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「グズ……先輩……ブググ……エグップ、プププ……ダメ、涙が止まらないしお腹も痛く……」


 俺がいた世界以上にハイテクな科学満載の宇宙船内に動揺する、剣と魔法だけ発展した世界のエクレシア達を差し置き、このロリ宇宙人が笑っているのか泣いているのかどっちかはっきりさせて欲しい気になるのは気のせいか?

 こいつが言う先輩、あの全身タイツのおっさん宇宙人は、操縦席と言える座席で死んでいた。

 泣き崩れているのか笑うのを堪えているのか分からないロリ宇宙人に操作を教わりながら、俺はこの数ヶ月内の船内の出来事や操縦できるかどうかを確認している。

 ちなみに先輩宇宙人が死んだのは、不時着して1日半後らしい。

 あのロリ宇宙人が変な操作を行ったせいでこの世界に宇宙船ごと墜落する直前、俺もロリ宇宙人も、衝撃等の都合で宇宙船から放り出されたようだ。

 そしてこいつは後輩であるロリ野郎を助けるために色々やってたみたい。

 近場にいる野良モンスターのデータを取り、それを基にしたドローンを作って捜索したりする映像が残っている。

 ……ポテチ食いながらやってる光景からして、真剣ではなさそうに見えるが、そこは置いておくとしよう。

 そして居場所を特定した際、テキトーに準備して救助しようと動き……出す前に、女の子の前では見ることが出来なさそうな、いかがわしい動画を見ながら『あ、あ、ああ♡』ってし続けた挙句そのまま……。

 アヘ顔なのと、あちこちにガチガチのティッシュが散乱しているのがその証拠だ。


「テクノブレイクで死ぬって、そりゃ笑うわ」

 

 そんな一言言った途端、我慢の限界が来たのかロリ宇宙人は腹抱えて寝そべり大声で大爆笑。

 ……先輩がこんなんで後輩もこれとは、宇宙人ってこんな奴しか存在しないのか?

 そう呆れながらも、今度はこの宇宙船が動くかどうか調べてみたが、完全に動力源が逝かれてしまっており、異世界移動どころか飛ぶことさえ出来やしない。

 俺の手で修理できないかと思い、内部を開いてみたり予備パーツの在庫を確認しようとするも、一人では手に負えない程の損傷している上に、教えて貰った在庫室の中は、技術で人をパーツに変えればいいって言う、なんとも身勝手な理由でロリ宇宙人のコレクション部屋に改良され他挙句、パーツは全て宇宙に捨てたと言っている。


 うん、マジ詰んだ。


 俺はすぐさまロリ宇宙人にヘッドバット炸裂し大ダメージを負わせた後、絶望の底に落とされた気分になり手に顔を当てる。


 これから俺はどうしたらいいんだろう?


 なんせ女神的な何かに転生させられたわけでも、術者によって召喚されたわけでもない。

 ただ宇宙人共の理不尽で宇宙船に載せられた挙句、ロリ宇宙人の不慮の事故に巻き込まれてここにいるわけだから、彼ら特有のチートパワーがあるわけじゃないただの一般人だ。

 魔王を倒せと頼まれたわけでも、世界を救うとかの使命をも与えられたわけでもないから、余計に何をすればいいのかわからないよ。

 泣きながら取り乱して、頭パタパタしてもいいかしら?


「イタタ……、か弱い女の子に対して何するんっすか貴方は本当にもう!!」

「んあ!? そのか弱いお前が全ての元凶だって自覚はある!?」

「だってしょうがないじゃないですかー。ツクルさん、◯S4のネジ穴よりサイズがでかいドライバーでしたし、アタイの思い通りに動かなかったUFO号が中古のポンコツ過ぎてもうイカれてたのは間違いはずでしぶぎゃ!!」


 いや、人の指をドライバーにする時点で道徳的にアウトな上、おっさん宇宙人もお前を止めようとしてたよね?

