異界「ダンジョン」攻略物語

ポメラニアン

プロローグ

 一昔前の自分に話してみたらどんな反応をするだろう。


 武器を手に冒険へ出て翼竜やら大きな獣、魔獣を倒す。


 そして獲物を解体して使えそうなものを持ち帰って売って小銭を稼ぐ職業に着いた。なんて……


 ファンタジーやロールプレイングゲームさながらにパーティを組んでダンジョンを攻略しに行っているというのもどうだろうか。


 多分「そんなのありえない」って言うと思う。


 生来のボッチ気質な自分は先ずパーティを組むことができるだろうか。って突っ込むだろう。


 そんな自虐はさておき、そもそも魔獣とか翼竜なんているはずがない。


 そのはずだ……


 そうして「遊んでばかりいないで仕事や勉強を頑張ろう」なんて現実を見ているふりをするんだと思う。


 何かの才能、器用さや賢さ、卓越した運動能力に優れたり演算能力があったりとか。


 そんなどこかしら秀でて煌びやかなものなんて持っていない凡人な自分は、ただひたすらにこの平穏な現実を平和に生き抜いていくだけだった。


 それはそれで楽しかった。


 何をしても中途半端でどっちつかずで……忍耐力だけはあったから一人でも頑張れた。


 それに家族もいた。


 今は違う。


 後戻りのできない現実は、残酷で冷徹な日常が続いていて精神をすり減らす毎日を送らざる負えないような世の中になっている。


 でも、そこまでひどくはないかもしれない。


 ただ、『そんなのありえない』と言っていた非現実的な日常を過ごしているのだと思えば少しは前向きになれるかもしれないだろう。


 そんな夢と希望、絶望の入り混じる現実を生き抜いて日々の生活費を稼ぐ。


 主人公になりきれない人間の日常系ダンジョン攻略物語が始まる。

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