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「ホンマすんませんでした……」


 俺にボコボコにされた後、正座して誠意を以って謝罪する猫神。

 ちなみにその猫は、全身がとても美しい黄色い毛並みでちょっと短い耳の容姿。

 そして背と頭の毛並みに、王という漢字が刻まれているような茶色い毛が刻み込まれてる。

 一言で言えば、猫って言うより虎に近い印象でもあった。


「儂こう見えても昔、天界の管理下にあるどこぞの世界の神様の一人でしてな、やっぱ女神達の水浴びをいやらしい目で見たのが間違いやったんか、神の称号を剥奪された瞬時に天界から追放されたんや」


 そしてここにいるってことは、流刑的な何かってことかしら?


「んで住処作ったんはええが、儂ん中のムラムラがどうもあれでのぉ。ほら、儂こう見えて年中発情期みたいなもんじゃから、だから冒険者達が攻めてきた時チャンス!! って思ててうぉぉぉい!!」


 俺はすぐさま右掌を猫神に向けエネルギーを溜める。


「スリーツーワーン?」

「いやホンマ反省しとるぅ!! もう力でかわい子ちゃん達になにもせーへんから!! それにできちゃったら儂、一応罪悪感を感じちゃうから出す際にも中じゃなく外にしとるし、とにかく謝るから、その変な魔道具をこっちに向けんといて!!」

「いや、誰もお前の性事情なんて知りたくもない」


俺がガントレットを引っ込めると、猫神は、エクレシアとイリスと一緒に茫然と突っ立っているアリスに視線を向けた。


「……まあ、なんじゃ。せっかくやからなんか詫びとして、そこの嬢ちゃんの使い魔になってもええで」

「え!? アタシ!?」


 聞いて正気を戻したかのように、体がビクンっと跳ね上がり反応するアリス。


「おい猛獣。そっちのまな板JCじゃなくて、あっちで寝そべってるまな板ニートには何してもいいけどさ、詫びとかの口実で潜り込んでいかがわしいことやる気じゃねえだろうな?」

「なっ!? 聞きづてならないっすよツクルさん! 誰がまな板ニートっすか!?」


 ぐうたらしてても地獄耳だけは健在のチリは跳ね起き文句言ってくるが、そんなのは無視するに限る。


「考えとらん、いえ、考えてなんかいまへん。そもそも儂の好みはバストもウエストもヒップもちょうどいい感じの女子のみじゃ。いくら顔が可愛ゆうてもまな板なのだけはふぎゅえ!!」

「ふぎゃぁ!!」


 猫神が喋ってる最中、アリスが俺と猫神の頬を鷲掴みする。


「この状態で魔法ぶっ放されたくなければ答えなさい? まな板の意味を……、ね?」


 無邪気な笑顔を振る舞うアリスだが、笑ってるように見えて笑ってない!!


 ヤバイ、ロリ鬼に殺される!!


「いやなんて言いますかね、人の成長ってのは色々ありますもんね、いずれアリスさんも出るとこ出ますよきっと、まだまだこれからですから成長期は」

「せやせや、だからまな板的な発言に対して謝る。謝るから……」


「「そんなサイコパスのような笑顔で魔法ぶっ放そうとするのはやめて!!」」


 言い終えた瞬時に俺たちは思いっきり地に叩きつけられ顔が埋まった。

 よくやったっと言わんばかりに満足そうな顔のチリが拍手してやがるのがなんか腹立つ。


「それで、あんたを使い魔にすることでアタシになんの得があるわけ?」

「……んん、ぶふぁ!! ああほら、嬢ちゃん魔力足りのうすぎて一、二発撃ったら倒れるんとちゃうか?」


 埋まった顔を地から抜け出し、契約のメリットをアリスに説明する猫神。


「え、まあ、そうだけど」

「やろ? だから嬢ちゃんがそれなりの魔力になるまで儂の魔力を使うても構わんってことや。悪う話じゃないやろ?」


 確かに俺達的にも悪い話ではない。

 正直言って、アリスが魔法撃って倒れなくなるだけでも大助かりだし、何より強力な火力持ちが前線に出れるだけでもこれほどありがたいことはない。

 けどあっさり信用して契約しても大丈夫なのだろうか?

