13. 自体の収束、オルコスの計画

 


 「……やれ、クロミア!」


 「任せておけ! ぬおおおおおお!」


 「な、なんだ!?」


 ベイトリーアルが捕まえていたクロミアを慌てて手放すと、クロミアはどんどん大きくなり建物をバリバリと壊しながら元の姿であるブラックドラゴンへと変貌を遂げた!


 「な、何よあれ!? サーニャ! あ、あなたドラゴンと会っていたの!?」


 「そうよ! ドラゴンの聖水も手に入れたわ! あなたの企みもこれまでよ!」


 「くっ……ウェルトン! 逃げるわよ!」


 『そうは行かぬぞ!』


 逃げだそうとしたディアナをひょいと摘み上げ、あっさりと捕える。


 「ああ!? ぶ、無礼な! 放せ、放しなさい!」

 

 空中でジタバタするディアナ、それをポカーンと見ていたベイトリーアルが我に返った。

 

 「なんてこった! 俺は消えさせてもらうぜ!」


 「そうはいかんぞこの自警団の面汚しめが!」

 

 ゼーニガッタは逃げ出そうとしたベイトリーアルを捕縛し、床に叩きつけていた。



 「くそ! 俺はあいつに唆されただけなんだ!」


 ダッと逃げ出すウェルトン。俺は近くに落ちていた角材を投げてその動きを封じ、一気に近づく!

 

 「計画がめちゃくちゃだ! お前だけでも殺してやる!」


 ウェルトンが懐から隠し持っていたナイフを俺の胸に向かって刺してきた。

 むう、感覚がマヒしてるな……全然大丈夫なんだろうな(というフラグを立ててみる)


 「ぐあ!? う、腕があ!?」


 はい、フラグ役に立ちませんでした! 

 ナイフはぐにゃりと刃が曲がり、ウェルトンは手首を捻っていた。


 「大人しくするんだな!」


 投げた角材を再び拾ってウェルトンを殴って昏倒させ、鎮圧は成功した。


 「サーニャ、親父さんの所へ!」


 俺はカバンをサーニャへ投げると頷いて親父さんがいると思われる部屋へと向かった。

 

 「クロミア、サンキュー!」


 『お安いご用じゃ! ぎょにくそーせーじを頼むぞ!』


 ちゃっかりしてやがる、が、今回は助かったからな。ま、いいか。



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 そして……



 「ありがとう君達のおかげでサーニャと私自身を失わずに済んだよ」


 ドラゴンの聖水を飲んだ親父さんはサクッと治り、すぐ歩けるくらいになるまで回復した。

 

 ちなみにリビングの天井がパックリと壊れているのを見て「はふん……」と膝を崩した。

 これは後日俺が業者を手配して修理すると言ったのだが、命の恩人にそんな事はさせられないと断られたのだった。


 「これで僕も溜飲が下がりました、ありがとうございますクリス様」


 ディアナはゼーニガッタ達に連れられて、即ルーベイン領に移送し、裁判にかけられる。

 死刑にはならないだろうが、年老いるまで出てくることは叶わないだろう。


 ポルタさんの事件はかなり前になるので、金銭の回収等はできない。だが、それでもポルタさんの顔は晴れやかだった。


 尚、イスマット領サイドはウェルトンとベイトリーアル、そして協力者の自警団員が捕縛された。

 こっちは真面目な副団長が責任を持って連れて行きますとゼーニガッタ達と共に連れて行った。

 

 サーニャと親父さんの証言と、俺達もクロミアを人質に取られた事を説明してあるので二人も出てくるのはかなり後になりそうだ。



 「それじゃ、そろそろ俺も帰ります。サーニャ、元気でな」


 「うむ、改めてご挨拶をしにそちらへ向かいますよ」


 親父さんが朗らかに笑い、サーニャが続けて言葉を出す。


 「あ……あのね、あたしさ……」


 「じゃあな」


 「あ……」


 サーニャは何か言いたそうだったが俺はあえて聞かず、サーニャの頭をひと撫でして玄関へと向かう。

 俺は今後死ぬつもりの人間だ、何となく気持ちには気付いていたがそれに応える事はできない。





 そして外に出て伸びをするとお腹がぐーと鳴った。


 「何か気が緩んだら腹が減ったな……どっかで食っていくかな」


 「わらわもいいのか?」


 「ああ、その後は帰るなり遊ぶなり好きにしたらいい」


 「帰りはわらわに乗っていくかや?」


 「んー、そうだな。最後の思い出に乗せてもらうか!」


 「了解したのじゃ! ふんふーん♪」


 機嫌よく鼻歌を歌いながら店を物色するクロミア。


 結局死ねなかったが、サーニャ達が助かったからいいかと、何となく晴れ晴れした気持ちで俺は町を歩くのだった。



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 【あの世】



 <くっ……生意気にもあの娘の言葉を遮りましたね……命の恩人なら父親も手放しで喜ぶ……結婚待ったなしだというのに! あんなことやこんなこともし放題なのに……!>


 <いや、アンタじゃないんだから……というか転生して記憶を持ってるから奥さんは一人しか取らないと思うわよ? 父親も一人としか結婚してないんでしょ?>


 <……そうですね、あのクソ真面目な両親ですから第二夫人など間違ってもあり得ないでしょう……世間的には領主は何人娶っても構わないんですがね。他の豚のような領主もいますし>


 <で、こっちは準備できたけどどうするの>


 ハイジアがみかんを剥きながら面倒くさそうにオルコスへと言い放つ。昔はもう少しまともだとおもったんだけどな……などと呟きながら。


 <(顔はいいけど性格が……ね?)>



 <予定通り実行しますよ。まだまだ彼には稼いでもらわないと……>


 そして物語は次の段階へ進む。





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 サーニャ達を救う事が出来たクリス。


 クロミアと共に食事をして自分の家へと戻っていった。


 しかし、出番の少なかったオルコスが復讐するかのように計画を発動する!


 そして、「好きにしていいぞ」の意味を間違って捉えたクロミアの行動とは?


 次回、新章第一話『猫なで声のオルコス』


 ご期待ください。


 ※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。予めご了承ください。

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