赤い少女

節トキ

姉妹


 ――あの通学路で誰もいない時に振り向くと、自分がどうやって死ぬか、見えるんだって。


 それを聞くや、私は思わず吹き出してしまった。



「お姉ちゃん、何で笑うの!」



 ベッドの隣に寝転んでいた紗耶さやが、目を釣り上げて身を起こす。ボスボスと枕を叩き付けて怒る妹に、私は笑いながらごめんごめんと謝った。


 眠れないと言って深刻な顔で私の部屋にやってきたから、いじめにでも遭っているんじゃないかと心配したのに、まさかこんなこととは。小学二年生になった今も、紗耶の怖がりはまだ治っていないらしい。



「違うのよ、紗耶を笑ったんじゃないの。その噂、まだあったんだなぁと思ったら懐かしくて。私が同じ小学校に通っていた頃も、同じ噂が流れていたのよ」


「お姉ちゃんって今、高校三年生だよね? そんなに前からある噂なの? 本当に?」



 枕攻撃を止め、紗耶は私の顔を覗き込んできた。真っ暗にするのは嫌だと言われたので、室内には常夜灯を灯してある。オレンジの灯りに照らし出された紗耶を見ていると、記憶の奥底からあの少女の姿が蘇ってきた。



「本当よ。実際に試したんだから」

「嘘……」



 紗耶が目を見開く。



「お姉ちゃんが紗耶に嘘をついたことある? ちょっと怖い思いもしたけど、『死ぬところが見えた場合でも逃げる方法がある』ってわかったわ」



 そう言って私は、紗耶のセミロングの髪を優しく撫でた。このくらいの長さが紗耶には一番似合っていると思うのだけれど、本人はお姉ちゃんみたいなロングヘアになりたいと言って一生懸命に伸ばしている。妹を溺愛しすぎだと周りに呆れられる私と同じくらい、紗耶もお姉ちゃんっ子なのだ。



「ど、どうやって? どうすれば逃げられるの?」



 怖がりのくせに好奇心旺盛なところも、私とそっくりらしい。どうしてもとしつこくせがむので、仕方なく私はその時のことを紗耶に語って聞かせることにした。

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