4章 チート幹部vsバトメタル

1

 アクスーキングから出て半日ほどかけてゆっくりと森を突き進み、例の朽ち果てた古城にたどり着いた俺たち。

 見た目は一言で例えると、お化け屋敷? みたいな……。

 まぁなんにせよ、光を毛嫌いしているヴァンパイアには相応しい拠点って言ったところか。

 足場が悪い険しい道を越え疲れていたため、明日の昼まで休む事に。

 その間も俺は、イセセミ対決で使用する予定だった鳥型ドローンを用いて、城外の様子や内部を赤外線スキャンなどを使い、建物の構造を調べたりしている。

 わかったことがあるとすれば、あのヴァンパイアがいる玉座の間の他に、広い部屋が三つほど存在する。

 そして玉座の間に辿り着くためにはその部屋を通り過ぎる必要性があるみたいだ。

 うん、わかりやすい。

 絶対ドラキュラの護衛三銃士的な中ボスが一人ずつ配置されてるね。

 恐らく、後戻り無しでこいつらを順々に倒していかないとダメなパターンだろう。

 なんとも王道的というか、セコいヴァンパイアというか。

 だがラッキーなことも発見できた。

 それは、あの古城は相当古く、城の支えとなっている五本の柱を“一斉に全て破壊”すればあっさり崩れ落ちるという点だ。

 だが、この人数では無理だろう。

 なんせタイミングは愚か、魔法では破壊できないようにされてるはず。

 だがあのセコいヴァンパイアのことだ、それくらいの対策くらいはしているだろう。

 それにエクレシアとアリス、俺もスラスター・レイ、チリも爆発系銃火器使えばなんとでもなるが、イリスには攻撃となる手段がクリフ◯のザ◯キと同類技、アンダーショットしか存在しない。

 数も火力もタイミングも問題ありではとても話にならない。


 だが、その数が”人“ではない場合はどうだろうか?



 そして決行の真昼の時。

 俺たちは城の城門前に立っている。


「……ねえ、本当にそんな聞いた事がない作戦で大丈夫なの?」

「ワタクシもお姉様も旅出る前に、モンスターとの戦闘の基礎や、ダンジョン探索の基本を勉強した事がありますけど、ツクル様の言う作戦は誰が聞いても首を傾げる物ですわ」


 朝ごろに俺の作戦を聞いたアリスとイリスは少々不安そうだ。

 確かにこんなRPG世界の住民から聞けば、こんなアホな作戦に対し誰しも首を傾げることだろう。

 だからこそ敵も油断するはずだと俺は踏んでいる。

 普通に挑み運良くあのヴァンパイアまで辿り着く事が出来たとしても、みんな既にヘトヘトだ。

 下手すれば死者も出てるかもしれない。

 そう考えるともし上手くいくのなら、俺の作戦で敵全員皆殺しにした方が楽だし、誰も死なないし丁度いいかなって思ってる。


「だけど、私はやってみる価値はあると思う。確かに馬鹿げている作戦だと思ってるけど、上手くいけば誰も死なずに幹部を倒して恭介を救えるんだから」


 エクレシアは話が早くて助かるよ。


「儂もこれだけでちゃっちゃと終わるんやったらそっちがいいわい。早う戻ってコカイン栽培の続きをしたいし……あ!!」


 ネコマタも真逆の意味で理解が早くて助かるが、戻った後そんな物騒な物は即処分してやる。


「まっ、やるだけやってみるのも悪くないわね。ひょっとしたらツクルの言う中ボス一人か二人くらい倒せるかもしれないし、本当に全員倒せたらそれこそ大バンザイってことよ。だけどヴァンパイアの首はアタシが貰うわよ。幹部殺しの称号を手にしてアタシの列伝の新たな1ページ刻みたいし」

「おい、話聞いてたか? ヴァンパイア含めた全員をこの作戦で倒すって言ってんですけど」

「その場合はワタクシがドラキュラを瀕死状態で蘇生させますわ。それにツクル様の作戦が例え失敗だったとしても、戦力もビタイチも減りはしませんし、お姉様がヴァンパイアを倒すのですから、やってみても問題はないと思いますわ」


 こいつ今なんつった?


「まぁなんでもいいから気楽にやっていこうっす。気楽気楽。それがいいっす」

「「「うんうん」」」

「みんな、幹部戦をなんだと思ってるの?」


 エクレシアのツッコミ、ごもっともです。


 とにかく、エクレシア以外からは期待されていないみたいだが、とりあえずやってみる感じの流れで行くみたい。

 にしてもこの緊張感の無さはなんだろう?

 本当にエクレシアはなんで、中身がダメダメな連中を仲間にしてしまうのかが不思議でしょうがない。


 __って思っていると、パリカールから切り離し、代わりに宇宙船内にあった金属類対応型3Dプリンターで作成した乗用車で、作戦用に購入した馬車を牽引して来たチリ。


「しっかし二人が住んでた国って変わってるわよね。こんな鉄の塊を魔力や魔法石の力使わず動かせちゃうんだから。形はなんか妙だけど」

「アリス、ツクルさんの才は異常にいい意味でパネェっすけど、こんな低レベル種族とアタイを一緒にしないでくださいっす。にしても後部座席や馬車に積んでるちっこいのってなんっすか?」


 それは後にわかるがって言いたいが、チリの奴、アクスーキングを出る頃から今まで旅用の馬車の中にいっぱなしだったが、様子も変だし何かやらかしてないかしら?

 ……やばい、不安になってきた。

 いや、気になったから何か探りを入れて死亡フラグが立つような発言をしてしまうかもしれないし。

 とにかく今は古城の攻略に専念しよう。

 チリが正門前まで馬車を牽引した後、全員顔を見合わせ頷き合う。


 俺は正門の扉を力一杯突き開けた!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る