 その意味合いを込めて俺はロリ宇宙人をプロレス技のプランチャで押し潰した。


「で、この宇宙船どうするんだ?」

「イタタ……本当に幼気な少女に対しても容赦ないっすね〜。ひとまずはこの粒状カプセルに収納しておきます。このポンコツは飛ぶことはできなくなっていますがそれ以外の機能は健在ですし。それにこんな世界ですから危険がいっぱいだと思うので、あの豚を倒したパワードスーツが必要だと思いますから、このポンコツ船の技術で作っちゃってください。それに、ツクルさんの技術力ならひょっとしたらUFO号を再び完全修復できる気もしますので、それまで一緒にこの世界で生活するしかなさそうですね」


 やっぱりそう言う展開になるわけね……ってか何気に一緒にいる気満々じゃねえか。

 まあとにかく、ひとまず方針が決まった俺はエクレシアにその事を告げると。


「そうなの。だったら私と一緒に……、いえ、それよりもひとまず今後どうするか『始まりの街、スターライン』と言う初心者冒険者の街に一緒に来て考えない? 私のわがままだと思うけどもう少し一緒にいたいっていうか……なんて言うか……」


 なんか妙に照れ臭そうに提案してきたけど、そんなエクレシアが何となく可愛く見えるのは気のせいだろうか?

 自然とニヤけてしまうから彼女から顔を逸らしてしまうよ。俺も照れ臭いから。


「すんませーん、アタイ、奴隷作業を怠けたい理由でお二人さんの新居にお邪魔してましたけどさ、アタイが来る前からそんなに仲良かったの?」

「「ち、違う!! 大体こっちはそうかもしれないけど、俺(私)はそこまでチョロくはない……」」


 見事にハモった……って人のことをチョロいってなんだこのアマ!?

 しかも俺の反応が気に食わなかったのかめっちゃ睨んで来やがって腹立つ!!


「なんだそのツラは!? 大体密室期間が長かっただけで気安くハグしてくる奴なんてチョロいって思われてもしょうがねえだろ!!」

「一緒にやった貴方にだけは言われたくないわよ!! 時々水浴び箇所で体洗ってる所を覗いていた事を我慢して黙ってたら調子乗っちゃって!!」

「なっ!? ののののの、覗いてなんかねえし!? どんだけ自信過剰なのお前!? 何!? 誘ってんの!? お前俺をそう言うのに誘ってんのかこのクソビッチ!!」

「さ!? 誘ってないしビッチじゃないわよ!! 仮にも勇者の一人何よ私は!! そもそも誘ってるとかって何? あそこから脱出出来たらひょっとしてラ……ラブラブに慣れると思ってんの!? 魔王幹部すら倒せる鎧作りが得意で頭がちょっと良くて優しいからといって調子に乗らないでよね!!」

「んあ!? そー言うお前こそ王道勇者脳の割には乙女チックな所があって逆境でも折れない心を持っててかわいい奴だなって思っていたら調子こきやがって!!」

「……似たもん同士っすね」


 今の俺も彼女も、ただ勢いだけで大声で目の前の相手を罵倒? することしか考えておらず、ロリ宇宙人の呟きが耳に入ってこなかった。


「なんなら俺が男ってもんを教えてあげようか!?大人の階段登らせたろうか!?純潔奪ったろか!?あぁ!?」

「あ、貴方自分が何言ってんのか分かっていってるの!?それってそのまま持ち帰っ……ああもう!!そうしたいならそうしなさいよ!!私だってあんたの初めてを!!」

「すんませーん、このまま流れで二人で密室籠ってパコパコ初体験後の気まずそうな顔見るのも面白いっすけど、周り見てるっすか?」


 ニヤニヤしているロリ宇宙人の呼び声に正気を戻した俺たち。

 周り見てみたら魔法使いの女の子は顔赤くして目を逸らし、剣士の青年はいやらしい顔で妄想中。

 ライアンに至ってはイライラしながらお尻を片手で激しく引っ掻いているよ。



「「……はしゃいじゃってごめんなさい」」

 頭を下げる俺とエクレシア。


 ……ヤベェェェェェェェ!!! すごく恥ずかしいィィィィィィィィィ!!!

 よくよく考えたら俺、結構アレ的な発言繰り返してたよね!? めっちゃ恥ずいんですけど!? 顔上げられないよ!!

 隣のエクレシアも顔が真っ赤っかだよ、あいつもきっと恥ずかしくて頭上げられないみたいだな……


「と、とにかく一緒にスターラインに来ない? あそこなら冒険者や鍛冶屋とか、いろんなお仕事あるからその……」

「ま、まぁお前がそこまで言うなら……ねぇ……」


 ひとまずスターラインに行くことに決めた俺とロリ宇宙人。

 宇宙船を例の粒状カプセルに収納し、奴隷達と馬車に乗り向かっていく最中、何度かエクレシアと目が合うも……。

 俺も彼女もまだ恥ずかしかったのだろう、合った瞬間に頬を赤らめ、神速の如く顔を逸らしたのでした。

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