第3話



 ――勇者ダミアンパーティでは……



「ようやく、ボクたちのパーティーから無能が消えたね」


 ダミアンは、パーティメンバーたちに明るく告げた。


 <勇者>の称号を手に入れ、大手ギルド<レッド・ジェネラル>のギルドマスターの椅子も手に入れた。


 そして、無能のくせに、やたらと前ギルドマスターに好かれ、パーティでも指図をしてくるハケン冒険者も追い出した。

 この世の全てを手に入れた気分だった。


「本当に清々したわね。あの無能ハケンが消えて」


 ダミアンの肩に頭を寄せながら、<盗賊>オリビアがそう言った。


「ああ、本当にな。俺らのおこぼれに預かってるだけの無能のくせに、やれ予算が足りない、やれポーションを無駄遣いするなと色々口出ししてきてウザかったんだ」


 <槍使い>ゴイルが同意する。


「しかし、これで本当にSランクパーティの名にふさわしい、実力者だけが残ったな。素晴らしい」


 <魔法使い>デイジーが満足げに言った。


 四人はレイの追放に満場一致で賛成だった。


「ところで、新しい雑用係(バック)はどうするの?」


 オリビアが聞くと、ダミアンは「バックなんて誰でもいいさ」と笑った。そして続ける。


「とりあえず、しばらくはボクたちだけで行こう。なに、雑用係なんて必要ないさ。レイがしていたことと言えば、|ちょっとした(・・・・・・)強化魔法をかけることに、荷物と戦利品の管理くらいなものだろう。全然必要ないさ。むしろ、余計な小言を言われないだけ楽になるさ」


「それもそうね。じゃぁ、早速ダンジョンに行きましょう」


 そうして四人は、意気揚々と<クエスト紹介所>へと向かった。


 いつも通り、受付のお姉さんにダンジョン攻略のクエストがないかを尋ねる。

 だが、仕事の紹介の前に、お姉さんの口から出てきたのは、とんでもなく低く冷たい声だった。


「レイさんを追い出したそうですね」


「ん? それがどうした。ハケン冒険者を一人切るくらいなんでもないだろう」


 ダミアンが笑って答える。


 するとお姉さんはダミアンの軽い言葉に、重たい口調で言い放つ。


「それでは皆さんのパーティはAランクへ降格です」


「……なんだと?」


 ダミアンは突然のことに驚く。


「Aランク? ボクたちが? なんの冗談だ?」


 あくまで冗談だと受け取ったダミアンだが、お姉さんの表情は緩まない。

  

「おそらくAランクの力もないと思いますが、一応、いきなり二段階ダウンは大きすぎると思うので」


「おい、本気か? ボクは<勇者>だぞ? しかもボクたちは大手ギルド<レッド・ジェネラル>のエースパーティだぞ? それがAランク?」


 ダミアンは顔を真っ赤にして言いよる。

 だが、お姉さんは気丈に言い返す。


「もともとSランクとして認められたのも、ほぼ全てレイさんの活躍あってのことですからね」


「……あの無能ハケン野郎のおかげ? 冗談はよせ」


 ダミアンが噛み付く。

 だが、お姉さんはきっぱり言切る。


「上の人に厳命されています。Sランクへ戻りたければ、Aランクのクエストをこなしてください。力が十分にあると証明できれば、すぐにSランクに戻します」


 そう言われては、さすがのダミアンも黙るしかない。


 彼らはあくまでクエスト紹介所に仕事をもらう立場だ。

 基本的には拒否権はない。


「……チッ。なんだよ。わかったよ。Aランククエストなんて楽勝だぜ。すぐにこなしてやんよ」

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