第16話 魔王軍の祝勝会

「先輩、お疲れさまでした♪」  


「ああ、中々、疲れたよ」


 良たちは、仮想世界から現実へと戻りゴーグルを外す。


「ん〜。ここの椅子身体が痛い」


「まったくだ。こりゃ部費を手に入れたらベットでも買わないとな」


 空と快はVRゲームを行うのに、適応しない環境に愚痴をこぼす。


「あれ?剣人は?」


「剣人くんなら、……あっちですよ」


 姫乃が指差す場所には、外を眺めている剣人が立っていた。


「あぁ!あの時の我が魔王の戦いは素敵でした。数多の敵をただ一人でなぎ倒していく姿はまさしく魔王!」


 剣人は一人上の空状態だ。


「まあ、あんな感じでずっと一人でしゃべってます」


 姫乃はやれやれ、といったようにし、良は思わず苦笑いをする。


「そ、そうか…。まぁ、とにかく俺らが勝ったわけだし」


「ん。お姉ちゃんと万理奈もふくめて」


「祝勝会といくか!」






 ―――――――――――――――――――――――


「やっほー、良くん」


「こんにちは良さん」


 良たちが、下駄箱から歩くとすぐに、万里奈と美咲が迎える。


「二人ともなんでここに、……空が連絡したのか?」


 良は驚きながら空をみるが、空は首を横に振る。


「まだ。これから連絡しようと思ってた」


「ふふふ。まぁ、私たちにかかればみんなが何をしているのかなんてお見通し……」


「なんて言ってますけど、本当は放送を見て来たんです。良さんお疲れ様でした」


「あぁ、ありがとう。放送って、学園の放送か」


「お二人共この学園の大学部の先輩でしたもんね」


「まぁそういうこと。だから祝福を、って快くんと剣人くんは?」 


 万里奈は先程から姿の見えない二人について首を傾げる。


「あの二人なら勝利品を取りに行ってるからな、後で合流するとは言ってたから先に行くか!」


「はい♪」


「んっ!」


「ええ!」


「おー!」







 _________________


 良たちは祝勝会のため喫茶店に来た。


「とりあえず、二人が来る前に注文だけしておくか」


「そうですね。どれにしましょうか?」


 良たちは、メニューとにらめっこをする。


「ああ、ここは私と万理奈が支払いますので」


 美咲は微笑みながら言う。


 万理奈はええーと言いながら、こっそり自分の財布の中を見る。

 そして少し考えると、よしっとこぶしを握る。


「仕方ないなぁ。ここは先輩である私たちがおごってあげるよ!」


 そんな万理奈の言葉に一同は喜び、各々注文を始める。


「じゃあ私はショートケーキとチョコケーキを」


「わたしはデラックスパフェ」


「では私はこのピザで」


「俺はプリンとフレンチトースト」


「え、みんな遠慮ない…。あぁ、もういいやお祝いだし!私はこの激辛ラーメンで」


 と最後に万理奈が多少やけになりながら注文をする。

 そうして注文したものを待っている間にも快と剣人が店に入ってくる。


「よお、お疲れ」


「みなさんお疲れ様です」


 二人は挨拶をしながら席に着き、メニュー表を手に取る。

 そんな二人に美咲は声をかける。


「お二人ともお疲れ様です。ちなみに今回は万理奈のおごりなので気にせず注文していいですよ」


「ちょっと、美咲!」


 快と剣人はあせる万理奈の様子を見ながら、


「万理奈さん。まじですか?」


 快が聞く。

 そんな問いに、万理奈は一度出てしまった言葉を戻せるはずもなく。


「うっ、も、もちろん。お姉さんに任せなさい」


 と言ってしまう。

 その言葉を受け、口元を上げながら快は注文し剣人も遠慮なく注文をする。


「じゃあ俺はこのロシアンたこ焼きとポテト」


「我は焼き魚定食と卵焼きを」


 と二人は注文を終える。

 そんな注文の中でも良は快にツッコミを入れざるをえない物をツッコム。


「おい、快。ロシアンたこ焼きって…」


「もちろんみんなで食うつもりだ。こういうの一回やってみたくてな」


 快はほんとにダメな奴は居ないかということをちゃんと確認し、全員問題ないということでそのまま料理が届くまで待つことになった。


 そして数分後、全員のもとに料理と飲み物がいきわたる。

 それを確認し、良はコップを持って立ち上がる。


「それじゃあ、勝利と部活設立を祝って。乾杯―」


 良の掛け声と共にみんな乾杯―と言いコップを持ち上げる。

 さらに、


「じゃあ早速だが、ロシアンたこ焼きだ。いくぞ、せーの……」


 快の声と共に、それぞれたこ焼きを口に運ぶ。


「「「…………」」」


 そして全員がゴクンッとたこ焼きを飲み込む。

 その間誰一人としてリアクションは無し。


「……え、これロシアンたこ焼き。ですよね?」


 あまりにも誰も何も何ので姫は快にただのたこ焼きで無いことを確認する。

 快も不思議に思い、メニューを確認する。


「あぁ、ちゃんとロシアンたこ焼きだ。それもハズレは二個あったはずなんだが」


 みんなが不思議に思う中一人、剣人が手を上げる。


「申し訳ありません。一つは我があたりました」


 剣人は顔色を何一つ変えることなく「辛かったのでおそらく唐辛子のようなものが入っていたと思います」と答える。


「なるほど。剣人があたったなら納得だが、もう一つは誰だ?」


 良が聞くが誰も名乗りを上げない。

 そんな中、美咲が手を上げる。


「あの、おそらくですがもう一つは万理奈じゃないですか?」


 そんな美咲の言葉に万理奈を含めた全員が「え?」という顔になる。

 美咲はそんなみんなの疑問に答えるため話を続ける。


「万理奈は辛い物に対する耐性がとても高いんです。なのでみんなで楽しむために作られたような辛い食べ物では辛さを感じることが出来なかったのだと思います」


 美咲による解説を聞き、一同は納得したように頷く。


「なるほど。それじゃあ今回のロシアンたこ焼きは失敗だったな」


「今回の、てことは次もやるつもりか?」


 良は快の含みを持たせた言い方にツッコミを入れる。

 そんな快は良に向けてサムズアップをする。


「もちろんだ。次はちゃんとリアクションが見れるよう計画を立てておくぜ」


「はぁー。ほどほどにしておいてくれよ」


 良はあきれながらも次があるのを了承し、その後はみんなで会話と食事を楽しんだのだった。



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