第45話 最終話

 同盟国軍と反同盟国軍との世界大戦が勃発しかけたあの日から、即ち、コミュニケーションアプリ「真実、取り巻く現実」がウチュウ・ジロウによって起動された日から、ほぼ半年が経過しようとしていた。


 その後の調査で、ジョーが「ウチュウ・ジロウ」と名付けたその漆黒の球体は、オー・プロジェクトのときに彗星から分離したマイティメタル塊ということが判明した。


 しかしながらウチュウ・ジロウには、ウチュウ・タロウのような性質はなく、ウチュウ・タロウに聞いても「そんなん知らんし」などと言われ、その正体はタロウと同様に謎に包まれていた。


 ウチュウ・ジロウについては、カナを中心とする、世界中からより選った科学者からなる研究グループによって、その正体を解明する研究が進められることになった。


「ジョー、早くその藁をこっちに運べ! 遅いぞ!」


「分かってるよ。まったくもう人使いが荒いんだから」


「何か言ったか?」


「いいえ先生、何も言ってません」


「やめたきゃ、やめてもいいんだぞ。やる気のない奴にかまってる暇などないからな!」


「とんでもないです先生! 俺、がんばります!」


 その日、ジョーは、TWのアルバトロスの農場で仕事をしていた。ジョーがアルバトロスに頼みこんで、農場の作業見習いとして働かせてもらっているのである。


「これでよしっと。アル、終わったぜ!」


「おう、お疲れさん、ほら」


 アルバトロスが、腰に下げていた水筒をジョーの方に軽く投げた。


「ありがとう、アル」


 ジョーは水筒の蓋を開けて勢いよく水を飲み込んだ。


「かあー、うめえっ、アル、次はなにをやればいい?」


「今日はもういい。もとの世界でいろいろやることがあるだろ?」


「それはそうだけど……そうだな、今日はお言葉に甘えて帰るとするか。父さんもなんだか最近、腰が痛いとか言っていたしね」


「そうしてやれ。慣れないうちは無理させないようにな」


「分かってる。それじゃまたな、アル!」


「ああ、奥さんにもよろしくな!」


「うん、言っておくよ、ありがとう」


 この半年の間に、ジョーの身辺を、様々な変化が取り囲んだ。

 ウチュウ・ジロウのコミュニケーションアプリ「真実、取り巻く現実」が終了した後すぐに、ジョーはマリアの元へ駆けつけて彼女にプロポーズした。


 ジョーは、あのアプリ空間で見た巨大なマリアの姿を美しいと、そして誰にも渡したくないと、心底そう思ったのである。


 マリアはジョーのプロポーズを快諾し、二人は一緒になった。


 一方の人類はどうなったかというと、結局、世界大戦は起こらなかった。だが、仮に世界大戦が起きたとしたら失われていたであろう命の数よりもっと多くの命が、この半年の間に失われてしまった。


 ウチュウ・ジロウのコミュニケーションアプリ「真実、取り巻く現実」は、人間たちのそれぞれの精神的土台に激震を与えた。


 このアプリは、たとえ全てではないにしてもその人間の本当の姿、すなわち「心」の大きさを具現化するとともに、その人間の周りにいる人々の本当の「思い」を聞くことができるというものだった。


 このアプリが終了した後、世界中の人間たちは皆、自分自身に省みることで一杯一杯となり、他の人間に関わる余裕を無くしてしまった。もはや世界は、戦争どころではなくなっていた。


 例えば、無茶な政策を押し進めてきたある国の指導者などは、自分がいかにちっぽけで独りよがりの存在なのかを思い知らされることになった。その指導者は、アプリの空間で、ほぼ全ての自国民に踏み潰されてしまったのである。


 もちろん、ジョーの場合もそうだが、そのアプリで踏み潰されたとしても肉体的なダメージを受けることはない。


 しかし、その指導者の場合、まるで奴隷のごとく扱っていた自国民に、そのような思わぬ仕打ちを受けたことで、致命的な精神的ダメージを負うことになった。


 何千万人もの自国民に踏みつぶされたという記憶が、その後の彼の人生を決めてしまった。アプリが終了してから数日後、彼は拳銃で自分の頭を撃った。


 そのワンマン指導者の例は極端としても、その指導者に限らず、自分自身のイメージや周りの評価について、自分の中に普段抱いていたものとアプリで示されたものとの間にかなりのギャップを感じて、生きる気力を失ってしまった人間は数多くいた。


