第42話 旅館に到着して

『結構大事なお知らせ』

うちの中学校の授業がもう始まるのです。

勉強がやばいのです。

話は決まってますし、書き溜めの消えた最近もなんとか書き溜めのない状態であってもぎりぎり当日に書ききれたのですが、明日からは厳しいかもしれないです。


何日か、もしかしたら投稿できない日があるかもしれませんが、でも確実にカクヨムコンテストが終わる1月31日までには必ず最終話(の予定。続きを書くかは未定)まで書いて投稿しますので……。


申し訳ないですm(_ _)m


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「疲れたぁ……」


 ふぅ、と一息漏らしているのは、手で太陽の陽を遮りながら光が反射してきれいにうつる海を眺める花宮。


 やけに絵になるというか、なんというか……。


 出来る限り意識を逸らそうと試みているにも関わらず、そんな花宮のことを少なからず意識してしまっていた。


「では、とりあえず旅館に荷物を置きに行きますか」


「……ん、だな」


 俺は、んーっと声を出しながら伸びをする。電車で乗り換えを含むとだいたい二時間弱は電車の中にいたのではないだろうか。


 俺と花宮がいるのは駅から出てすぐの所。ここはすぐ近くの海の方に見える海からの潮の匂いと共に流れてきている風が心地よく、そして涼しい。


 そんな風に会話を済ませ、俺と花宮は風に髪をなびかせながら水瀬義兄妹から送られてきた地図を頼りに旅館へと向かった。











「……ふぅ」


 旅館の一室に入ってすぐ、俺は腰を下ろす。


 部屋は予想していた以上に広かった。扉を入ってすぐにあるのは一面畳の和室。真ん中にはお菓子やお茶の置かれた大きな机に和座椅子。壁には古そうで味のある水墨画が飾られていて、その横には小さなテレビや小物がぎりぎり入るくらいの木棚。


 この部屋の障子の向こう側にも広縁があるようで、そこには木製の椅子、チョコンと雰囲気を崩さないように置かれている冷蔵庫。それに、広縁の壁にはおおきく縁どられた窓があり、風が吹くときは気持ちがよさそうだ。


 ……それにしても、旅館に行きさえすればすぐに休めるなんて思っていたが、そんなに単純なものではないらしい。


 本来はと言えば水瀬義兄妹……またの名をバカップルが予約やらなんやらの作業を済ませる予定だった。


 ……そう、そのために俺と花宮が部屋に入ったので手続きなど無駄にすることが増えてしまった訳だ。当たり前と言えば当たり前なのだけど、少しくらいは融通を利かせてほしいものだった。


「……あの、部屋割りってどうするんでしょう?」


 花宮はリュックサックを畳の上に置くと、首をかしげながら不思議そうにそう聞いてくる。


「……知らん。が、悠翔たちが二部屋とったらしいし男子女子で分けるんじゃないか?」


「……なるほど、ですね」


 自分で言ってて少し悲しくなってくる。がくり、と肩を落とす。


 花宮にとって俺というのは憂鬱な存在だし、それ以上に俺と花宮は男と女であるからそれは当たり前。……けれど、部屋が違うというのはな。悠翔の野郎、一部屋でいいじゃないか。


 そうすれば多分障子を遮ってという形になるとは思うが、一緒に……。いや、なんで花宮と一緒に寝ないといけないんだよ!


 …………はぁ。


 なんだか、どうでもよくなってきた。こんなことやっていて、無理に言い訳して、なんの意味があるのかと、そう考えてしまう。


「……そ、そういえば、水瀬兄妹っていつくらいに来れるかとか言ってたりするか? それ次第で今からの行動とか考えようと思ってんだが」


 そういえば、と聞いてみる。少しでも話せたらなんていう下心は……ほんのちょっとだけ混ざっているにしても……それはしょうがないことだろ。


「えーっと……もう30分もあれば着くそうですよ」


 花宮はスマホを慣れた手つきでスワイプして確認すると、そう答える。


「微妙だな」


「いや、それを私に言わないで下さいよ。どうしようもないですから。……でもまぁ、あと30分なら海は無理としても旅館の中を見まわることくらいはできるんじゃないですか?」


「かもな」


 ここには温泉とかあるらしいけど、それはこの二人で行くようなものでもないしな。


「良かったら……一緒に行きます?」


 セミロングの髪が部屋の窓から吹いている心地よい風に揺らされながら、こくんと小さく首をかしげて提案をしてくる。


 そういうところが、無意識にも多くの男をばたばたと惚れさせていくのだと、自分自身体感していた。花宮の少し熱を帯びた顔を見ていると、あたかも俺と一緒にいたいと思っているのではなんて変な思考をしてしまう。


 無意識だとは思うが、その思わせぶりな態度が、無駄な期待を胸に抱かせている。花宮はずるい。


「……お、おぅ」


 花宮がそんなことを言うとは夢にも思わず、表面的には平静を保っているように見えても、心の中はそれとは真逆であたふたとたじろいでしまっていた。


 本当の気持ちを認めたくなかったはずの俺の心は、部屋の窓から潮の匂いとともに吹いてくる風に流されるようにして、いつの間にか薄れていっていた。


 ……まっ、花宮にその気持ちを伝えるなんてことはありえないだろうが。

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