2-5
「シルバー・ピストル」では、久しぶりのライブが行われていた。店の奥のステージで歌っているのはマスターの友人のユーちゃん。プロのミュージシャンではないが、あちこちのライブハウスで歌っている。関係者にも顔が広い。
「ユーちゃん、久しぶりですね」常連客のコウちゃんが声をかける。
「なんかね。最近マスターがその気にならなくて」
「ライブハウスではやってますから今度来てください」
そう言ってユーちゃんはコウちゃんにフライヤーを渡す。
店の中は熱気であふれていたけれど、カオルはこの雰囲気があまり好きではなかった。常連客もライブの日を避けるようになってきている。
そんなこともあってしばらくライブをしていなかったようだ。
「カオルちゃん、感じ変わったんじゃない」
ライブ目当ての客も帰って店内が落ち着きはじめたころ、ユーちゃんがカオルに声をかけた。
「そうですか」カオルが気のない返事をする。
「色気が出てきたでしょう」カウンターにいたコウちゃんが言う。
「男か」ユーちゃんが笑みをうかべる。
「ご想像に」
「ユーちゃんカオルちゃんに気があったんじゃないの」
「そんなことないですよ」
カオルが二人の前で作り笑いをする。
「ユーちゃん誰かいないかなライブやってくれる人」
マスターがユーちゃんに声をかける。
「いくらでもいるけど」
ユーちゃんの持っているバーボンのロックの氷がカラカラと音を立てた。
「でもマスター、ライブあまり乗り気じゃないみたいだし」
「何て言うか、あまり知られてない人がいいんだよね。そういう人を何人か集めて出てもらうとか」
「無名な子ねえ」
「そういえば、ストリートで歌ってた女の子が突然消えちゃったって、ちょっとしたウワサになってたな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます