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「ねえユキさん。妹さんストリートで歌ってたんですよね」

 ユキはカーディガンにデニムのパンツ。スニーカーを履いている。

「混雑しているみたいだから、気を使わなくていいものがいいと思って」

 カーディガンの上には、ロングのダウンジャケットを着ていた。

「これ通販で買ったの」ユキがにこやかに言う。

 少しめかしこんできたカオルと、スーツを着たタカシは目を見合わせて笑った。

 そしてまわりの人の多さに驚いた三人は、お参りをあきらめてコーヒーショップに入っている。

「時間があったら家の近くの神社に行ってみる」

「それがいいですね。せっかく出てきたんだし」

「あたし初詣なんてホント久しぶり」

「あたしもよ」そう言ってユキが笑う。

「ところで何なんだよ。ユキさんの妹さんの話は」

「マスターが新人みたいな人を集めてライブをやりたいらしいの」

「どうですか、ユキさん」

「妹には聞いてみるけど、どうかなあ」

「そうですよね」

「そうだよ」タカシはカオルの顔をじっと見ている。

「もしユキさんの妹さんがライブに出るってことになれば、あいつも一緒に来るのかな」

「それはわからないよ」

 ユキと別れた後、カオルとタカシは夕食も兼ねて居酒屋に入っていた。

「神社寒かったね」

「ほとんど人がいなかったしね」

「ここはコウちゃんが教えてくれたの。元旦もやってるって」

「そうか。タカシ、コウちゃん知らないよね」

「常連の人でしょう。一度ぐらい会ってるかも」

 いか焼のにおいがタカシの鼻をくすぐった。

「お刺身食べるの久しぶりかも」

「今度、寿司食べに行こうよ」

「そうだね」

「そういえば、今日はユキさんあいつのこと聞かなかったね」

「二人とも知らんぷりしたからね」

「言っておいたほうがいいのかな」

「ホッケまだこないのかな」

 カオルはタカシから目をそらしながらそう言った。


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