第5話

驚きのあまり、大声を上げてしまった。

しかし佐伯先生はこの反応を予測していたのか動じることは無かった。


取り乱してしまったが、深呼吸をして質問した。


「どうして僕が有栖川さんと付き合わないといけないのですか?」


「彼女の一年生の時の事は知っているかしら。」佐伯先生が聞いてきた。


「はい。友人から少しだけなら耳にしましたが、それが何か関係あるんですか?」


「きっとあなたもさっき見たでしょう。

彼女が他の生徒と関わる気が無いことを。

彼女の父親はここの市長なのはご存知でしょう。彼女はその父親の一人娘でそのプレッシャーも一人で背負っているの。

それが逆に彼女を追い詰めて入試の時に熱を出して試験を受ける事ができずこの学校に入学してきた。

それに対して彼女の父親は有栖川家の看板に泥を塗った、恥晒しだと彼女に言い放った。」



ここまでは蒼に聞いた話と一緒だ。

ここからさらに何かあるのだろうと、息を呑んで続きを聞いた。


「しかし私が言うのもあれですが、

この学校もそれなりに偏差値が高い高校です。なので彼女の父親はここで卒業するまで

成績において2位以下と圧倒的差をつけて1位を取り続ける事を約束させた。」


「ですが、だからと言って他の人と関わらないと言うのは違うでしょう?」

僕は答えた。


「ええ、そうね。あなたの言う通り。

彼女がこの学校で誰とも関わらないのは、これもまた、お父さんの影響なの。」


彼女にとって父親はかなりの影響力を持った人なのだろうか。


「お父さんが周りの人と関わるな。と言っているのですか?」


「いいえ、違うの。

彼女のお父さんはむしろ色んな人との関わりがあるの、彼女のお父さんは周りの人のお膳立てでここまで上がってきた人なの。

それをまるで自分の手柄のようにふんぞり返っているのに彼女は強い反抗心を抱いた。

私は誰の力も借りずに這い上がってやると。」


なるほどな。だけど、

「それと僕が彼女の…その、恋人になるのには何か関係あるんですか?」


「大アリよ。」


「失礼ですが、なぜ佐伯先生はそんなに有栖川さんの事情を知っておられるのですか?」


「私は彼女の従兄弟よ。唯一私にだけ心を開いてくれているの。」


「そうなんですね。ではどうして僕が彼女と付き合わないといけないのですか?」


「彼女、有栖川瑞穂のタイプがあなただからよ。」


「え、ええええええ!」

また僕は叫んでしまった。

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