 いくら神様と言えども、こいつは多くの美少女達の穴という穴を汚した羨ま……、チリ同様のゲスの極みと言ってもいい性格と言ってもおかしくはない。


「今アタイとこの糞猫を同類にされたような気がするっすけど気のせいっすか?」


 ……勘の良い宇宙人は嫌いだよ。


 そんな奴は当然問題児そのものでもある。

 ただでさえ問題児が三人プラスそういうのを気にせず仲間にしようとする勇者様がいるっていうのに、これ以上増えたら間違いなく俺過労死して。


「契約に支払うものは何?」


 ……え? アリス?


「この女!! 迷いもせず堂々と言いやがった!!」

「あったりまえでしょ? だって魔法撃っても倒れなくなるだなんて最高のメリットじゃない!! 断る理由なんてどこにあるのよ!?」


 うわぁ……。目先の得だけしか考えてねェェェェ……。


 普通こんな高難易度クエストになるほどの元凶と取引するなんざ、誰しも普通警戒するだろ?

 今回は流石にエクレシア達も止めに入るに決まって。


「流石お姉様ですわ!! 例え契約の相手が神だろうと迷わず前向きなことだけを考えるその思考、見習いたいですわ!!」

「魔法使った後倒れないことはいいことじゃない。スキルを魔法の威力アップに注ぎ込めることが出来るようになって魔王に対しての有効手段の一つになる可能性も出てくるわね」


 ……忘れてた、知力が高い低い関係なく、こいつらの脳みそ、生まれた時から故障してたことを。


「えぇ〜……、まじで飼うんっすかぁ? いや別にいいっすけど、できればアタイらの寝室には潜り込まないようにして欲しいっす。寝てるアタイの美貌に欲情して襲い掛かられるのもアレなんで」


 大丈夫だ。いくら顔だけは良くても、髪といい性格といい、誰もお前をそんな目で見ることはないのは間違いないから。


「4対1で決まりね。ちなみに言っとくけどね猫神、セクハラしたらどうなるかわかってるわよね?」


 猫神に向けて再びサイコパススマイルを送るアリスさん。

 ってかよく見たら背後のエクレシアとイリスも、アリス同類のスマイルを猫神に送ってて怖!!


「もししたら、私この剣でどうしよっかなー?」


 天使のようなエクレシアが堕天使になっちゃった瞬間に見えるのは気のせいか?


「もし皆様、特にお姉様に何かしたら、ワタクシのアンダーショットが火を吹きますわよ?」


 お前さっきまで神に何かしたらバチ当たるぞってビビってなかったっけ?


「いやもう寝る時だけペットショップに預けて毎日賢者モードにさせとけばいいんじゃないっすか?」


 このサイコパスレディズが解き放つ殺伐とした空気の中でそんなアホなことを言ってくるバカ宇宙人が逆にスゲェ……。


「しない!! もうしまへん!! 約束しますから勘弁して!!」


 流石の神様でもこりゃ恐ろしいと思うわ。

 やっぱり人類の中で一番怒らせちゃダメな人は美少女に限るね。


「……、せやけど、なんや、少し言わせてもええか?」


 モジモジしながら何か言いたそうな猫神。


「いや、構わねえけど」

「なんというか……、一応儂も神様やし、契約時には何かお供え物をしてくれんといかんくてのぉ……、せやからそのぉ……」


 猫神は頭を下げて右手を差し出し。


「パンツくださぎゃぁぁぁぁ!!!」


 言い終える前にトリプルヒロインズ達による拷問リンチが始まった。

 その光景をビデオカメラで面白半分で録画しているチリをほっといて、俺は先に宿に戻る。


 なんにせよ、結局また問題児が一匹増えました。

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