アストラル・アビリティ

みない

第1話  始まりの日

その製造及び管理。そしてビーストや界門の監視などを行うために結成されたのが国際機関ネセトである。


「毎年のように大して変わらない内容のものを流せるもんだ」

 呆れたように溜息を吐きながら、テレビを消し、リモコンを投げる。それは、弧を描くように飛んで空で不自然に止まる。

「危ないですよ、ゴシュジン」

 空中に静止したリモコンを平然と避けながら、食卓に皿を並べるメイド服の少女。

 彼女の名前はアイシャ。一見すると少女にしか見えない外見をしているが、彼女はアンドロイドであり、十年以上の付き合いである。

「アイシャ。避けるのはいいが、それを使うのは止めとけ」

「周りから見れば不自然すぎるからですか?」

「わかってんならやんなよ」

 ソファから立ち上がり、空中に浮かぶリモコンを食卓の上に置く。

 食卓にはトーストを主食に据えた洋食が並んでいた。

「どうぞ。ご賞味下さい」

 アイシャの分は当然のことながらない。一人分の朝食である。


 彼女の持つアストラルギア〈メイデン・メイデン〉。

 それは糸や布、食器や陶器、果てにはに家電類に至るまで彼女が触れている家具のたぐい全てを自在に操れる性質を持ったアストラルギアを扱うことができる。

 






「さてと、随分と溜まってんな」

 立ち上げっぱなしのパソコンの前に座り、メールボックスを確認する。

 ビーストに関するネセトからの情報を基に、各国支部からネセトからの任務として出されるもの。そして、民間から各国の支部に要請された任務をそこに最も近い分団に回すことになっている。民間から直接分団にまわってくる任務も存在するが、個人にまわってくることは滅多にない。

「お、珍しく個人。いや法人からだな」

 珍しく法人から個人事務所に対する任務が来ていた。法人、特に学校法人からの任務はネセトの支部からまわってくるのがほとんどである。

「あー、そういうことか」

 無論そんな正規ルートを通さなかった任務である以上、当然のように裏がある。


 任務の依頼

 今回の任務にあたり、報酬はネセトを経由せずに支払われる。

 今回貴殿に依頼する任務にあたり、ビーストによる被害とは確定されていない。しかし、本校生徒による悪戯とも確証が得られていない。

 サーティン、及びアイシャ両名に対して、この任務をネセトを介さない極秘に依頼することになる。


 ネセトに任務として受理されなかったが、ビーストの可能性が極めて高い。しかし、ビーストの姿を捕捉できてないのであれば、ネセトは任務として受理することはない。つまるところネセトが受理できないから個人に依頼せざるを得なかったということらしい。

 受ける旨を書いた返信メールを打ち込み、パソコンを落とす。


サーティンそれはコードネーム。そして、俺の持つアストラルギアに使われているコアに振られている番号。

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