ、嫉妬なんて。そんなわけないじゃん。それに君はちゃんと理由を話したら、殺されたことに納得するの?それに...(やっぱりこいつらは愚かだ、女神はなぜこんな愚かな奴らを"勇者"として送り出すんだ。僕の苦労を考えてくれよ......。)」


 納得は確かにできないけど、しかも後半なんて言ってたんだ?

 死んだ理由くらいちゃんと知りたいよな?普通。俺間違ってるか?

 

 まず、なんでマンホールに落とされて死なねばならん。ほかにあんだろおぉぉぉぉ!!!と今更ながらに死因に憤っていると。


「だって、ほかの死に方だったら転生させなきゃいけないもん。例えば、トラックにひかれそうな人を助けて自分がひかれて死んだり、通り魔から他人を守って死んだり、僕みたいな"神"がうっかりで命を奪ってしまったり、あとは、善行積んだ人が人生を全うしたり、あとは、殺さずに召喚してみたり、まあ、前例がある場合って、それに倣わないといけないんだよね。」


 なんか、たまに漫画やアニメでみるような死因だなぁ。あれ実話だったのか?なんか前例に倣うって裁判みたいな感じだな。てか、それって俺どうなるんだ?この言い方的に、もしかして消滅?八つ当たりで殺されて消滅?


「んー消滅じゃないけど、輪廻の輪に戻ってもらうもちろん記憶は引き継がれないよ。驚いた?いままで、神によって意図的にマンホールに落とされて死んだやついないでしょ。だから、これからは、残念なイケメンはマンホール送りにして、君という前例に倣うのさ。」


 なんだよ、この異常な程の残念なイケメンへの執着は。てか転生させてよ。チート下さい。お願いします。いえ、チートいらないので転生させてください。


「いやだよ!また君みたいな存在にチートなんてあげて転生させたら僕の大切な世界に"また"傷がついてしまうじゃないか!!」


 なんでそんなに、声を荒げるんだ?しかも、"また"ってなんだ?


「もしかして、今までお前の言う残念なイケメンを、チートあげたり、勇者に転生させて、酷い思いでもしたのか?」


 そう言ったら、コイツ驚いたような表情で、


「その通りだよ、でもそれをしたのは僕じゃない、僕と一緒に世界を管理している女神さ。」


 やはり何かあるようだ、このまま終わりたくない。なんとかこいつの話を聞かなければ。


「何があったか詳しく聞かせてくれ、それが八つ当たりの原因なんだろ。」


「生き残るのに必死だね。わかったよ、特別におしえてあげる。......



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