第3話

そろそろ入学式が始まるということで、俺は学校の体育館にいた。

 

 椅子に座る順番は名前の順だが、両隣の奴らは俺に話しかけてくるどころか、見向きもしない。俺がいくら陰キャのオーラを身にまとってるからって、空気のように扱わないでくれよ·····入学式なんだし、最初の方ぐらいは構ってくれてもいいじゃねえか·····


 友達のいない俺は、ただただ入学式の時間が来るのをボーッと待つのもなんだと思ったから、学校の可愛い女の子探しでも始めることにした。

 いくら友達がいなくてガチ陰キャでも、可愛い女の子というのは観賞用として見つけておきたいところ·····間違ったって俺の手には入らないしな。

 

 俺は周りをキョロキョロ見渡す。すると、すぐに一際目を引く華やかで凛とした女子を見つけた。彼女は、金髪ロングでスタイル抜群。他の女子と比べても圧倒的に可愛いだろう。そして何より、こんなにたくさんの生徒がいても目に留まるぐらいのオーラと美貌を兼ね備えていた。

 

 俺が彼女に目を奪われていると、前の席に座ってる女子達が、俺の視線の先にいる彼女について噂しているようだった。

 

 「ねえねえ、あの子って超人気アイドルグループリューゲのセンターの子じゃない?」

 

 「うわ、ほんとだ!超美人〜。鼻高いし目も大きい!」

 

 アイドルグループのリューゲ·····?ど陰キャの俺でも名前を知ってるぐらいだから、めちゃくちゃ有名人なんだろうな。

 そりゃあ、あんなに可愛い訳だ。

 

 俺がそんなことを考えているうちに、入学式が始まろうとしていた。

 

 どうせ始まってからは、暇なんだ。どうせだから暇つぶしにでも国民的アイドルの前世でも覗いて見ますかね〜。

 俺は超人気アイドルの彼女に焦点を合わせた。横顔をまじまじと見ても、本当に美人だ。

 

 そうしていつものように頭にイメージが浮かんでくる。

 そこはとても大きいお城のような場所だった。パーティーでもやっているのだろうか?そこで王子様らしき人と手を取り、踊る彼女はとても幸せそうな顔をしている。

 しかし時計が12時に近くなると、彼女は急用を思い出したのか急いで走り出し、ガラスの靴が階段の上で脱げてしまう。

 階段の上に取り残されたガラスの靴は、キラキラと光っていた。

 

 俺はハッと我に返る。

 

 この話はシンデレラだ·····間違いない。

 

 かぐや姫、赤ずきん、シンデレラ·····

 俺はなぜか胸がザワザワした。

 なんでだ?この3つの物語に、特に思い入れがあるわけじゃない。でも、何かを忘れている気がする·····

 

 すると先生の放送が俺の耳に入ってきた。

 

 「続いては、新入生挨拶」

 

 俺は体育館のステージを見つめる。

 そこには、今朝一緒に登校したかぐや姫の彼女がいた。

 

 俺の頭がガンと痛くなる。

 

 次の視線の先にいたのはふわふわツインテールをなびかせた、巨乳のロリっ子。赤ずきんの彼女。

 

 俺の頭が再び痛くなる。

 

 今度視界に見えたのは、国民的アイドルの俺の手には一生届きそうにないシンデレラの彼女。

 

 そして最後に俺の頭の中に、いつの日かの記憶が蘇る。

 

 俺の記憶の中で、1人の女の子が泣きながら語りかけている。

 

 「来世でまた会おうね」

 

 その瞬間、今までに感じたことの無い頭痛を感じ、俺は椅子から崩れ落ち、倒れてしまった。

 

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