 特に、人生の盛りという時期を過ぎてしまった中年層に自殺をするものが続出した。残りの人生を投じてもそのギャップを到底埋められそうにないとして、絶望してしまう者がたくさんいたのだ。


 また、若者と老人の中にも自殺を図るもの少なくなかった。


 高度に発達した情報化社会に生きる若者たちの中には、SNSでひたすら自己防衛に走り、自意識を過剰に発達させていたものが多くいたし、また、明らかに自分の身の丈に合わない過大な権力に固執してきたような老人たちもかなりいて、いづれの場合も、現実の自分の姿や立場とのギャップに相当に苦しめられることになった。


 結局のところ、人のことを平気で批判・非難することはできても、自分自身の本当の姿と、周りにいる人々の本当の思いとを同時に真摯に受け止められる人間というのは、それほど多くはなかった。


 戦争だなんだとあれほど血相かえて騒いでいた世界は急に静かになった。


 今の世界を見てジョーは思う。


(結果としてやはり俺は引き金を引いてしまった。たとえそのつもりがなかったとしても、こんなに多くの命が失われてしまったのだから)


 憂いをともなう多少の疲れが、ジョーの思考を緩やかに刺激した。


(それにしても今の人類は、一気に冷やされて固まってしまった鉄くずみたいだ。果たして彼らは、少しは謙虚に、そして聡明になったのだろうか? いや、違うな。またしばらくすれば再び狂気の熱を帯びてくるだろう。なぜなら人類はアホだから。それは歴史って奴が証明してくれている。だって『歴史は繰り返される』んだろ?)


 ウチュウ・ジロウが宇宙空間に戻って小さくなっていく様子を眺めながら、それでもジョーの中に芽生える思いがあった。


(でもさ、アホだからこそ、不完全だからこそ、そしてその生命に限りがあるからこそ、人間とその人生は愛おしい。それはきっと、前に進むことを運命付けられた存在だけが持つ特質なんだと思う)


 実際、その後の人類はさらなるステージへ進もうとしていた。


 ネットの情報によれば、あのアプリの空間の中には、普通の人間とはそのサイズが明らかに異なる、即ち「心」が非常に大きい「ジャイアント」と呼ばれる人間が二十人ほど存在することが分かった。


 現在人類は、その者たちを中心とする新たな社会の枠組みを形成しようとしていた。


 マリアもその「ジャイアント」の中の一人であった。組織における一介の勤務医にすぎなかった彼女は、なぜか上職のポストが次々と空いていき、どんどん出世していった。


 マリアの周りの人々は皆、いつか彼女が組織の域を超えて、ヨシュア国で最初の女性の総理大臣になることを期待していたし、実際そうなることは時間の問題だった。


 一方、ジョーはDDUを辞めた。そして、郊外に土地を借りて農場を開いた。もちろん素人なのでTWのアルバトロスの助けを借りるとともに、アランにも経営に加わってもらった。


 そしてリサ博士は、ジョーとマリアと一緒に暮らすことになった。初めのうちは少しぎこちなかったが、マリアがリサ博士の体のことをいろいろと気遣っているうちに、自然に打ち解け合い、今ではリサ博士にとってなくてはならない存在になっていた。


 半年しか生きられないとされていたリサ博士の体は、その半年が過ぎても良好な状態がつづいていた。リサ博士もカナと同様にジョーのオクテットによる治療を拒否しており、それは現在も変わらないが、ある事実の発覚がリサ博士の病気の進行を遅らせているようだった。


 ある事実とは、マリアの妊娠だった。ジョーとマリアの間に子供ができたのである。孫の顔をみるまではとういう喜々とした強い思いが、生きるための新たな目的をリサ博士に与えていた。


