第2話

俺は杉平奏空、高校二年生だ。学力も運動神経も中の中。どんなテストでも平均点しかとったことがない。小学校のテストとかは別であるが。身長も170cmと高校二年生の平均。すべてが平均。告白されたこともしたこともないし、面白みのない人生だが、自分にはこれぐらいがあっていると思っている。

「でな、この後が面白いんだよ。」

こいつは須貝鷹、俺の悪友でありながら親友だ。彼は高身長かつイケメン、学力は常に二位、運動神経までもいい。神様って与える奴には与えまくるんだな。そう思ってしまうような人間である。そのため、ものすごくモテ、彼女は常にいる状態であるが、絶対に長続きしない。まあ、俺にはこいつが彼女と長続きしない理由がわかる。

「それから、この子可愛くない?」

と見せてきたのは最近話題の異世界転生アニメのヒロインの画像だ。これだ。そう、彼は何を隠そう、生粋のオタクなのである。彼は中学校からずっと一緒だが、こいつと仲良くなったきっかけは俺が教室で読んでいたライトノベルである。彼とは出席番号が前後のため、話すことが多く、ライトノベルを読んでいるときも話しかけてきた。そのため、彼がオタクになるのには時間はかからなかった。

「おい、聞いてる?」

「あ、わりぃ、聞いてなかった。なに?」

「はあ、聞いとけよ、って、あ」

「ん、どうした?」

「お前はいいよな。あんな幼馴染がいてよ」

「は?」

「あの女子グループの中、見てみろよ」

「ん?あぁ、琉愛か」

多くの女子に囲まれて、まさにクラスの女子の中心的存在である彼女こそが俺の幼馴染、青井琉愛。彼女とは小さい頃から隣の家の子として仲良くしていた。また、初恋の相手でもある。須貝と同様、高スペック。学年では常に一位。生徒会長も務め、スタイルも抜群。身長は165cmと女性としては高い。街を歩けば、誰しもが振り返るほどの美人で、綺麗にケアされている黒髪はどんな人間でも魅了される。そのため、告白した男の人数は数知れず。しかし、全員切り捨てたという噂でも最近までは有名だった。しかし、最近、彼氏ができたという噂が飛び交っている。付き合っているのは一個上の先輩で、その方も全てのスペックが学年トップな八生雄平とらしい。美男美女おまけに学年トップ同士、お似合いだ。俺の恋など実るはずがなかったのだ。

