妖怪考察

太刀山いめ

第1話妖怪考察について、プロローグ

『何者かに贈る』


きっとこれを見ているということは、何処かに歪みのある世の中のその歪みに囚われてしまったのだろう。


分からない?


ある人は言う。

『想像できない』と。

もしこの一方的な考察の中に、『何者か』である貴方に唯一の自由が有るとするなら、自身で表現を『想像』で補う事……



疲れていませんか?


飽きていませんか?


惰性ではないですか?



それとも他の何か?


読まれる方は、きっと文字の羅列には囚われないでしょう。

ですが、私は『何者か』にあえて言いたい。


『想像』と



その力は貴方を見つめる力となるでしょう。



ではどうぞ、お進み下さい。

下がったり、曲がったり、前進したり、落ちたり、上ったり……でも結局人間は



進むしかないのですから。




『プロローグ』


「いやぁ…今日も疲れた」


私は自分のアパートに帰ってきた。手にはスーパーで買い込んだ食材が入っている。

時間は夜の七時頃。バイトも終わり、買い物も済ませた。大体いつもこんな感じだ。


「部屋、広かったんだな」


六畳一間とキッチンが別にある日当たりの悪い部屋。それが私の部屋だ。

実は先日、長年付き合っていた彼女と別れた。理由は物珍しい物ではない。


「あなたは変わったわ」


それが最後の言葉。他にはない。良くある考えの相違と言うやつだ。

部屋を見渡して気付いた。

やけに荷物が重いと思ったら、癖で二人ぶんの買い物をしてしまっていた。

自分が嫌になる。


今は冬。部屋にはテレビとタンスとコタツのみ。彼女の荷物が無くなってやけにサッパリした感じだ。


部屋は一階。窓際に小皿と水の入った椀が一組置いてある。飼っている猫のものだ。

荷物を置き、スイッチを入れたコタツに滑り込む。女々しいが、独りの冬の寒さが身に染みている……

因みに猫もここ数日姿を見せていなかった。

室内飼いではなく、出入り自由の半野良だから仕方がないが寂しい……


「明日は休みだ」


独り言を言ってみる。

前までは休みは恋しいものだったが、ここ数日で怖いものに変化していた。人と接すること無くコタツに籠るだけ……鬱々としてくる。

テレビをつける気にもならず、だが考え事をするのも嫌で、本でも読もうと思い立った。


それでやっと、周りを見る余裕が生まれた。コタツの上に見慣れない紙束と部屋の鍵が重ねて置いてあった。

自分の鍵は財布の中だ。この鍵は多分彼女に渡していた合鍵だろう。

ならこの紙束は彼女の恨み言がかかれたものか。

厚さは文庫本位はある……三行半(みくだらやはん)とはいかない様だ。

私にだって言いたいことはある。これを読んだら自分の恨み言を『元』彼女に電話で吐き出してやろう…そう思った。


紙束のタイトル


『妖怪考察』


なんなんだ?私はその手書きの文字の書かれた紙束を手に取った。

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