集団転移してクラスメイト全員SSS級ランクのスキルと使い魔ゲット!オレだけゴミステータスでなんか追放されたけど特に問題はない〜全部実力でねじ伏せるので〜

上本利猿

プロローグ

(今日は……何曜日だ?)


つまらなく、かつ繰り返される日常生活は、遂に彼の曜日感覚を完全に破壊してしまったようだ。


名前はトウコウイチ。このごく普通の公立高校である善海高校の二年生である。


因みに今日は金曜日であり、大抵の人間が休日への希望を抱く日なのだが、


曜日感覚が狂い、何曜日かもどうでもよくなった武藤は例外だったのだ。


(マジで今日何曜日だ……? なんか滅茶苦茶前が月曜日だったからな、多分今日はアレだな、土曜日だろ)


土曜日なら自分が学校に来ている事にまず疑問を持った方がいいだろう。


曜日の問題を一応解決(?)した彼は、窓際の席からその景色を眺める。


臨海工業地区にあるこの善海高校は、教室から青い海が広がる美しい景色を見渡すことができる。


だが今年はその景色に異変が生じていた。


があった物流倉庫は解体工事が難航し、痛々しい姿を未だ保ち続けているのだ。


だが武藤にとって美しくも退屈だった景色は、この倉庫の廃墟とのコントラストによって

魅力あるパノラマに生まれ変わったのだ。


そんな歪な景色を眺めている彼に、一人の男が話しかけてきた。


「よう武藤……! 今回もお前に一位は取らせねぇからな!」


その名もがんだい。容姿端麗かつ文武両道である、クラスのリーダー的存在だ。


そのままリーダーとして勝手に過ごしてくれればいいものを、


なぜか武藤に対抗意識を燃やして攻撃的な姿勢で接してくる。


こっちはただのなのに、烏丸は武藤が自分を脅かすものだと思っているのだ。


武藤がクラスで浮いた存在なのは、その奇特な性格もあるのだが、烏丸が勝手に敵意を向けるせいでなんとなく孤立させられているというのもあるのだ。


「はあ……そうですか」


下手に刺激するのもまずいので烏丸には一応の返事をする。


「そうですかだと……! てめーな!そうですかは無いだろ!」


「返事しただけっすよ」 「何だと!?」


「ちょっと辞めてよ! 煩くて勉強に集中できないでしょッ!」


高い声が教室に響く。お決まりのパターンだ。


その高い声の主は杉沢百合。クラスのアイドルであり、かつ烏丸と同じくクラスをまとめる存在だ。


綺麗にセットされたストレートの黒髪、モデル顔負けの美貌とスタイルを持つ彼女は、


その姿から”女神“と呼ばれている。


「また杉沢さんか、こっちの問題だからさ、大丈夫だよ」


「私が大丈夫じゃないのッ!」「いだっ!?」


烏丸の顔面に、ビンタが黄金長方形の軌跡を描き直撃した。


こうやって武藤と烏丸が言い争い(?)、杉沢が仲裁に入るという様式美が、すでに数え切れぬほど繰り返されていた。


因みに杉沢が異性とこうして絡んでいるのは烏丸だけなので、一部の男子からはかなり妬まれているが、当の本人は気づいていない。


何百回目かの無意味なやり取りを終えた直後、チャイムが校内に響き渡る。


今日も始まった。中間テスト二日目だ。


いつもの様にから答案用紙と問題用紙を受け取り、さあテストを受けるぞ、と思ったその瞬間だった。


教室の床が歪んだかと思えば、カメラのフラッシュを何万倍も強めた様な光が、


瞬間的に教室を包んだ。


その余りの閃光に咄嗟に目元を手で覆ったが、その手の中に光が通過するほどだったのだ。


そしてその光はと凄まじい速度で点滅を始め、その点滅に当てられた武藤たちはたちまちに意識が遠くなる。


(だ、れだ……?)


その濁った景色の中で、は男の幻影をみた。






そしてそれが、この世界での最後の記憶だった。

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