「お前ってさ、青井さんと話したことないみたいだけど、仲は悪いのか?」

「うーん、わかんないんだよな」

「わかんないってどういうことだよ」

「いや、琉愛とは小学校卒業まではずっと登下校同じだったんだけど、中学校から突然冷たくなってな」

「お前がなにかしでかしたんじゃねぇの?」

「いや、その間は二人とも忙しかったから、なにもしたことないんだよな」

「それは謎だなぁ」

「なに、お前は彼女がいるんだからいいだろ?」

「お前も青井さんに告ってみたらどうだ?」

「はっ?何言ってんだ、お前、あいつは彼氏がいるって噂がもうあるだろ。」

「お前、好きなんだろ? 青井さんのこと」

「はっ、馬鹿言え」

こいつって若干勘がいいから嫌なんだよ……。

『おい、みんな席に着け。ホームルーム始めるぞ!』

担任の先生が朝のHRを開始させるために生徒たちを座らせるように言った。

「はいはい、わかりましたよ」

須貝は自席に着きに行った。

また、琉愛のグループも先生の言葉を聞き、解散していった。

一瞬、琉愛はこちらを向いたが、目が合った瞬間、逃げるようにして、目線を教師の方へ向けた。

なんだよ、なんか俺やっぱりしたのかな。とか思うのも野暮だから、考えるのをやめ、教師の話に耳を傾けた。




「あっ」

「ん?」

そこを見ると琉愛がいた。

今日は日直であったため、ものすごく遅くなってしまった。そのためか、生徒会長の仕事を終えた琉愛と同じ時間になってしまったらしい。

琉愛は教室で自分に忘れ物を確認しているらしいが、ちらちらとこちらを見ている。

「なんだよ、なにか用があるのかよ?」

琉愛は動揺しながらも

「・・・何もないわよ」

と不機嫌に言った。

この際、口をきいてくれたから、気になったことを単刀直入に聞いてみようと思い、

「お前さぁ、なんで、急によそよそしくなったんだ?」

と聞いてみた。

またも、彼女はさっきよりも動揺しながら、

言いかけたとき、

教室が光に包まれ、視界は真っ白に、彼女の声は聞こえなくなった。

そして、冒頭に戻るのである。

「とりあえず、ブレザーのボタンを閉めて! 奏空!」

琉愛は顔を赤く染めながら、そういった。

「あっ、はい」

たしかにこんなの痴女だよな。

「それで、よろしいでしょうか、勇者様、聖女様」

さっきも話しかけたおっさんがまた話しかけてきた。

今度こそはと、俺は行こうとしたが、また、琉愛は俺を止め、こう言った。

「あなたたちは何者なんですか?」

すると、椅子に座っていたおっさんのとなりのおっさんが次のように述べた。

「この世界はあなたたちの住んでいた世界とは異なるつまり異世界ということになります。」

「それで、なんで私と奏空はどうして呼ばれたんですか」

琉愛は威圧的に言った。

その威圧的な態度に臆することなくそのおっさんは言った。

「実はこの世界に魔王が降臨しそうで、各国と話し合った結果、各国が一人ずつ勇者様と聖女様を召喚することを同意したのだ」

「この世界の住人では対処できなかったんですか?」

更に、琉愛は言及した。

すると、そのおっさんはいかにもみたいな本を掲げ

「それが、この本によると、この世界の住民では対処しきれなかったと書いていた。それを参考にした」

と答えたのだ。

それには琉愛も納得のようで

「なるほど」

と返事をした。

それは俺も納得した。

でも、俺には腑に落ちない点が一つだけある。

「あの、なんで俺は女の子になってるんですか?」

これがたった一つの疑問点で、一番の問題点だと思うのに、なんで琉愛は聞かなったのかと思うほどだった。

すると、おっさんたちは何言ってるのこの子と言いたげな目でこちらを見つめ、あるおっさんが

「はっ? 何をおっしゃられているのですか、聖女(・・)様(・)。」

といった。

「いや、元々俺、男なんだけど?」

流石にここは引き下がれない。自分だって男だったわけだ。それで、この状況に満足などできない。

「え?」

唐突に琉愛が声を上げた。どうしたのだろうとの顔を覗き込んでみると、急に彼女に肩をつかまれた。

「ちょっと、痛いよ、琉愛」

「今のちゃんと聞いてた?奏空」

「ん? どの話?」

「さっきのあの人の話!」

と指さしたのは先ほど応答してくれたおっさんを指さした。

「うん、聞いてたけど、どうした?」

「あなた、聖女なのよ!」

「は?」

「だから、あなた聖女なのよ!」

聖女ってあの大体ヒールをかけるなんか教会の代表で勇者パーティとかにいる役職のことだよな…。




はああぁぁぁぁぁぁぁぁ?

ちょ、ちょっと待てよ。俺が聖女?

「ちょっと、今俺のこと聖女と呼びました?」

すると、さっきのおっさんが

「ええ、そうお呼びしましたが」

とにこやかな笑顔でそう言われた。

おいおいおいおい、普通俺のほうが勇者じゃないの。こういうのって。は? てことは琉愛が勇者ってこと?

「聖女様は神にお仕えされるお方ですが、勇者様がいらっしゃると勇者様のほうが神より優先度が高くなりますゆえ、勇者様が望んだ通りのお姿に変更することができます」

なんだ、そりゃ。姿変えられるとかどういう魔法が使えるんだよ。てか

「それだったら、琉愛に変えてもらえば、万事解決なのか?」

ということじゃなきゃ話が合わない。

「しかし、聖女様、もしあなた様が元々男性で、男性に戻りたいとおっしゃられても、無理でございます」

と俺の思考を読んでいるかのように俺の案は却下された。

「どうしてですか、男性に戻れないとはどういうことなんですか」

「ええ、聖女様は女性でなければいけないと決まっておりまして、男の姿にはどんなに勇者様が願っても無理なんでございます」

「えぇ…」

それじゃあ、一生女子ってこと?

嘘でしょ?

まだあれやこれをやってないのに。




いや、でもまだ道はあるはず。

「それだったら、魔王を倒したら、元の世界に戻ることはできるんですか?」

これが可能だったら、また男杉平奏空として生きていける。

「一応可能ではございますが、一度性別が変更された場合は二十歳になるまで変更は不可なのでございます」

二十?

長いよ。女でいる期間長いよ。

どうしよう。

まあ、でも戻れることには戻れるのか。ならまだ良しとしよう。

「それで、魔王はいつ降臨するのですか?」

「一応一年後と言われておりますが、正確にはわからなくて」

と戻れるのは1年よりも遅くなるのか。どうs

「なるほど、わかりました、引き受けましょう、その仕事」

早っ!琉愛決めるの早すぎ!

「ちょ、ちょっと待って、琉愛」

「どうしたの? だって、この人たちのピンチなんだよ? 助けるのが普通でしょ?」

「それはそうだけど…」

その勢いのまま、琉愛は取り組むと決めて、装備も諸々、この世界のことやダンジョンのことなど真剣に目の前の大人たちの話を聞きながら、頭に入れていた。

まさに何か焦っているようであるが、どこかしら楽しみにしてそうにしていそうな顔、俺にはそう見えた。

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