『その男ヴァン・ダム』 セガールに仕事を取られた男

 ジャン=クロード・ヴァン・ダムが、郵便局強盗!?


 局内で銃を乱射し、子どもを含む客や職員たちを人質に取って立てこもる。


 医者と交渉人が話を聞きに行くが、ヴァンダムは暴れだし、手出しできない。

 

 しかし、それは真犯人による自作自演だった。

 ヴァンダムは利用されているだけだった。



 ヴァンダムのセルフパロディ映画。


 本作でヴァンダムは落ちぶれた俳優という扱いである。


 妻と親権を争い、敗訴濃厚。

 弁護士に送る金の工面にも、苦労する始末。

 せっかく取ってきた映画『紫の魔よけ』の主役も、セガールに奪われる。


 おまけにタクシードライバーにまで「こんな無愛想な男だとは思わなかった」と、愛想を尽かされる。


 郵便局に寄って金を引き出そうとしていたが、既に強盗が入っていた直後。


 どこからどこまでもツイてない。


「訓練を積んだハリウッドスターでも、銃を持った相手の前には無力」

 という現実も突きつける。


 終盤、ステージが上がっていき、ヴァンダムの独白が始まる。


「オレより才能のあるヤツはたくさんいたが、オレは誰よりもスターになった」

「理由は、スターになることを誰よりも強く望んだだけ」

「オレは何も成し遂げていない! 普通の男だ!」


 頂点にのし上がったスターでさえ、地位を危ぶみ、スターだからこそ、自分は無力と強く思えてしまうモノなのかも知れない。

 

 ちなみに、『紫の魔よけ』という映画が本当にあるのか調べてみたが、フィクションのようだ。

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