 カナの人生にも大きな転機が訪れていた。彼女は、レベル3のオクテットとして、TWとウチュウ・ジロウの両方の研究に携ることになった。実は、あのアプリが起動したとき、TWの存在が明るみにでてしまったのである。


 心ない人間たちによるサイバー攻撃を危惧したジョーは、TWを構築するシステム全体をウチュウ・ジロウに移して人間社会から完全に独立させた。


 その後、ガンダーレ兄弟の協力のもと、カナにもオクテットになってもらい、ウチュウ・ジロウの第二オーナーとして登録を済ませた。どうやらウチュウ・ジロウは、オクテットをある種のアカウントとして認識しているようであった。


 カナは、インターネットを通じて世界中から協力者を募り、TWとウチュウ・ジロウに関するそれぞれの研究チームを立ち上げた。


 カナとガンダーレ兄弟を含む、世界中から選りすぐった総勢約百人ほどの研究者たちは、ウチュウ・ジロウの内部に移住して研究を続けている。


 普段のウチュウ・ジロウは、次郎と地球と月とを三体とする、宇宙空間におけるラグランジュ・ポイントの一つにいた。


 「ほのかの里」に収容されていた八十八人の元宇宙パイロットたちは、カナたちの研究チームによって、それぞれの脳内に迷い込んでいた動物やレベル1のALが回収され、全員無事に社会復帰を果たした。


 ゼット、つまりミカとマイクは世界中を旅している。たまにジョーの元にふらっと現れるが、一週間もするとまた旅にでかけてしまうのだった。どうやら、ミカの「我」が強くて、完全融合する機会がほとんどつくれないらしい。結果として、マイクの方にストレスが溜まりやすく、それを紛らすために旅を繰り返していた。


 ウチュウ・タロウとジョーとの関係は相変わらずだった。ただ、ジョーの言動については、タロウにとってはガラス張りで筒抜けなのに、ウチュウ・タロウの言動については、基本的には自己申告なので、タロウから話さないかぎり、何を考え、そして何をしているのかよく分からないところが多かった。


 もちろん、オクテットになって一体化すれば、タロウが何をしているかすべて明らかにすることができるのだが、まさかそのためだけにアルバトロスたちを呼び出すわけにもいかなかった。


 実は最近、タロウのことでジョーには気になっていることがあった。何かがとても悪い予感がしていたのである。タロウは、ジョーが夜寝ているときに限って何かをしているようだった。深夜になると、ジョーの胸が小さく光っていることにマリアが気付いて、彼女がジョーにそっと教えてくれた。


 ある日の深夜、ジョーは熟睡を装ってタロウが動き出すのを待っていた。

 深夜一時を回ったころ、胸の部分が光り始めた。その光は、忙しなく点滅を繰り返していた。


(おい、タロウ!)


(ギクッ! な、なんやお前、起きとったんか!?)


(タロウ、お前最近こそこそと一体何をしているんだ?)


(べ、別に、な、なにもしとらんわ。こそこそって、人聞きの悪いこと言うな!)


(怪しいな。なんか隠しているだろ? 正直に言え!)


(あ、怪しいことなんてことないわ。そ、そういうお前の方こそ、嫁はんの目を盗んで、たまにエロ動画を見ているやないか!)


 マリアはジョーの隣のベッドでぐっすりと眠っていた。


(エロ動画だと!? お前、夜中にそんなものを見ているのか? 一体どうやって?)


(アホ! わしはそんなもんに興味ないわ! わしがやっているのは、こっちでいう『ブログ』みたいなもんや! あっ、言うてもうた)


(ブログだって!? お前、そもそもネットにアクセスできるのか?)


(インターネットか? ああ、できるよ)


(どうやって?)


(ウチュウ・ジロウや、あいつを使えば簡単にできるんや)


(え? なんで?)


(お前があいつにアカウント登録されているってことは、ワシもされているってことやからな。ワシにもあいつにアクセスする権限があるんや)


(ええ!? そうだったのか? ぜんぜん知らなかった)


(ほんまに勉強不足やからなー、お前は。そんなんじゃ、どんどん時代に置いていかれるで)


(ふーん、よし、それじゃひとつお前のブログをみてやろうじゃないか)


 ジョーはベットから起きようとした。


(ちょっと待て、どこにいくつもりや?)


