記憶のパズル ~ パズルの破片(かけら)を探しに ~

ハル

第1話 出逢い

「奈月(なづき)ーっ!お待ちなさいっ!」


逃げる私の後を追う母親。



タッタッタッ…




ボーーーッ


船の汽笛が響き渡る。




「そんな格好で、はしたないでしょう!?」


「そんな事、知った事じゃないわよっ!第一、私はまだ16なんだよ!お食事会含め結納をするつもりでしょう!?」



私は足を止める。



「まだではなく、もう16です!世間では結婚が許される年齢なのですよ!あなたに大変相応しいお方です!」


「それは両家の意見と相手のお気持ちでしょう?私には一切気持ちなんてないっ!」


「まあっ!奈月っ!結城(ゆうき)家のお嬢様であり、その口の訊き方、話し方を直しなさいと申し上げていたでしょう?」


「お嬢様が何?私は私!二人の人生など全何もかも私の人生に擦り付けないで!」



スタッ

走り去る私。



クルージング豪華客船の招待客として、この船に乗っているが裏で何かして招待客として招かれた。



私は、お金持ちのお嬢様であり、そして、相手もお金持ちの、お坊っちゃまなのだ。


どうやら相手側が私の事を大変お気に召されたようで親達が仕組んだお食事会というのが目に見えている。



申し遅れました。


私の名前は

結城 奈月(ゆうき なづき)。

16歳のお嬢様。


そして私のお相手である男の人。

今伊 広司(いまい こうじ)さん。


18歳の御曹司の方を含む、結城家と今伊家の食事会でもあり結納を含まれているクルージングの豪華客船旅行中だ。


私は決行したくない為、とにかく逃走中だ。



好きでもない相手と結婚なんて有り得ない。


今の私には自分の人生を親達にメチャクチャにされている気がしてならないし、考えたくもないのが本音だ。


急ぐ理由が分からないのだ。




「奈月っ!お待ちなさいっ!」





「おいっ!待つんだ!」




反対側から追ってくる人影。




――――次の瞬間 ――――




ドンッ


ぶつかる私達。




「きゃあっ!」



ドサッ

私は勢いで倒れてしまった。




「大丈夫か?」



ドキン

何故か私の胸が大きく跳ねた。



そんな中、私を立ち上がらせる。



「おいっ!待つんだ!」



ビクッ

驚く私。



「すまない」



そう言うと背後に追って来ていた人影を気にし走り去る男の人。


私は近くにある物で二人目掛け物を棒振り回すと見事に命中し二人は倒れた。



「この女っ!」



遅いかかる二人。





「きゃあっ!」




パスッ……




パスッ……



私の耳に小さな音がかすめ、二人は倒れた。




ビクッ

驚く私。



「きゃあっ!な、何…を…したの……?殺したの?」


「麻酔銃だ!」

「ま、麻酔銃!?えっ!?」

「そのうち目が覚めるから安心しろ!お前も早く逃げろ。同犯者と思われる。その格好、どう見ても普通の一般人じゃないだろ?お嬢様なのか?」


「えっ?あっ……まあ……」

「だったら尚更だ。逃げろ!」




そう言うと私が今逃げ出してきた方に背中を方向転換された。



すると、前方から私の両親の姿。



「奈月、そんな所にいたのですか?さあ戻りますよ。あちらの方がお待ちかね…」




スタッ

私は逃げた。



「あっ!奈月!お待ちなさいっ!」

「奈月っ!待つんだっ!」



後を追う両親。



「あの女……何を……」



私は逃げる場所を探すが見当たらない。




「………………」



「おいっ!」



ビクッ

隣のデッキから声がし驚く。



「こっちだ!」



私は隣のデッキに移る事にした。



「そのヒールをまず脱ぐんだ!」



私は言われるまま行動を移す。



「ゆっくり来い!焦るな!」



私は隣のデッキに移り、その直後、両親が顔を出した。


ギリギリの所で、すぐある部屋に引摺り込ませるように私を匿った。




「ここは行き止まりだぞ!娘は隣のデッキに移動したのか?全く何て娘だ!」


「あの……すみません……ありがとうございます」




ドキッ

間近にある顔に胸が大きく跳ねた。



「お前は、何を逃げているんだ?逃げている理由は何だ?」

「……あなただったんですね……」



そこには、さっき私とぶつかった男の人がいた。



「……親達が決めた食事会と……多分……結納……」


「結納!?この船でか!?だったら尚更戻った方が……」


「嫌っ!」



私は男の人の言葉を遮るように言った。



「相手の心に私がいても、私の心には相手がいないの!」


「だったら正直に話せば良いだろう?」


「そんなチャンス……私の入る隙なんてないよっ!私の気持ちなんて聞こうとしない……勝手に進行されていくだけなんだから!」



「………………」



「……ごめん……初対面のあなたに言っても仕方がないよね……」




私は去り始める。





カチッ

煙草に火をつける男の人。



私は振り返る。



ドキン

滅多に見る事のなく見慣れない光景に私の胸が小さくノックした。



「だったらメチャクチャにしてやろうか?」

「えっ?」

「あんたがそこまで言うなら」



「………………」



「ただしチャンスは一回だ!二回も三回もない!あんたの努力……」




ガシッ

両腕を掴む。



「急に掴むな!火傷するだろ!?」

「メチャクチャにして!」

「えっ!?」

「そんなの一回でやってみせるわよ!こんなお食事会なんて冗談じゃないんだからっ!」


「……お前……本気なのか?」

「本気だよ!」



「………………」



「何よ?」

「お前……本当に…お嬢様なのか?」

「お嬢様ですっ!」



「………………」



「それでやってくれるの?まさか口先だけ!?」



「………………」



「ちょっと!どう……」




グイッと引き寄せキスをされた。



ドキーン

突然の出来事に胸が大きく跳ね上がった。



「ちょ、ちょっと……ファーストキス……」

「契約キスだ!健闘を祈る!奈月お嬢様」



去って行き始める男の人。



「とにかく戻れ!」



私は戻る事にした。


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