第28話

パーティーが終わった数日後、私たちがノックである程度、大体のショットが打てるようになったときに、黒岩選手が

「じゃあ、ダブルスの練習をしよっか」

と提案してきた。

「そうだね。二人とも一応は打てるようにはなってきたし」

と白木選手も乗った。


そういうことで、私たち二人は体育館にあるビジョンの前に座って、黒岩選手と白木選手の説明を待っている。

「ということで、ダブルスはどういうフォーメーションでやるのかっていうのは一応知ってる?琉愛ちゃん」

「はい、一応」

「それは奏空ちゃんから聞いた?」

「それと動画とかで勉強しました」

「それじゃあ、わかってると思うけど、一応、教えるね」

「「お願いします!」」

「はい、じゃあ、私から説明するから、芽衣、私が言い忘れてたことがあったら、補足お願いね」

「OK!」

「それじゃあ、フォーメーションのことから説明するね」

「「はい!」」

と黒岩選手はビジョンで画面を切り替えながら、説明を続ける。

「フォーメーションは大きく分けて二つあって、トップアンドバックとサイドバイサイドっていうやつね。この二つは使うときが違うの。琉愛ちゃん知ってる?」

「確か、トップアンドバックっていう縦になるやつは攻撃のときで、サイドバイサイドっていう横になるやつが守備のときにやるやつですよね?」

「そう!大体それが正解!少し補足すると、自分やペアの子、今回の場合は奏空ちゃんね。その子がロブやクリアみたいな上にあげちゃったら、サイドバイサイドになって、逆に相手が上げたら、トップアンドバックになるって感じなの」

「なるほど」

「それで、これも補足だけど、自分たちがサイドバイサイドのときに、相手がコートの奥の方からスマッシュを打ちそうってときに、奏空ちゃん、自分たちはどうすればいい?」

「それって、相手の後衛の子はコートの左右どちらから打とうとしているってときですか?」

「うん、そう」

「そのときは相手が打ってる側に二人とも寄ります。なんなら、逆側の人はセンターラインを跨ぐぐらい寄ります」

「うん、満点回答だね」

と奏空は満点回答したらしい…。やっぱりすごい…。

「それで、もう一つ、フォーメーションというよりかはこれは戦略というか、ちょっと微妙なんだけど、琉愛ちゃん、カバーって知ってる?」

「しっ、知らないです」

「まあ、そうだよね。プロの人たちってそんなに転ぶとかしないもんね…」

「お二人もそのカバーって使ってらっしゃいました?」

私も一応、目の前のお二人の選手のプレーも見てるので、その中にあるかもしれないと思い、聞いてみたが…とか思ってると、白木選手が

「一応、時折やってるときはあるけど、本当に練習とかでしかしないし、そんなカバーをしなきゃいけない状況に追い込まれないようにはしてるから…」

と答えた。なるほど。やっぱりプロの選手は違うなとは思いつつ、カバーについての黒岩選手の説明を聞く。

「カバーってね、ペアの子が転んだ!とかフォーメーションのところに戻れてない!とかいうときにやるやつで、そのペアの子が守れるであろうコートの1/4以外のコートの3/4をカバーして、なおかつ、そのペアの子がフォーメーションに戻れるように相手の余裕がありそうな子にロブやクリアで奥まで打ち上げるっていうやつなの」

「いわゆる、追い込まれた場合の最終手段ってな感じのやつ」

「なるほど」

「OK?」

「一応わかりました」

「うん、琉愛ちゃんは頭よさそうだから、大丈夫そう」

「なんかそれ、私は馬鹿だって間接的に罵ってません?」

「そんなことない。そんなことない」

「それじゃあ、麻衣、戦術についてお願い!」

「ええ、今からその戦術ってのを教えるわね」

と、また、ビジョンの画面が切り替わる。

「バドミントンのダブルスは通常どういうショットが一番大事になると思う?琉愛ちゃん」

「やっぱり、相手が決めてこようと思って打ってくるスマッシュを返すレシーブですか?」

「うん、それもかなり大事。前衛に取られないために高くそして遠く飛ばすのも大事。でも違うの。奏空ちゃんわかる?」

「…ドライブですか?」

「そう、ドライブが一番バドミントンのダブルスでは結構重要なの」

「ドライブが…ですか?」

「ドライブってね、一見簡単そうに見えて、案外難しいでしょ?」

「まあ、そうですね」

「でも、ドライブで相手を押していけたら、相手はどうなる?」

「押されますね。それで上げざるを得ない。ということは…」

「琉愛ちゃん、わかった?」

「上げざるを得ないということは、私たちが攻撃することができるっていうことですか…?」

「そう!琉愛ちゃん、やっぱり頭いい!」

「やっぱり、私のことを貶してません?」

と、芽衣さんに頭をわしゃわしゃされながら、奏空の悲痛な叫びが耳に残った。

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