(どこって、PCのある隣の部屋じゃないか)


(ワシのブログ、そんなんで見られへんで。お前が見るには、オクテットになってウチュウ・ジロウのところに行くか、ワシがお前の脳に直接みせてやるしかない)


(え? どういうこと?)


(ワシが使っているのは、地球のインターネットやないから)


(なんだって?)


(ワシのはペトロ星の奴らが作った『ホールマウントユニバース(HMU)』っていう情報サイトや)


(ペトロ星のやつらって……ええ!? まさかそれって宇宙人か?)


(おまえ、いまどき『宇宙人』って、まあええわ、とにかくそういうことや)


(すごいじゃないか! やったなタロウ! 宇宙人とコミュニケーションができるなんて!) 


(は? ああ……まあな……)


 このあたりから、タロウの口調がなぜか急に重たくなった。


(へえー、すごいことになってきたな! そのことはカナたちもまだ知らないんだろ? 聞いたらきっと驚くぞー! ふふふ)


(え? いや、そんなん別に慌てて言わなくてもええんちゃうかなー)


(何を言っているんだ、タロウ! 善は急げだよ! それで? できたんだろ?)


(で、できたって何が?)


(友達に決まっているじゃないか! 何人くらいできた? あっごめん、そんな言い方は失礼か、何千、何万、まさか何億か?)


(……友達っていうていいか知らんけど、今のところは……一人や)


(は? たった一人? ま、まあ、いいじゃないか! 一人だってすごいことだよ! で、その彼はなんていう宇宙人?)


(……確か、ここから三十億光年くらい離れた、ポンギ星にいてる言うてたかな……)


(ポンギ星? 聞いたことないけど、ほんとに宇宙人っているんだな。それで、彼はブログになんて言ってきたの?)


(……ええっと、さっき確認したら、こっちにきて太陽系ごとむにゃむにゃ)


(はあ、なんだって? タロウ、もっとはっきり言ってよ)


(えーっと、だから、その、なんだ、そいつが言うには……)


(その宇宙人が言うには?)


(『大艦隊でこっちにやってきて、太陽系ごと消滅させたる』なんて書いてあったわ! わははは! なんか過激なやっちゃで、ほんま!)


(へえー、こっちにきて太陽系ごと消滅させちゃうのか……)


「何だと!」


 突然、ジョーは大声で叫んだ。隣で寝ていたマリアがびっくりして目を覚ました。


「ど、どうしたの? あなた、何かあったの?」


「あっ、マリア、ごめん、なんでもないよ。すごく悪い夢を見たんだ。ちょっと汗をかいたから、下にいって水を飲んでくる。大丈夫、ほんとになんでもないから」


 そう言うとジョーは、ベッドを降りて部屋を出ていった。ジョーは急いで階段をおりて台所にむかった。


「おいっタロウ! どういうことだ? 詳しく説明しろ!」


 ジョーは台所で声を少しだけ荒げた。


(ええーと、何から話したらええんかな?)


「全部に決まってるだろ! 初めから洗いざらいだ!」


(……はい)


 タロウの説明によると、そのアプリはタロウが次郎にアクセスして遊んでいたときに偶然に見つけたものだった。タロウは、インターネットに開設されているいろいろなブログを参考にしつつ、自分のブログを作った。そして、HMUにアップしてみたところ、初めのうちは何の反応もなく、ほとんど無視されているような状態だったらしい。しかしタロウはこれにめげずに、気を引きそうな記事を次々と書き込んでいった。その内容のほとんどは、ジョーのことに関するもので、マリアを怒らせたことや、彼女に頭があがらない不甲斐ない亭主ぶりなどを、延々とかき綴っていった。


「……何をしてくれてんの? お前」


(まあ、それはええねん。問題はその後や)


「いいわけねえだろ! 俺の恥部を宇宙に発信してどうすんだよ!」


(ま、とにかくな、そういうことをしていたら、ある日、書き込みがあったんや)


