第4話

「暗号?」


「そうだとも。僕はこの数字の配列を見て、まず初めに使われている数字が1から6までしかないことに気がついた。そこで思い出したのが『二銭銅貨』というヒント。あの話の中では、暗号の解として点字が使われていたね。そう、点字は6個の点の組み合わせで出来ている。まさしく、これだと思ったよ」


 私は納得したように「なるほど」と口に出す。杉村先輩が点字について調べていたのは、暗号を解くためだったのだ。

 杉村先輩は満足そうに笑うと、さらに言葉を続ける。


「君も知っているかもしれないが、点字は2列3行に点を並べる。そして、点を置く位置にはそれぞれ番号が付けられている。左上から下に1,2,3、右にいって4,5,6という具合にね」


 先輩はそう言うと、ポケットから1枚のメモ用紙をとり出した。


「これが、暗号を点字に直して、そこから日本語に訳したしたもの。『地下室 壁』って書いてあるんだ。つまり――」


「つまり、杉村先輩は神矢家の地下室の壁の中に鍵があると言いたいんですね?」


 言葉を遮った私に杉村先輩は一瞬不機嫌そうな顔をするが、すぐに先ほどまでの上機嫌な顔に戻る。


「その通り。君は僕より先にポストカードの存在を知っていたというのに、真実にたどり着けなかった。やはり、僕の方が優秀っていうことがこれで証明された」


 得意げな顔で言う杉村先輩に、私は口を閉ざした。杉村先輩は私が悔しさから言葉を失ったと思ったのか、一層口角を上げた。

 私はその顔を見て、思わず吹き出してしまう。


 ――笑うつもりはなかった。しかし、あまりにも得意気に語る杉村先輩が滑稽すぎて、私は笑いが止まらなくなった。せっかく笑いを堪えるために口を閉ざしていたのに、これでは本末転倒である。




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