「どんな?」


(内容はそらもう、ひどいもんやった。とても一言では言われへん。もうボロカスに言われてな。あれやな、そもそも地球人って、あいつらの間ではかなり評価低いねんな。差別とかそんなレベルちゃうねん、ほとんどゴミ・くず扱いやで)


「へ、へえー」


(あんまり言われたんで頭にきてな。そいつのブログにいって、わしもボロクソに書いたったんや。そしたら、そいつだけじゃなくてほかの連中の反感も買って、わしのブログ、炎上してもうた)


「炎上!?」


(ひどいやろー? そこまでされたらさすがのわしも黙ってられへん! ブログからそいつのアドレス調べて、こっちでいうメールみたいなもんを、ガンガン送ったったんや)


「メールって?」


(まあ、こっちでいうところの迷惑メールやな、そいつから何度か警告があったけど、そんなん無視してどんどん送りつけてやったわ。そしたら、さっき、そういうメールがきたんや)


「タロウ、バカかお前は!? 何をしでかしたのか分かっているのか? 本来なら人類の歴史に煌々と刻まれるべき『ファーストコンタクト』だぞ! それを、完膚なきまで失敗させるような土台を裏でこそこそと築き上げてんじゃねえよ! って言うか、もうそれどころじゃない! 人類を、いや太陽系全体を存亡の危機に晒してんじゃねえか! さっさと謝れ、その宇宙人さんに!」


「今さらそんなんでけへんわ! っていうか意味ないわ! メールなんかすでに十億通くらい送ってんねん!」


「じゅ、十億通だと!?」


「そうや、中途ハンパは嫌やからな!」


「アホかー! 何を言ってんだよ! あー、もう!どうしたらいいんだ!?」


「お前、少しは落ち着けや、そんなんほんまに来るわけないやろ? 言うてるだけやって!」


「もし、本当だったらどうするんだよ!」


「ありえへんって、ええか三十億光年やぞ? 例えるなら、お前の好きなあのなんたらとかいうミュージシャンの歌声と顔くらい離れているんや! そんな無意味なことするために、こんな辺鄙なところまでわざわざこおへんって!」


「お前の言っていること訳わかんねえよ! 声も上擦ってて、さてはかなり動揺しているな?」


「そ、そ、そないなことあるか! な、何を言うてんねん!」


「とにかく謝れ! まずは俺の好きなあのミュージシャンに!」


「ごめん、ワシが悪かった許してくれ。ただなこれだけは言わせてくれ、最近の若い奴らと違って、社会に対してなんの不満も吐露せず、ひたすら己に秘められた光を追い求めるようなあんたの音楽は、ひょんなことから生まれてもうた純真無垢なわしの心にダイレクトに響くんや! って何を言わせんねん!」


「お前が言わせろっていったんだよ! はい次、その宇宙人さんにお詫びのメールを今すぐ送れ! いいか、少なくとも二十億通は送れよ!」


「嫌や、絶対に嫌や!! お前かて、嫁さんと喧嘩しても謝らんことあるやないか!」


「そんなレベルの話じゃねえんだよ! この太陽系の命運がかかってんだぞ! この、バカオヤジ!」


「ばっ、バカオヤジやて!? わしがバカオヤジなら、お前なんかバカオヤジのムスコや! って、いつからわしはお前の親になっとんねん!?」


「そういう意味じゃねえよ! 前々から思っていたけど、お前の口調はオヤジ臭いんだよ!!」


「あー! お前、言うたな!? 言うてもうたな!? わしが気にしていることを、そんならわしも言わせてもらうでえ、この○×△○×が!!」


「なっ、なんだと!? タロウ、お前そこまで言うか!? この××△×が!!」


「なっ、なっ、何やてえ!! お前こそ××△○◇×やないか!!」


 そのとき、いつの間にか下に降りてきていたマリアが、台所の入り口で仁王立ちになっていた。


「いい加減にしなさい! こんな夜中に、あんたたちバカなの!? これ以上騒いで、もしお義母さんを起こしたら、あんたらをぶっ飛ばすわよ!」


 ジョー「はい、すみません」

 タロウ「はい、すんません」


 ジョーとタロウ、二人の歩みはこれからも続いて行く。   

                                      第一部 完

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